激レア「UFO信号機」将来どうなる? 姿消す一方で「更新」も そもそもなぜUFO型?
信号機というと、クルマ用と歩行者用は別で、両方が必要な場合は個別に設置されているのが一般的。しかし一部地域には、それら全てがひとつになった信号機があります。この一体型信号機が数を減らしています。
約半世紀前に誕生 正式名称は「懸垂型」
交通信号機は全国に約21万基(2019年度末)。車両用でよく見るのは、赤、黄、青がワンセットで横ないし縦一列に並んだもので、視認しやすいよう交差する各々の道路に相対するように、支柱1本につき1基ずつ、もしくは両面2基の形で設置されているものがほとんどです。
しかし一部の地域には、交差点の中央に吊り下げられる、いわゆる「UFO信号機」と呼ばれるものが存在します。群馬県藤岡市にある現役のUFO信号機を見に行ってきました。
群馬県藤岡市に設置されている「懸垂型交通信号機」、通称UFO信号機。歩灯のない、車灯のみのタイプ(柘植優介撮影)。
一説によると、群馬県藤岡市のものは、いまや専用設計の「UFO信号機」としては関東地方で現役唯一のものだとか。やはりこれも交差点の隅に立つ1本の支柱から伸びたアームで交差点の中央に吊られる構造であり、ロの字形の4面にそれぞれ、赤、黄、青の3灯が備えられていました。
信号の内側に設けられた銘板には「昭和51年3月製造」という刻印が入っていたので、すでに45年ものあいだ現役であることがわかります。
「UFO信号機」の正式名称は、「懸垂型交通信号機(けんすいがたこうつうしんごうき)」といい、最初に開発した名古屋電気工業株式会社によると、1975(昭和50)年に名古屋市立新栄小学校前(中区)の交差点にテストケースとして設置したのち、大須の赤門交差点に本設置をしたのが始まりだといいます。藤岡市の信号機も同じ名古屋電気工業製であり、黎明期のものと推察されます。
懸垂型交通信号機が生まれた理由は、事故が多発するものの信号機用の支柱を立てるスペースがなく、加えて地下に排水溝やガス管、水道管など多くの埋設物がある細街路に展開できる新型信号機が要求されたからだそうです。
急速に姿消しつつあるUFO信号機
「UFO信号機」はいまも国内では群馬県以外に、宮城県や愛知県、大阪府、広島県などでも使われているそうですが、なかでも最も数多く残っているといわれるのが宮城県です。
そこで宮城県警交通部交通規制課に「UFO信号機」の状況を尋ねたところ、県内では2020年4月1日現在、仙台市を中心に18基残っているとのこと。しかし、「県警は2023年までにすべての信号機をLEDタイプのものに換装する予定のため、3年以内をめどに撤去を目指しています」と話します。こちらも、間もなく見られなくなる模様です。
仙台市民に話を聞いたところ、すでにかなりの数の「UFO信号機」が撤去されており、仙台市内のものもだいぶ数を減らしているとのこと。体感的には2021年2月現在、すでに10基を切っているのではないかということでした。
仙台市若林区木下4丁目にあるUFO信号機(信田ゆみ撮影)。
一方、LED仕様の新たな「UFO信号機」に更新された場所もあります。それが名古屋市の中区大須、赤門通と裏門前町通の交差点に設置されている信号機です。
愛知県警交通部交通規制課に話を聞いたところ、ここは老朽化に伴い、信号機の付け替えが行われましたが、その際、一般的な信号機に交換すべきか検討したといいます。しかし、繁華街のなかにある交差点で、建物に囲まれ、なおかつ歩道は狭く、地下には様々な埋設物があるため、四隅に支柱を設置するのが難しかったことから、従来通り1本の支柱からアームを伸ばし、交差点の中央に歩車両方の灯火を収集配置する構造に落ち着いたそうです。
「懸垂型交通信号機」、いわゆる「UFO信号機」は、前出の名古屋電気工業以外にもいくつかのメーカーで製造していたようですが、専用設計のロの字形のタイプは全メーカーで製造が終わっています。大須のように既存の信号機を流用する形での設置はあるかもしれませんが、それでも数は限られるでしょう。
現在、警察庁は信号機のLED化(長寿命化)とともに老朽信号機の更新・撤去を進めているため、ロの字形の「UFO信号機」はそう遠くない将来、姿を消す運命にあるといえそうです。