「僕を産んだママはほかにいるんだ」うーちゃんの思いとは<古泉智浩の養子縁組やってみた>
52歳の漫画家・古泉智浩さん。古泉さん夫婦と母(おばあちゃん)、里子から養子縁組した6歳の長男・うーちゃん、里子の3歳の長女・ぽんこちゃんという家族5人で暮らしています。
今回は、うーちゃんの「真実告知」のお話や、自由なぽんこちゃんのお話です。
「真実告知」は里親や養子縁組でとても重要な問題です。
赤ちゃんのときから育てていると、子どもと血縁がないということを伝えられないまま大きくなってしまうことがあります。とくに思春期を迎えてから、血縁について子どもが知ると大きなショックを受けて、心が不安定になる危険があります。
なので、子どもが物心ついたらなるべく早く子どもと親の間に血縁がないことを告げるように推奨されています。
うちの場合は、今7歳の養子のうーちゃんが3歳のときに里子で妹のぽんこちゃんを乳児院から迎えたので、うちの子はそのようにしてやって来るというような理解がありました。
ほかにもことあるごとに、「うーちゃんを産んだママはほかにいるんだよ」と伝えています。
先日、ママが中古車を買うに当たって、中古車屋さんにママ、僕、うーちゃんの3人で足を運びました。係のお姉さんと僕ら3人で、車に乗り込んで試乗させてもらいました。運転席にママ、僕が助手席、後部座席にうーちゃんとお姉さんです。
とてもいい天気で気持ちのいい青空の午後、川沿いの道をママが緊張しながら車を走らせていると、うーちゃんが言いました。
「ぼくのママはぼくをうんだママじゃないんだ」
なんということを言い出すのだ。僕もママも絶句して二の句が継げずにいるとお姉さんが言いました。
「でも、今のママも優しいママだよね」
突然投げかけられた対応の難しい言葉に、お姉さんも困ったことでしょう。しかし動揺することもなく、そのように言っていただいて胸をなでおろしました。すてきな人でした。
お姉さんは、うーちゃんを僕の連れ子で、僕がママと再婚したと思ってくださったようです。そうではなくて、養子なんです、などと言っても余計に複雑な気分になるだけなので黙っていました。
日本の離婚率は35%にもなるそうで、連れ子がいるケースも珍しくありません。養子も里子も連れ子も多様化する家族の在り方の一つみたいに、気軽に受け止めていただきたいと思います。
なんでもかんでも言うもんじゃないよと、後でうーちゃんに言いました。真実告知を受け入れてくれて、しかも変に重く受け止めていない様子はとてもいいのですが、ちょっと軽すぎるのではないでしょうか。
うーちゃんはお姉さんがきれいな人だったので、気を引こうとしてそんなことを言ったのでしょうか。小学校でもペラペラしゃべってそうで不安です。
朝、うーちゃんの集団登校を見送るついでにゴミ出しをしています。ゴミ出しにぽんこちゃんが一緒に行きたがります。
うーちゃんは僕ら家族が、集団登校の見送りに来るのが恥ずかしいようでちょっといやがっています。僕は、「全然違うよ、ゴミ出しに行くんだよ」と言って無理矢理ついて行きます。
児童公園の一角がゴミの集積所となっていて、そこから少し行った先の角が集団登校の待ち合わせ場所です。ぽんこちゃんはゴミ捨てについて来て、児童公園で遊びます。朝はさっさと用事を終えて保育園に送りたいので困ります。
ところが、先日ゴミ出しに行こうとすると、ぽんこちゃんは児童公園ではなく裏の神社に行きたいと言います。方向が違うので、ゴミ袋を持ったまま神社に行くのは嫌だし、朝から神社で遊んでる暇はありません。
ゴミ捨てに行けば後からついて来て児童公園で遊ぶだろうと思い、先を歩いていたうーちゃんを追いかけてゴミ捨てに行きました。
ゴミを集積所に置いて振り返るとぽんこちゃんがいません。家に戻ってもいない。やばい、一人で神社に行ってしまった、慌てて神社に向かうと通りの遥か前をぽんこちゃんが歩いています。朝の通勤時間で、車の通りもあります。
神社の手前の酒屋の自動販売機で立ち止まり僕を待っていました。
「リンゴジュースがのみたい」
と言ってQOOのリンゴのボタンを押しています。
「お金持って来てないから買えないよ」
お金を持っていたとしても、朝からジュースを自販機で買うなど言語道断です。ところが、そこでジュースを買ってもらえないことでへそを曲げてしまい怒って動かなくなりました。
「ぽんこちゃん、パパのことだいすきじゃない。もうパパとあそばない」
「ほら、お参りして帰るよ」
参道を歩いて行けばついて来るだろうと思って先に行きました。お参りをして振り返ると、ぽんこちゃんがいません。どっかに行ってしまった。慌てて戻って探すと神社の外側を歩いて路地に入っていました。
この子は一人が寂しいとかないのか、放っておくとどこまでも行ってしまいそうで怖い。その後もずっと「リンゴジュースがのみたかった、パパのことだいすきじゃない」と恨めしく言っていたので、抱っこで無理矢理帰りました。
うーちゃんは怖がりなので、一人でどこかに行くような心配はほとんどしたことがありません。それに比べてぽんこちゃんは1歳の時から外を出歩いて迷子になったこともあり、恐れ知らずで怖いです。
漫画家。1969年、新潟県生まれ。93年にヤングマガジンちばてつや賞大賞を受賞してデビュー。里子を受け入れて生活する日々をつづったエッセイ『うちの子になりなよ ある漫画家の里親入門
』、その里子と特別養子縁組制度をめぐるエピソードをまとめたコミックエッセイ『うちの子になりなよ 里子を特別養子縁組しました
』など著書多数。古泉さんの最新情報はツイッター(@koizumi69
)をチェック!
今回は、うーちゃんの「真実告知」のお話や、自由なぽんこちゃんのお話です。
養子のうーちゃんと「真実告知」のこと
「真実告知」は里親や養子縁組でとても重要な問題です。
赤ちゃんのときから育てていると、子どもと血縁がないということを伝えられないまま大きくなってしまうことがあります。とくに思春期を迎えてから、血縁について子どもが知ると大きなショックを受けて、心が不安定になる危険があります。
なので、子どもが物心ついたらなるべく早く子どもと親の間に血縁がないことを告げるように推奨されています。
ほかにもことあるごとに、「うーちゃんを産んだママはほかにいるんだよ」と伝えています。
●本当のママじゃない。突然そう言い出したうーちゃん
先日、ママが中古車を買うに当たって、中古車屋さんにママ、僕、うーちゃんの3人で足を運びました。係のお姉さんと僕ら3人で、車に乗り込んで試乗させてもらいました。運転席にママ、僕が助手席、後部座席にうーちゃんとお姉さんです。
とてもいい天気で気持ちのいい青空の午後、川沿いの道をママが緊張しながら車を走らせていると、うーちゃんが言いました。
「ぼくのママはぼくをうんだママじゃないんだ」
なんということを言い出すのだ。僕もママも絶句して二の句が継げずにいるとお姉さんが言いました。
「でも、今のママも優しいママだよね」
突然投げかけられた対応の難しい言葉に、お姉さんも困ったことでしょう。しかし動揺することもなく、そのように言っていただいて胸をなでおろしました。すてきな人でした。
お姉さんは、うーちゃんを僕の連れ子で、僕がママと再婚したと思ってくださったようです。そうではなくて、養子なんです、などと言っても余計に複雑な気分になるだけなので黙っていました。
日本の離婚率は35%にもなるそうで、連れ子がいるケースも珍しくありません。養子も里子も連れ子も多様化する家族の在り方の一つみたいに、気軽に受け止めていただきたいと思います。
なんでもかんでも言うもんじゃないよと、後でうーちゃんに言いました。真実告知を受け入れてくれて、しかも変に重く受け止めていない様子はとてもいいのですが、ちょっと軽すぎるのではないでしょうか。
うーちゃんはお姉さんがきれいな人だったので、気を引こうとしてそんなことを言ったのでしょうか。小学校でもペラペラしゃべってそうで不安です。
●一人が怖くないぽんこちゃん。ジュースへの熱い思いがあふれます
朝、うーちゃんの集団登校を見送るついでにゴミ出しをしています。ゴミ出しにぽんこちゃんが一緒に行きたがります。
うーちゃんは僕ら家族が、集団登校の見送りに来るのが恥ずかしいようでちょっといやがっています。僕は、「全然違うよ、ゴミ出しに行くんだよ」と言って無理矢理ついて行きます。
児童公園の一角がゴミの集積所となっていて、そこから少し行った先の角が集団登校の待ち合わせ場所です。ぽんこちゃんはゴミ捨てについて来て、児童公園で遊びます。朝はさっさと用事を終えて保育園に送りたいので困ります。
ところが、先日ゴミ出しに行こうとすると、ぽんこちゃんは児童公園ではなく裏の神社に行きたいと言います。方向が違うので、ゴミ袋を持ったまま神社に行くのは嫌だし、朝から神社で遊んでる暇はありません。
ゴミ捨てに行けば後からついて来て児童公園で遊ぶだろうと思い、先を歩いていたうーちゃんを追いかけてゴミ捨てに行きました。
ゴミを集積所に置いて振り返るとぽんこちゃんがいません。家に戻ってもいない。やばい、一人で神社に行ってしまった、慌てて神社に向かうと通りの遥か前をぽんこちゃんが歩いています。朝の通勤時間で、車の通りもあります。
神社の手前の酒屋の自動販売機で立ち止まり僕を待っていました。
「リンゴジュースがのみたい」
と言ってQOOのリンゴのボタンを押しています。
「お金持って来てないから買えないよ」
お金を持っていたとしても、朝からジュースを自販機で買うなど言語道断です。ところが、そこでジュースを買ってもらえないことでへそを曲げてしまい怒って動かなくなりました。
「ぽんこちゃん、パパのことだいすきじゃない。もうパパとあそばない」
「ほら、お参りして帰るよ」
参道を歩いて行けばついて来るだろうと思って先に行きました。お参りをして振り返ると、ぽんこちゃんがいません。どっかに行ってしまった。慌てて戻って探すと神社の外側を歩いて路地に入っていました。
この子は一人が寂しいとかないのか、放っておくとどこまでも行ってしまいそうで怖い。その後もずっと「リンゴジュースがのみたかった、パパのことだいすきじゃない」と恨めしく言っていたので、抱っこで無理矢理帰りました。
うーちゃんは怖がりなので、一人でどこかに行くような心配はほとんどしたことがありません。それに比べてぽんこちゃんは1歳の時から外を出歩いて迷子になったこともあり、恐れ知らずで怖いです。
【古泉智浩さん】
漫画家。1969年、新潟県生まれ。93年にヤングマガジンちばてつや賞大賞を受賞してデビュー。里子を受け入れて生活する日々をつづったエッセイ『うちの子になりなよ ある漫画家の里親入門
』、その里子と特別養子縁組制度をめぐるエピソードをまとめたコミックエッセイ『うちの子になりなよ 里子を特別養子縁組しました
』など著書多数。古泉さんの最新情報はツイッター(@koizumi69
)をチェック!