バカッター・リターン、繰り返されるバイトテロの歴史…破産した蕎麦屋、検挙された少年たち
バイト従業員による勤務先での悪質なイタズラを撮影し、インターネット(SNS)に投稿して炎上する「バイトテロ」が大きな問題となっている。
「バカッター」と呼ばれることもあるこの行為によって、企業は壊滅的なイメージダウンを避けられない。しかし、関係した本人も個人情報が特定されるなど社会的制裁を受けるほか、法的にも損害賠償を請求されるなど、タダでは済まない。
これまでのバイトテロの歴史を振り返り、いっそうの警戒を怠らないようにしたい。
●冷蔵庫や食洗機に入るバイトたち
数多くのバイトテロのなかでも、特に大きなニュースとなった事例を振り返ってみよう。
2013年、東京都のステーキ店「ブロンコビリー」で、バイト従業員が店の冷蔵庫に入る写真をツイッターに投稿。
問題の発覚をうけて、運営会社は店を一時的に閉めて、清掃・消毒などにあたると同時に、該当の従業員を解雇した。
しかし、再開に向けた動きもむなしく、批判を受けた従業員がネット上で反論したことなどから、問題は瞬く間に大炎上。結局のところ、運営会社は閉店決定にまで追い込まれた。
この2013年には、後述の「蕎麦店食洗機騒動」など数々の失態が発生・報告され、この年のネット流行語大賞に「バカッター」がランクインすることとなった。
●セブンイレブン、おでん吐き出し事件
大手コンビニ「セブンイレブン」は2019年2月、横浜市のフランチャイズ店舗で、バイト従業員らが鍋のおでん(しらたき)を口に含み、吐き出す動画を撮影、投稿していたことを発表した。
ツイッターに投稿された動画が、「汚い」など批判されていた。同社はバイト従業員の解雇を発表した。
●くら寿司のバイトは刑事事件で家裁送致
2019年1月、回転すしチェーン「くら寿司」(大阪府守口市)の厨房で、ゴミ箱に捨てた魚をまな板に戻す様子を撮影して調理しようとするバイト従業員の動画がインスタグラムに投稿された。動画は一度削除されたものの、知人の手によって後日再投稿されたという。
運営会社は、刑事・民事で法的措置をとる意向を発表するとともに、撮影に関わった2人の従業員の退職処分を決めた。
その後、読売新聞(同年6月28日付)によれば、大阪府警が同5月、当事者の従業員と、動画を再び投稿した知人の少年3人を偽計業務妨害の罪で書類送検した。
地検は同6月、17歳の少年2人を偽計業務妨害の非行事実で、19歳の少年(=まな板に戻した少年)を偽計業務妨害ほう助の非行事実で家裁に送致した。
●集合住宅の受水槽で泳いだ
バイトではないが、大和ハウス工業が建設した賃貸住宅の受水槽の点検を請け負った設備工事業の20代男性らが2018年9月、受水槽で泳いで遊ぶ様子を撮影し、TikTokに投稿した。翌年になって、その動画がツイッターなどで拡散し、問題が発覚したことで、大和ハウスは不適切行為として発表した。
「不衛生」などと批判が殺到し、管理会社が水を抜いて清掃することになった。
●ココイチの不衛生な動画
記憶に新しいところでは、2021年6月に起きたカレー店「CoCo壱番屋」のバイトテロは世間に衝撃をあたえた。九州のフランチャイズ店舗のバイト従業員が、休憩室で食事をしていたところ、衣服のなかに手を突っ込むと、その手からまかないに何かをふりかける動作をおこなった。
従業員がその様子を撮影した動画を自身のインスタグラム(鍵付きアカウント)のストーリーズに投稿し、ツイッターなどで拡散された。店舗は清掃・消毒のため1日の営業停止をよぎなくされた。
運営の壱番屋はリリース(6月14日付)で謝罪した。また、従業員に対しては「規定に則って厳正な対応を行う」考えを公表した。
●「閉店」に追い込まれるも…和解金わずか200万円
2013年、都内の蕎麦店「泰尚」のバイト従業員らが食洗機に入る様子をツイッターにアップした。週刊誌報道によれば、批判が殺到し、店は投稿からわずか3カ月後に閉店に追い込まれることに。約3300万円の負債を抱えて破産したという。店側はバイトの大学生らに計1385万円の損害賠償をもとめる裁判を起こしたが、約200万円で和解したと報じられた。
個人経営の飲食店がバイトテロの炎上に巻き込まれると、ひとたまりもない。飲食店を運営する企業も、店にスマホを持ち込まないなどのルールを設けたり、バカッターの事例などを伝える研修を実施しているが、リスクをゼロにおさえこむことはできていないのが実情だ。
一方、この蕎麦店のケースも含めて、ほとんどのバイトテロにおいては、投稿にかかわった当事者の氏名や所属大学などの個人情報もあばかれ、ネット上に残り続ける。就職にも影響があると考えられ、まったくの無傷ではいられない。
「友人限定」の投稿であれば問題ないと考えている若者も少なくないようだが、実際にはCoCo壱番屋の件のように、鍵付きのアカウントで期限限定投稿であっても、拡散するケースは多い。どんなSNSでも、投稿は全世界で閲覧されると肝にめいじておくべきだろう。
さらに、これまで説明してきたとおり、解雇されたり、損害賠償を請求されることもあることは忘れてはいけない。