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難民認定の手続き中であっても「強制送還」を可能にする出入国管理法の改正案をめぐり、難民・外国人問題に取り組む弁護士や支援者、小説家・タレントなどの有志が5月6日、都内で廃案をうったえる記者会見を開いた。

登壇したタレントのラサール石井さんは「オリンピックの招致で『おもてなし』という言葉を使ったが、一方の外国人には非常に過酷なことをしている。片方の顔では『おもてなし』、もう一つの顔では『人でなし』。なぜ同じ外国人を差別するのか」と述べた。

●改正案ではなく「改悪案だ」

現在、国会で審議されている入管法改正案は、在留資格(ビザ)のない外国人の長期収容問題を根本的に解決するものではなく、難民認定の手続き中であっても、3回目以降の申請であれば、強制送還を可能にすることなどから、批判にさらされている。

この日の会見の呼びかけ人の一人、高橋済弁護士は「迫害から逃れてきた人(ミャンマーなどからやってきた人)を死地に追い返すことを可能にする法案だ」と批判。入管法改正案ではなく「改悪案だ」として、廃案をもとめた。

「今弱い立場の人を守ることが人権を守ることだ」

この間、名古屋入管の施設で収容されていたスリランカ女性のウィシュマさんが亡くなるという事件も起きた。未だに真相は明らかになっていないが、適切な医療を受けられていなかったと指摘されている。呼びかけ人の駒井知会弁護士は次のようにうったえた。

「ウィシュマさんの死が、国連(作業部会)から国際人権法違反だと明確に認定されている入管収容の最中に起きてしまったという事実はとても悔しい」「難民申請者はもう十二分に苦しんでいる。そういう人たちをさらに追い詰めようとする史上空前の改悪案だ」

「外国籍の人たちを人間扱いしない国は、日本国民も人間扱いすることはない。わたしたち一人ひとりが本当に弱い立場に立ったとき初めてそのことに気づくというのでは遅すぎる。今弱い立場の人を守ることが、日本に暮らすすべての人たちの人権を守ることに直結する」

小説家・中島さん「スリランカ女性の死に納得できる説明を」

小説家の中島京子さんは先日、日本に住むスリランカ男性と日本人女性の恋愛・結婚を描いた連載小説「やさしい猫」(読売新聞)を終えたばかり。主人公が在留資格の裁判をたたかうというエピソードを書いたときにウィシュマさん死亡のしらせを受けたという。

「入管施設の実態は、執筆のためにかなり取材したが、死者が出たことには動揺しています。これを止めることができる法律だったら、急ぐ意味はわかるが、止めるどころか、強制送還を可能にする法律は、亡くなる方が出る危険性がさらに高くなります。

仮に、6カ月以上は収容しないという法律だったら、ウィシュマさんは死なずにすんだ可能性があります。入管は絶大な権力を持ちすぎています。そこにこそメスを入れて、入管の権限を弱める必要があります。

今回の法案は、逆の方向を向いています。ウィシュマさんの死に関して、納得できる説明もなく、入管の権限を強める法案を通していいわけがない。強行採決もとんでもない話です。与党議員は正気を取り戻してほしい」(中島さん)