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歌舞伎俳優、市川海老蔵さんによる舞台『KABUKU』の東京公演で、人種差別的な表現があったとツイッターで指摘されて、問題となった。松竹は6月7日、弁護士ドットコムニュースの取材に「慎重な検証を重ねるべきであったと認識しております」と回答した。6月4日から開幕している京都・南座での公演では演出を一部変更している。

観劇した人のツイートや報道などによると、『KABUKU』の舞台では、外国人同士がののしりあう場面があり、中国人を想起させる登場人物に対し、疫病を広めたなどと言うセリフがあったという。

『KABUKU』は、明治座(東京都中央区)で5月末に上演された新作歌舞伎舞踊で、海老蔵さんが音声SNS「Clubhouse」でやりとりした中から着想を得たというもの。

海老蔵さんは演出を手がけているが、一体、なぜこのようなことが起きたのか。

●風刺的に描こうとした演出意図

まずは、ネットで指摘されているような表現があったのか。松竹によると、「結果として一部本来の演出意図と異なるお客様の捉え方を招してしまった箇所がございました」という。

その背景として、次のように説明した。

「新作に取り組むときはいつもそうですが、今回もアイデアの初期段階から初日を迎える直前の舞台稽古に至るまで、俳優・スタッフ共々、ディスカッションをおこないつつ進めてまいりました。

異なる価値観を認め、多様性を尊重するという本来のメッセージが観客にキチンと受け止めてもらえるか、試行錯誤の連続であったことは間違いございません。

風刺的に描こうとした演出意図が感じて頂けるかどうかが鍵でしたので、その点に充分な練り上げを施さないまま作品として世の中に出してしまったと言わざるを得ず、慎重な検証を重ねるべきであったと認識しております。

今後、テーマの取り上げ方と共に、その表現方法の是非に関しては最大限の注意を払いつつ、世の中に良質なエンターテインメントを提供して参りたいと思っております」

●世界で問題化する中国人やアジア人差別

今回、ネットで「炎上」したのには、社会的な背景があった。新型コロナウイルスをめぐっては、2019年から中国で流行が始まったことから、世界的に中国人やアジア人に対する差別や偏見が増加している。

国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチによると、イタリア・ヴェネト州の知事が2020年2月、「イタリアは衛生面への注意という点で文化的に強いものがあり、手を洗ったり、シャワーを浴びたりしているが、誰でも見たことがあるように、中国人はネズミを生きたまま食べるのだ」と発言し、後に謝罪したという。

中には深刻なヘイトクライム(憎悪による犯罪)に発展していることから、欧米を中心に社会問題となっている。