2021年4月9日、テスラやSpaceXの創業者として知られるイーロン・マスク氏が立ち上げたスタートアップ「Neuralink」が、脳に埋め込まれた電極により、思考だけでゲームをプレイするサルの映像を公開しました。

Monkey MindPong - YouTube

The first fully-implanted 1000+ channel brain-machine interface - Neuralink

https://neuralink.com/blog/

「ペイジャー」という名前のサルの脳には、「Link」と名付けられた直径23mmのチップが埋め込まれています。さらにLinkには1024本の電極が内蔵されており、それらはすべてペイジャーの脳、筋肉の運動をつかさどる領域に差し込まれています。



Linkは脳の電気信号を読み取って、筋肉の実際の動きと照らし合わせてモデル化し、電気信号だけで脳が意図した動きを予測することができるチップです。Linkについて、詳しくは以下の記事を読むと分かります。

Neuralinkのイーロン・マスクCEOが脳とAIをつなぐ埋め込みチップ「Link」&自動手術ロボ「V2」を発表 - GIGAZINE



今回の実験では、まずペイジャーは右手でジョイスティックを動かし、白い小さなドットをオレンジの枠に合わせるというゲームを行います。成功すると中央の細い筒からバナナスムージーが出てくるため、ペイジャーは夢中でドットを動かし続けます。



ペイジャーの脳の電気信号は25ミリ秒ごとに記録されて、解読ソフトウェアを実行中のPCにBluetoothで送信されます。そして、ソフトウェアで電気信号と実際のドットの動きの関係のモデル化が行われます。



以下のムービーにおいて、各円は電極1個、円の大きさは電気信号の活発度、円の色は「各神経細胞が一番活発化するのはどの方向を意識した時なのか」を表しています。さらに、各電極が脳のどの位置に埋め込まれているのかも表示されます。

続いて、作成されたモデルを基にペイジャーの電気信号をドットに反映させる実験が行われました。ペイジャーは先ほどと同じようにジョイスティックを握ってゲームを行っていますが、ジョイスティックにはケーブルがつながっていません。にもかかわらず、ドットはしっかりペイジャーの意図したところに動いています。



さらに、ペイジャーが好んでいるというゲーム「ポン」も行われます。今度はジョイスティックを握ってすらいませんが、ペイジャーは右側の自分のパドルをスイスイと動かしています。

Monkey MindPong Picture-in-Picture - YouTube

以下はペイジャーがポンを遊んでいる時の脳の電気信号を捉えた画像。黄色い線で表されるように、パドルを上に動かすと上を意識した際に活発化する神経細胞(青)がはたらき、下に動かすと下方向で活発化する神経細胞(赤)がはたらいている様子が確認できます。



Neuralinkは「身体がまひした人々をデジタルに触れさせること」を第一目標に掲げています。Neuralinkによって思考だけでゲームをプレイしたり、オンラインでコミュニケーションを取ったりすることを可能にするほか、電気信号をもとに体の神経や筋肉を刺激し、動かなくなった手足を自由に動かすような技術の開発も視野に入れています。