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夫に怒鳴られ、離婚届を無理やり書いてしまった。そんな女性が弁護士ドットコムに質問を寄せました。

相談者の夫は日頃から、気に入らないことがあると物にあたる粗暴さがあったといいます。そして理由は不明ですが、突然「離婚届を書け」と連日、怒鳴られるようになったそうです。相談者と子どもが寝られないほど罵倒するため、仕方なく、離婚に応じたといいます。

このように無理やり離婚届を書くように強要された場合でも、離婚届は有効なのでしょうか。また離婚後、慰謝料を請求することは可能なのでしょうか。河内良弁護士に聞きました。

●「仕方なく離婚に応じた」→有効とされる可能性高い

ーー無理やり書かされたと相談者は振り返ります。それでも有効とされてしまうのでしょうか

まず、離婚届の効力についてですが、「仕方なく応じた」とする経緯の説明を読む限り、離婚届を作成する意思はあったといえ、有効とされる可能性が極めて高いと思われます。

なお、強度の脅迫下で作成を強要されたものであるとして、無効であると主張する余地はありますが、立証のハードルが高いという問題もあります。

ーー相談者は夫の暴言などを理由に慰謝料請求をしたいと考えていますが、離婚後でも可能でしょうか

次に、離婚した後、慰謝料請求が可能かという点については、慰謝料請求の前提となっている「夫による暴言や粗暴な態度」がきちんと立証できるなら、離婚後3年間は可能です。

もちろん、認定される金額の問題はありますが、そもそも、離婚後3年以上経過している場合には、時効によって慰謝料請求権が消滅してしまいます。

なお、個々の「暴言や粗暴な態度」から、各々3年間で慰謝料請求権が時効消滅すると考える余地もあるので、とにかく、早く弁護士に相談して、すみやかに訴訟を起こすなりすべきです。

ーーこの他なにか、相談者が検討すべき事項はありますか

慰謝料請求権とは別の権利として、財産分与請求権もありますが、この権利も離婚後2年間で消滅するので、すみやかに調停申立てを行わなければなりません。

最後に、「日頃から物に当たったり、妻子を寝かせないなどの行為」が、慰謝料請求の対象となるかについては、いわゆる精神的暴力にあたるものとして、対象になり得ます。もちろん、立証できるかという問題は残りますが、立証できれば、いくらかの慰謝料は認められるはずです。

なお、「日頃から物に当たったり、妻子を寝かせないなどの行為」を受けたと相談者が主張しても、元夫は「そのような事実は一切ない」と否定してくると思われるので、立証の場面でかなりの苦労を強いられると思われます。

【取材協力弁護士】
河内 良(かわち・りょう)弁護士
大学時代は新聞奨学生として過ごし、平成18年に旧司法試験に合格。平成28年3月に独立した。趣味はドライブと温泉めぐり。
事務所名:河内良法律事務所
事務所URL:http://www.kawachiryo-law.jp