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技能実習生に対して、パワハラやセクハラ、賃金未払いなどの問題を起こした事業者をGoogleマップ上に表示するウェブサイト「外国人技能実習制度 違反企業マップ」(https://titp-help.com/)が開設されて、話題になっている。

サイトの管理人によると、きっかけになったのは、2019年、技能実習生の問題をとりあげたNHKのドキュメンタリー番組「ノーナレ」(画面の向こうから)だった。今治タオルの下請け企業で実習生が過酷な労働環境で働かされているという衝撃的な内容だった。

このサイトを開設したあとは、技能実習制度について痛烈な批判を繰り返していたネット掲示板「5ちゃんねる」の「ニュー速(嫌儲)」のユーザー(住民)から協力・アドバイスをもらい、ウェブサイトを運営に活かしているという。

「なにの後ろ盾もない一般人のわたし1人が制作・運営しています」。サイトの管理人に取材を申し込んだところ、「完全匿名」ということになったが、メール取材に応じてもらえた。どんな思いがあったのだろうか。(弁護士ドットコムニュース編集部・山下真史)

●NHKのドキュメンタリーが社会を動かした

――開設のいきさつはどのようなものか?

この「外国人技能実習制度」について、初めて、そして大きく話題に上がったNHK「ノーナレ」がきっかけです。この放送後、ネット界隈では大きな衝撃と多くの反応が生じました。

実習生の環境に心痛めるコメントや、行政機関の働きかけの是非を問う声など、さまざまありました。

その反動のせいか、中には過激な反応として、放送の中で非公開となった企業への「犯人捜し」をおこなう人も現れました。残念ながら、無関係の会社が一方的に晒される事態となり、大変な騒動になりました。

しかし、その一方で、事態が大きくなったために企業団体が直々にホームページに「報告文章」「謝罪」「是正措置」の声明を出しました。一部ほめられない行為もありましたが、多くの人が問題意識を持ち、声を上げ、社会を大きく動かした事件だったと思っています。

その後、騒動は一時的なものであったため、少なくともわたしが知るネット界隈では、制度について大きく話題に上がることはなくなりましたが、各地の実習生の劣悪な環境について、ニュースでいくつか報道されるようになり、少しずつ目立つようになってきました。

しかしながら、実際のところは、制度自体の根本的な解決はおこなわれていません。

そのため昨今、事態が大きく変化し始めました。今までの企業の反道徳的な行為や劣悪な環境が改善されないだけでなく、さらにはそれを苦に会社から逃亡し、犯罪に手を染める実習生が現れるようになってきたというニュースです。

もはやこれは「外国人技能実習制度」の枠を超えた社会問題となり、事態は刻々と大きく・深刻になっています。

にもかかわらず、わたしたち日本人にとって直接的な被害がないため、一般の日本人自身は問題解決のために声を上げていません。ですが、過去の「ノーナレ」の騒動のように多くの国民が事実を知ることで声を上げ、社会を変えたという事実もあります。

●国民による「監視」が自浄作用に大きく寄与する

――どうすれば問題は解決できるのか?

根本的な視点に立ち戻ります。この問題は「制度設計そのもの」と「企業の倫理観の欠如」に起因しています。特に、後者の意識改革を見直さない限り、改善は困難であると思っています。

意識を見直すにはどうすべきか。わたしは「ノーナレ」騒動による「犯人捜し」には否定的です。ですが、多くの国民が企業の不正を「監視している」という状況は、自浄作用に大きく寄与するとも考えています。

企業団体が声明を出した理由もこの1つだと思っています。また、問題を引き起こしている企業が自分たちの「身近である」ということを知ることは国民の意識向上にもつながります。

過去に違反をおこなった企業の情報を事実を可視化することで、上記の目的を達成し、そして制度の本来の目的である国際協力を達成できるのではないかと考えて、このサイトの構想に至りました。

もちろん、大前提として取り扱う情報は事実のみとし、決してデマや風評被害を発生させてはいけません。

●実習生に寄り添ってほしい

――今後の展開はどう考えているか?

今後の展開については、引き続き地道に情報を積み上げ精度を高めていこうと思っています。現在、おかげさまで、多くの投稿をいただいており確認作業を進めています。

また、今後もサイトを続けるにあたり法的にしっかりとわきを固めたいと考えておりますので、弁護士等に相談して、適切なサイト運営を目指していきたいと思っています。

――ユーザーに期待することは?

サイト利用という意味では、引き続き正確な情報の提供いただき、サイトの精度を高めていく協力をお願いしたいです。また、サイトが多くの人の目につくように引き続きの周知も期待しています。

事業主の方においては、情報に誤りがないか指摘をいただいたり、違反に至った経緯や是正に取り組んでいる状況を提供いただけたら幸いです。

実習生や関係者の方においては、根拠資料等に基づくリーク情報の提供をお願いしたいと思います。

いずれにしてもデマや風評被害につながるようなサイト作りは絶対に避けたいため、「確かな情報」と「幅広い宣伝・啓蒙」を期待しております。

――気持ちの面では?

少しでも多くの方がこのサイトをきっかけに「外国人技能実習制度」に対する問題意識を持ってもらえることができればと思っています。

閲覧者の中に制度を利用している事業主の方がいらっしゃれば、改めて実習生に寄り添り、耳を傾けてもらいたいです。

閲覧者の中に身近に実習生と関わる機会がある方がいらっしゃれば、優しい言葉や手助けの姿勢をより一層心がけてもらいたいです。

今まで「自分には関係ない」「知らない世界の話」と思っていた方は、この制度についてニュースや話題が上がったときには、以前より少しだけ注視してもらいたいです。