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俳優・ピエール瀧さんが刑事処分を受けたことで、助成金を不交付としたのは、違法だとして、映画『宮本から君へ』の制作会社が、独立行政法人「日本芸術文化振興会」を相手取り、処分の取り消しをもとめた訴訟で、東京地裁は6月21日、処分の取り消しを命じる判決を下した。原告側は「画期的な判決だ」としている。

●「公益性の観点から適当ではない」と不交付となった

映画『宮本から君へ』は、漫画家の新井英樹さん原作で、池松壮亮さんと蒼井優さん主演の"泥臭い人間ドラマ"。2019年3月、文化芸術振興費補助金に係る助成金(1千万円)の交付内定を受けた。

ところが、出演者の1人であるピエール瀧さんの有罪(懲役1年6カ月・執行猶予3年)が確定すると、日本芸術文化振興会の理事長は同年7月、不交付とする処分を下した。その通知書には次のように記載されていた。

「麻薬及び向精神薬取締法(麻薬取締法)違反により有罪が確定した者が出演しており、これに対し、国の事業による助成金を交付することは、公益性の観点から、適当ではないため」

●東京地裁「裁量権の範囲の逸脱またはその濫用」

映画の制作会社「スターサンズ」は同年12月、この処分を不服として、取り消しをもとめて東京地裁に提訴した。

清水知恵子裁判長は「助成金を交付しないこととした処分は、裁量権の範囲の逸脱またはその濫用にあたり、違法である」と判断した。

日本芸術文化振興会は、弁護士ドットコムニュースの取材に「判決文を精査のうえ、今後の対応について検討します」とコメントした。

●伊藤真弁護士「文化芸術は世俗的な忖度など無用である」

判決後、原告側が記者会見を開いた。弁護団の1人で、憲法問題にくわしい伊藤真弁護士は次のように述べた。

「芸術の自主性、表現の自由の価値にとても重きをおいた画期的な判決だ。表現の自由にもたらす萎縮効果、さらには公益性という非常にあいまいで、不明確な概念が独り歩きすることを阻止する一つの役割を果たすのではないか。

さまざまな大人の事情から忖度する世の中で、文化芸術は堂々と、その信じる価値・美しさを主張していいんだ、世俗的な忖度など一切無用である、そのことが文化芸術の価値なんだと(いうメッセージを判決文から)読み取った」