ティラノサウルスやステゴサウルスなど、かつて地球上に生息していた「恐竜」は、ある一時期を境に大量絶滅したと考えられています。恐竜の大量絶滅の原因として有力視されている「隕石衝突説」について、科学系YouTubeチャンネルのKurzgesagtが特徴的なアニメーションムービーで解説しています。

The Day the Dinosaurs Died - Minute by Minute - YouTube

物語の舞台は約6600万年前の地球。この頃は「恐竜の時代」が約1億6500万年続いており、地球は暖かく快適で、ほとんどの陸地は今の時代からは想像できないほど多様な樹木、花々、シダ植物で構成される緑豊かな森で覆い尽くされており、何兆もの動物が生息していました。



恐竜は地球の至る所に生息しており、姿形も大小様々で種類も豊か。体長12〜19メートルの大型恐竜ティタノサウルスや「ジュラシック・パーク」でおなじみのティラノサウルスだけでなく、カモノハシ恐竜の中でも最も大型のエドモントサウルスなど、地球は生命で満ちあふれていました。



しかし、こうした恐竜の栄華は約6600万年前のある日に突然終わりを迎えます。終わりをもたらしたものの前兆となったのは空に瞬く光で、この光は日増しに大きくなっていったと考えられます。



この光は一時は地球の影に隠れて見えなくなったものの、明くる朝には空で再び輝き出しました。そうしているうちに太陽と同じ大きさとなり、一刻一刻大きさを増しながらユカタン半島に飛来しました。



この光の正体こそ、恐竜の大量絶滅を引き起こしたと考えられている小惑星です。この小惑星は音速の60倍という速度で大気圏に突入し、わずか2秒で大地に激突したと考えられています。



この小惑星の想定されるサイズは、直径およそ10km。10kmというと、世界最高峰であるエベレストの高さを上回ります。現代の旅客機ですら、この小惑星を超える領域を飛行することはありません。



この小惑星の衝突が恐竜の時代を根本から終わらせたと考えられています。今回のムービーでは、「小惑星が衝突した日」に生じた状況変化を一刻ごとに分けて解説しています。



まず小惑星はユカタン半島の海に落ち、海底に存在する岩盤に直撃したと考えられます。前述のサイズの小惑星が衝突した場合、核兵器数十億個分のエネルギーが周囲に放出され、小惑星自体は蒸発。放たれたエネルギーは閃光となって空を照らし、不気味な真っ白い球体がメキシコ湾上で成長します。



この白球はなおも成長を続け、岩盤は溶けて数万度という温度のプラズマと化します。爆発によって放たれた熱放射は光の速さで伝播し、着弾地点から半径約1500kmにあるもの全てを焼き尽くしました。



さらに衝突時のエネルギーが地殻を強く押しだし、深さ25km・幅100kmの超巨大クレーターを形成。海は子どもが水たまりに飛び込んだときのように、何百kmも押し戻されます。その直後に地殻のよりもどしが発生して、着弾地点にはクレーターではなく高さ10kmの巨大な山が一時的に形成されたと考えられます。



さらにこの間には、元の小惑星の60倍に相当する質量のデブリが宇宙空間にまき散らされています。



この衝突の衝撃は、わずか数分で地球上の全地域に伝わりました。地震に換算すると「マグニチュード11」ほどの大きさで、この衝撃によって着弾地点から遠く離れたインド亜大陸では3万年近く火山噴火が続いたとされています。



衝突地点に話を戻すと、爆発が大気と激しく衝突した結果、時速1000kmにも達する衝撃波が形成されました。そして、周囲一帯の土・植物・動物などのあらゆる物質全てが細切れになって数千km離れた地域までまき散らされました。



続いて、一時的に形成されていた高さ10kmの山が今度は引っ込み、その際の衝撃で高さ1000mの津波が発生。



この津波は着弾地点から四方八方に解き放たれ、周辺大陸の海岸線に住む生き物を溺れさせます。発生から15時間後でさえ、約100mの高さを保持するほどの津波です。



この間に放たれたデブリは地球の周回軌道上に数千年も残留するものも多く、中には月や火星に衝突するものまであったと考えられます。



しかし、最も割合的に多かったのは「地球に戻ってくるデブリ」でした。こうしたデブリは空気中に高速で打ち出された結果、何百度もの高温に達しており、高温に達するデブリが多数あったために大気自体の温度まで上昇したとされています。



「デブリによって気温はどのくらいまで上がったのか?」については諸説ありますが、主要とされている説は「数分で数百度まで上がった」「1分で数千度まで上がった」の2つです。言い換えれば、いずれの説においても「工業用オーブンの内部くらいの熱さに達した」という点は確実視されているということ。



この温度上昇がどれくらいの影響を与えたかについては議論の余地がありますが、土に潜ったり洞窟に逃げ込んだりできない生物は一瞬で焼死しただけでなく、降り注いだデブリの破片によって大規模な山火事が発生したという可能性すらあり得ます。今回のムービーは、世界的に大規模な山火事が発生し、さらにそのうちいくつかが数カ月にわたって続いた結果、地球が焦熱地獄と化したという説を採っています。



気化したマントルプルームは大気圏にまで到達し、そのまま地球全体に広がります。さらに大規模な山火事によって発生したすすや衝突時に生成されたエアロゾルも加わるため、日光は遮断されてしまいます。



こうして地球は闇の中に沈み、大地で燃えさかる炎が景色を照らし出すのみとなります。このようにして奇跡的に生き残った植物も、「日光不足」で死滅します。



この「日光が遮断される」という事態の影響は日数が経過するにつれ大問題となります。まずは数日のうちに、気温が25度まで低下し、日光不足で海洋プランクトンの90%が死滅。プランクトンは海洋における食物連鎖の最下層を担う生物であるため、プランクトンがいなくなった結果、最終的には大型の海洋性爬虫(はちゅう)類やアンモナイトに至るまで死に絶えます。



灰や土砂、植物の死骸などが地表を覆い尽くし、空は暗くなり、気温も低くなります。このような環境下では、菌類が繁栄します。



気温が低くなった結果として訪れた冬は何十年もの間続き、地球上の全生物種の75%が絶滅したと考えられています。



これが「恐竜の時代が終わった日」の全てです。「昨日と同じ日が何百万年も続く」という幻想が突如として打ち砕かれた日でした。



しかし、生き残った生物もいました。恐竜の直系である鳥類や、やがて地球で支配的な立場となる哺乳類です。



もしも恐竜の時代を終わらせた小惑星がなかったとしたら、今の地球がどのようになっていたかは想像も付きません。地上を支配していた恐竜が突如として絶滅しなかったならば、人類が今のように栄えるチャンスすらなかった可能性があります。人類の時代はまだ20万年ほどしか続いておらず、恐竜の時代の約1億6500万年に比べるとわずか0.1%ほどの長さしかありません。



このわずか0.1%ほどの期間で、人類は驚くべき早さで発展したと言えます。しかし、我々の将来はいまだ不確かで、注意深く未来を選択しなければ恐竜のように一瞬で滅びるかもしれません。Kurzgesagtは「我々と恐竜の差は、『未来は不確かである』という自覚があるかないかです」と締めくくっていました。