学習中にジェスチャーをすると理解度が高まる
人は話をするときに指を差したり、手を広げたり、手刀のような動きをしたりと、さまざまなジェスチャーをすることがあります。こうした動きは、聞き手に考えを伝えるのに役立つだけではなく、学習にも役立つらしいことがわかっています。
Instructed Hand Movements Affect Students’ Learning of an Abstract Concept From Video - Zhang - 2021 - Cognitive Science - Wiley Online Library
Students Who Gesture during Learning 'Grasp' Concepts Better - Scientific American
https://www.scientificamerican.com/article/students-who-gesture-during-learning-grasp-concepts-better/
これまでの研究から、何かを教わっているとき、先生の動きを見たり、手や腕で動きをまねすると、より覚えやすいことがわかっています。最近の研究では、学習者に対して特定の動きをするように指示すると、学習者はなぜその動きをしているのか認識していなくても、学習に役立つことが示唆されているとのこと。
カリフォルニア大学ロサンゼルス校、およびカリフォルニア州立大学ロサンゼルス校の研究者らはこの研究をさらに進めて「ジェスチャーの力」の境界を探っています。
研究者らが行ったのは、統計モデルのビデオ視聴体験を通した実験です。参加者は3グループに分けられ、まず、Aグループは何もせずにビデオを単に視聴しました。Bグループが見たのは、Aグループが見た映像に、グラフから赤い棒が離れるアニメーションを重ねたもので、参加者は手に赤い棒を持って同じように動きをマネしました。Cグループも赤い棒のアニメーションが重ねられた映像を見て、棒の動きをマネしましたが、赤い棒の動きはグラフとはまったく関係しない動きでした。
映像を3回見たあと、参加者全員が短い設問に回答したところ、得点はBグループ>Aグループ>Cグループとなりました。これは、指示された動作が、無意識であっても、思考に影響を与えたものであると推測されています。
ジェスチャーには「学習者を飽きさせない」という利点もあります。実験では映像を3回繰り返し見ていますが、そのたびに、映像をどれだけ理解できるか参加者に評価してもらったところ、ジェスチャーをしているBグループとCグループは高評価でしたが、ジェスチャーをしないAグループの評価は2回目から3回目で約20%低下しました。これは、Aグループ参加者の「理解度が低下した」のではなく、「もう一度ビデオを見なければならない」という不満から出たものであると考えられています。