人の「悪口」を言っていると…?

写真拡大

 緊急事態宣言も解除になり、私たちの生活は平常に戻りつつあります。そのような中、「不満があっても他人の悪口を言うべきではない」「悪口は不幸を引き寄せる」「悪口をやめない限り幸せにはなれない」と主張する精神科医がいます。

 今回は、精神科医でベストセラー作家の樺沢紫苑さんに「悪口」がもたらす弊害について伺いました。近著に「精神科医が見つけた 3つの幸福 最新科学から最高の人生をつくる方法」(飛鳥新社)があります。

「悪口」は不幸になるトレーニング

 樺沢さんは、自分や他人のネガティブな側面に注目してしまう人、「ネガティブな観察力」が強い人は幸福感が得られないと言います。どうしてでしょうか。

「楽しいことがどれだけあろうと『たった1つのネガティブ(つらい、苦しい)』に集中してしまいます。ですから、どれだけ仕事や生活が改善しても、十分な幸福感を味わうことは難しいでしょう。そして、実際、多くの人は『ネガティブな観察力』を鍛えるトレーニングを毎日しています。それは『悪口を言う』ことです」(樺沢さん)

「カフェに行くとママ友たちが集まって、旦那や先生への『悪口大会』をやっています。居酒屋に行くとサラリーマンが集まって、上司や会社への『悪口大会』をやっています。私は『悪口』は百害あって一利なしと考えます。といいますか、悪口を言い続ける限り、『幸せ』になることは無理だと思います」

 樺沢さんは「幸せ」を遠ざける最強の呪文が「悪口」だと言います。

「悪口を言うことは相手の『悪い点』『欠点』『短所』『気に入らない言葉』『しゃくにさわる行動』を必死になって探し出すこと。つまり、『ネガティブな観察力』を鍛える、“最凶”のトレーニング法なのです。他人に対する『ネガティブな観察力』が鍛えられると、その『ネガティブな観察力』は自分に対しても無意識に発動されます」

悪口は自己肯定感を下げる

 さらに、悪口は自己肯定感を下げます。樺沢さんは次のように解説します。

「悪口は自分の『外見』『性格』『行動』『言葉』にネガティブな部分を発見し、『なんて自分はダメな人間なのだろう』と自己肯定感を下げるのです。悪口やゴシップが好きな人は寿命が5年短いという研究結果もあります。ストレス発散効果があるのなら、寿命は延びるはず。多くの人は『悪口大会はストレス発散になる』と信じていますが、全く逆効果なのです」

「悪口ばかり言う人が人から信頼されたり、尊敬されたりすることはありませんから、結果として『つながり』を失っていく。そうすると、職場でも信頼されず、仕事でも成功できない。悪口を言うと、セロトニン的幸福、オキシトシン的幸福、ドーパミン的幸福の全てを失うのです。悪口やめますか? 幸せ、やめますか? あなたが悪口を言うほど、『幸せ』はあなたから遠のいていくのです」

 結果として自分の自己肯定感を下げて、自分のストレスを増やし、自分の健康を悪化させる。それが「悪口大会」です。何も良いことはなさそうです。

悪口をやめないと誰も助けてくれない

 上司に限らず、同じ組織の人間からは気に入られる方がいいに決まっています。社内で嫌われる人間には総じて、同じような特徴があります。それは樺沢さんが主張するように「悪口」の多い人です。悪口がもたらす弊害については話すまでもないでしょう。

 悪口は聞いていて気持ちのいいものではありません。たとえ、親しい間柄であっても、悪口は絶対に口にしてはいけません。しかし、酒が入れば上司の陰口や悪口の大合唱になります。飲み会の席だったらいいだろうと羽目を外してしまうわけです。

 筆者が親しい上場企業の社長は、悪口の多い人とは絶対に付き合いません。そのような人が客人で来たら、見送りの後に洗面所で手を洗い、火打ち石を鳴らし、まき塩をさせています。それはバイ菌を消毒するかのごとく徹底しています。

 では、酒宴の席で「悪口大会」に巻き込まれたらどうすればいいのでしょうか。一番簡単なのは(実は難しいのかもしれませんが)聞き役に徹して否定も肯定もしないことです。話を合わせてしまうと、悪口を話している人と同じになってしまいます。

 不思議なことに、このような悪口はどれだけクローズドな仲間同士でも、気が付いたら漏れているものです。知らない間に当人に伝わる可能性もあるわけです。さて、緊急事態宣言も解除になり、人と接する機会やイベントが増えてくると思います。その際には「悪口は不幸を引き寄せる」ことを頭の片隅に入れておきたいものです。