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横浜市戸塚区の路上で、警察官に向けて鉄パイプを振り回した男性が6月29日朝、公務執行妨害の疑いで逮捕される騒動がありました。

報道によると、男性は半裸で、自身を囲むようにいる警察官をけん制するかのように鉄パイプを振りながら走り回っていました。その直前には、現場近くの交差点で交通事故を起こしていたようです。

その後、応援も駆けつけた警察にその場で取り押さえられ、現行犯逮捕されました。幸いけが人などは出なかったようです。

●軽犯罪法や条例に違反する可能性あり

鉄パイプは、ガス・水道管や建設現場の足場に使われるなど用途の広い資材ですが、その硬さから振り回せば立派な凶器になります。過去の傷害事件や暴動で鉄パイプが使われたケースも決してめずらしくありません。

法律も、鉄パイプを持ち歩くことなどには一定の規制を設けています。

たとえば、鉄パイプは「刃物、鉄棒その他人の生命を害し、又は人の身体に重大な害を加えるのに使用されるような器具」にあたるとして、正当な理由がなく隠して携帯した場合には、軽犯罪法違反となります(1条2号)。

また、各自治体の条例によって規制されている場合もあります。

今回の騒動があった神奈川県は、「迷惑行為防止条例」で、公共の場所または公共の乗り物で、正当な理由なく、通行人や乗客などに対し、不安を覚えさせるような方法で、鉄パイプを携帯してはならないとされています(2条3項)。

また、「暴走族等の追放の促進に関する条例」では、公共の場所に集合した暴走族などが、正当な理由なく、 公衆に不安を覚えさせるような方法で鉄パイプを携帯してはならないとも定めています(12条)。

このほか、大阪府では、「安全なまちづくり条例」で、道路、公園などの場所や電車、航空機など乗り物で、社会通念上正当な理由があると認められる場合を除いては、鉄パイプを携帯してはならないとしています(26条1項)。

軽犯罪法があるにもかかわらず、これら条例が別途鉄パイプを規制していることには理由があります。

軽犯罪法は、「隠して携帯」することを要件としています。このため、暴行・傷害や強盗の目的で鉄パイプを携帯していても、公然と手に持っている場合や、自動車の助手席や後部座席に単に置いている場合には、軽犯罪法違反にはなりません。

しかし、人に危害を加える目的で鉄パイプを携帯しているなら、隠していようが堂々と持っていようが、その危険性は同じでしょう。条例による規制は、軽犯罪法には引っかからない法の「隙間」を埋めるためのものといえます。

●鉄パイプの扱いにはご注意を

なお、複数人が一緒に傷害や強盗などをする目的で鉄パイプを持って集まった場合には、凶器準備集合罪(刑法208条の2第1項)が成立する可能性があります。

2015年4月には、敵対する少年グループと決闘するため、金属バットや鉄パイプを持って公園に集まったとして、浜松市の暴走族に所属する少年14人が同罪の疑いで書類送検されるというケースもありました。

日常生活でなんとなく鉄パイプを手に持っているというようなことは考えられませんが、以前に使用した際に余った鉄パイプが車のトランクに眠っている--、そんなことはあり得そうです。

本人にとっては単なる「うっかり」でも、あらぬ疑いを持たれてしまう可能性は否定できません。鉄パイプの扱いには十分気をつけましょう。