かき揚げで夏越ごはん。絶対に失敗しない作り方を野粼洋光さんが伝授
6月30日は「夏越ごはんの日」
夏越ごはんとは、古来より6月の晦日に全国各地の神社でおこなわれてきた夏越の祓(はらえ)の神事に合わせた、新しい行事食です。茅の輪(茅で作られた数メートルの大きな輪)に見立てた丸いかき揚げを雑穀ごはんにのせて食べ、残り半年の無病息災を願います。
おいしい夏越ごはんを作るために、かき揚げをマスターしたい!そこで、東京・南麻布の日本料理店「分とく山」総料理長の野粼洋光さんを訪ねました。
「多くの人が“かき揚げはむずかしい”というイメージを持っているのは、それはきっと油鍋の中で具材がバラバラになって、上手にまとまらなかったという経験があるからです。
一度失敗すると大抵の場合、次は衣を重くしますよね。すると今度はもったりとした仕上がりになってしまいます。
では、どうしたらいいのか。答えは簡単。小さな鍋を使えばいいんですよ。家庭でかき揚げを作るならこの方法が一番です。誰でも失敗せずに作れます」
軽い衣の場合、具材がどうしても四方八方にばらけてしまいますが、15cmくらいの鍋なら鍋いっぱいに具材が広がってもそれ以上は逃げ場がありません。必然的にタネがまとまるのだと野粼さんはいいます。
「絶対に失敗しない」というかき揚げの作り方、とても気になりますよね。 そのかき揚げを使った丼のレシピと合わせてご紹介します。
材料(2人分)
調理時間:15分
・無頭えび……4尾
・玉ねぎ……1/4個
・しいたけ……2枚
・三つ葉……10本
<天衣>
・小麦粉……4尾
・卵……1個
・冷水……120cc
作り方
1. 具材を切る
えびは殻をむき、背わたを取ってひと口大に切ります。玉ねぎとしいたけは、3mm幅にスライスします。三つ葉は3cmの長さに切ります。
「具材は何でもいいですよ。夏越ごはんの場合は、赤いパプリカや緑のゴーヤなどを用いることが多いようですが、元々かき揚げは、あまった野菜で作る料理。だから、大げさに考える必要はないんです。
えびでなくても、じゃこを使ってもおいしいです。野菜は3mmくらいの幅に切ると火の通りがよくなります」
2. 具材に小麦粉をまぶす
ボウルに1を入れ、小麦粉大さじ1杯(分量外)を入れて全体にまぶします。
「衣をつける前に粉をまぶすことで、衣が絡みやすくなります。女性もファンデーションをつけるときに先に下地を塗るでしょう?それと同じことです(笑)。
具材の水気をペーパータオルでしっかりふき取ることも、忘れないでください」
3. 衣の材料を混ぜ合わせる
ボウルに卵を割り入れて溶き、水を加えて混ぜます。ふるった薄力粉を3回に分けて入れ、その都度、泡立て器で均一に混ぜます。
「小麦粉は一度に入れず、3回に分けて入れましょう。ダマを残さないようにしたいので、菜箸ではなく、泡立て器を使ってしっかり混ぜ合わせます」
4. 具材と衣を混ぜ合わせる
2に3の8割ほどを加えて、さっくりとまんべんなく混ぜます。
「このとき、具材と天衣を全部混ぜないでくださいね。残った天衣は、あとで使います」
5. 170℃の揚げ油にタネを入れる
直径15cmほどの鍋かフライパンに、深さ3cmくらいまで油を入れて170℃に熱します。少量の衣を油に落とし、すぐ浮き上がってきたらタネを油に入れます。
「天衣を切るようにしながら、タネを入れていきます。まとまらなくてもあわてないで。気にせず次々にタネを鍋に入れます。かき揚げのタネを入れると油の温度が下がるので、ここで火を強めます」
5. 残しておいた天衣を回しかけ、片面を揚げる
具材が鍋いっぱいに広がり少し固まってきたら、残しておいた天衣をつなぎとしてお玉1杯分ほど回しかけます。3分ほど揚げてかき揚げの表面が固まってきたら、裏返します。
「天衣をあとから回しかけることによって、鍋の中で離れている具材がしっかりまとまります。
鍋から湯気が出なくなり、油の音がカラカラといい音がしてきたら、ひっくり返してもいいサイン。フライ返しと菜箸を使って裏返してください」
6. もう片面を揚げる
ひっくり返して2分ほど揚げ、全体が薄いきつね色になったら、バットに取り上げます。
7. 盛り付ける
器に盛り、大根おろし、わさびなどを添えます。
「かき揚げは天つゆや塩で食べる人が多いですが、私はわさびとしょうゆで食べるのが好きです。スプレー容器にしょうゆを入れてミスト状にすれば、しょうゆのつけ過ぎ、かけ過ぎも防げるのでおすすめですよ」
最後までサクサク感続く。かき揚げ丼
調理時間:5分(かき揚げを作る時間はのぞく)
夏越ごはんといえば、雑穀ごはんの上にかき揚げをのせるのが一般的ですが、今回は白いごはんで作るシンプルなかき揚げ丼を教えていただきました。
「つゆは丼用にちょっと甘めに味付けにします。ちなみにつゆをかけ過ぎると、さっくり揚がったせっかくのかき揚げが、びちゃびちゃになって台なしに。かき揚げ丼にして食べる場合は、つゆはかき揚げの片面だけをさっと浸すくらいで十分です。
おろししょうがのほかに、刻み海苔をのせて食べるのもおすすめです。香ばしさが増して、よりおいしくいただけます」
材料(2人分)
・かき揚げ……2枚
・ごはん……2杯
・しょうが(すりおろし)……お好みで適量
<つゆ>
・出汁……80cc
・しょうゆ……20cc
・みりん……20cc
・砂糖…… 小さじ1杯
・かつお節……1g
作り方
1. 鍋につゆの材料を入れて火にかけ、少し煮詰めたらザルで濾し、鍋に戻す
2. 揚げたてのかき揚げを1に片面だけ浸し、つゆに付けた面を下にしてごはんを盛った丼にのせ、しょうがを添える
発想の転換が、「夏越ごはん」のかき揚げをおいしくする!
「かき揚げは、“こうしないといけない”という固定概念を手放すことが大事」と話してくださった野粼さん。まさに目から鱗の連続でしたが、実際に試してみたら本当に失敗せずに作ることができました。
そして、野粼さんおすすめの食べ方である、わさびとミストしょうゆでかき揚げを食してみたところ、これまた絶品!サクサク感が失われないうえに、しょうゆの風味がかき揚げの香ばしさに合うんです。何事も決め付けはダメなのだと、改めて気付かされた気がします。
さて、かき揚げ作りはこれでバッチリ。6月30日はかき揚げをのせた夏越ごはんを作り、無病息災を祈りましょう!
取材・文/福田 彩(macaroni 編集部)
撮影/宮本信義