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「ワクチン接種しないと退職要求」「職場にチェック表貼り出し」--。

先日、新型コロナウイルスのワクチン接種の強制に関する記事を掲載したところ、多くの反響が寄せられました。

そこで弁護士ドットコムニュースのLINE登録者に、ワクチン接種を強要されたり不当な扱いを受けたりする「ワクチンハラスメント」の経験を尋ねたところ、「上司がプレッシャーをかけてくる」「上司からいつ打つのか報告を求められた」といった声が寄せられました。その一部を紹介します。

●「家族もワクチン受けて」

IT企業で働く男性は「職域接種について、希望されない人は理由を添えて知らせてくださいと通達が来ているんですが、理由を伝える必要はあるんでしょうか」と質問を寄せました。

人事責任者にメールで伝えることになっており、「秘密にしますといったことが書かれているのですが、接種希望者のみ連絡くださいという形にすれば良いと思います」と疑問に感じています。

またIT企業で働く別の女性は、「職場で、家族を含めてワクチンを受けるよう強制されている」と言います。現在は在宅勤務ですが、ワクチンをいつ打つのか報告を求められ、ワクチンを1回接種した後に出社するよう求められたそうです。

また、5月にワクチン接種したという医療従事者の20代男性は、「職員は原則接種」と書面で通達されました。連絡しない場合は接種希望とみなされ、接種を希望しない場合は理由を書いて連絡するよう言われました。

休憩室に接種者のリストが貼り出されていた時もあり、「同僚には打ちたくないという人もいましたが、断れる雰囲気ではありませんでした」と話します。

●理由を説明する必要はない

ワクチンを打たないことについて、会社側に理由を説明しなければいけないのでしょうか。笠置裕亮弁護士は「従業員には理由を説明する必要も、義務もありません」と話します。

「ワクチンを接種するかどうかは、あくまで個人の自由であり、第三者が強制することはできません。このことは、法律や政府のアナウンスでも、何度も明確にされています。

2020年12月に成立した改正予防接種法では、接種は国民の努力義務とされていますし、同法の附帯決議においても、『新型コロナウイルスワクチンの接種の判断が適切になされるよう、(略)、接種の判断は国民自らの意思に委ねられるものであることを周知すること』(同第1項第1文)と明記されています。

現状、ワクチン接種が最も求められやすいのは医療従事者だと思いますが、医療従事者に対しての接種すら、厚労省は同意が必要だとアナウンスしています。

そのため、会社がワクチンの接種を従業員に対して強制することは許されず、接種していないことを理由とする人事上の不利益取扱いは違法であり無効です。

このことは、上記附帯決議の中でも、『ワクチンを接種していない者に対する差別、いじめ、職場や学校等における不利益取扱い等は決して許されるものではないことを広報等により周知徹底するなど必要な対応を行うこと』(同第1項第2文)と明記されているとおりです」

●会社側はどう対応すべき?

会社側はどう対応するのが良いのでしょうか。

「会社の事業の中で、従業員に対してワクチン接種を勧めたいと考えているのであれば、丁寧な説明を行い、本人の同意をとって接種してもらうほかありません。

万が一ワクチンの接種について健康被害が生じた場合には、予防接種法に基づく救済(医療費・障害年金等の給付)を受けることができることや、救済を受けるにあたって会社も援助するといったことを伝えることは重要でしょう。

ただ、これを超えて、接種が原則であり、正当な理由がなければ接種を拒めないような風潮を作り出すことはいけません。接種を拒んだ従業員に対して、見せしめ的に人事上の不利益取扱いをすることが許されないことは、述べた通りです。

その他にも、会社が接種への同意書に強制的にサインさせ、接種を拒めなくさせるような労務管理をしている場合において、万が一従業員に健康被害が生じた場合、安全配慮義務を怠ったとして会社に損害賠償義務が生じる可能性が高いでしょう」

●体験談募集!

職域接種や自治体による64歳以下への接種が始まる中、ワクチン接種を強要されたり不当な扱いを受けたりする「ワクチンハラスメント」を経験していませんか。ぜひ体験談を教えてください。以下からLINE友だち登録をして、編集部にメッセージをお寄せください。

【取材協力弁護士】
笠置 裕亮(かさぎ・ゆうすけ)弁護士
開成高校、東京大学法学部、東京大学法科大学院卒。日本労働弁護団本部事務局次長、同常任幹事。民事・刑事・家事事件に加え、働く人の権利を守るための取り組みを行っている。共著に「労働相談実践マニュアルVer.7」「働く人のための労働時間マニュアルVer.2」(日本労働弁護団)などの他、単著にて多数の論文を執筆。
事務所名:横浜法律事務所
事務所URL:https://yokohamalawoffice.com/