3月に入ってもなお厳しい寒さが続いている北海道で、なんとも神秘的な状態の植物が撮影され、注目を集めている。

それがこちら。


氷の標本(画像はユメキ@yumeki_osamushiさん提供)

これは北海道在住で、普段は大好きな昆虫のために道内を駆け巡っているというデザイナーのユメキさん(@yumeki_osamushi)が2021年3月3日に投稿した写真。真っ白な雪のじゅうたんの上で、こちらに向けて垂れさがっているのはエノコログサ、通称「猫じゃらし」と呼ばれる雑草だ。

ふさふさとしたホウキのような穂が特徴的な猫じゃらしだが、この写真では氷漬け。自然が作った「標本」になっており、まるでなにかの羽のようにも見える。

なんとも不思議で、美しい光景だ......。

この写真に、ツイッターでは

「きれーい!」
「芸術的」
「骨格標本みたいだ...」
「ジュンサイに見えた」
「なんか深海にいそう」

といった反応が寄せられている。

雨水が凍って......

Jタウンネットは5日、投稿者のユメキさんを取材し、この写真について詳しい話を聞いた。

この写真は、2日、ユメキさんの奥さんが北海道の日高町で撮影したものだそう。

アメダスの記録によると日高町の気温は1日の夜から氷点下が続いていた。2日は一日を通してマイナス1度以下の気温。

ユメキさんのツイートによると、雨も降っていたようで「氷の標本」はその雨水が凍りついたたものと考えられる。

ユメキさんは、この写真が撮影された経緯について

「妻曰く、町全体がこのような現象になったらしく、外壁なども氷ついていたそうです。ドアなども凍ってしまったため、大変苦労したのだとか。
その中で植物も綺麗に凍っていたため写真に撮ったそうです」

とする。ドアも凍ってしまうとは、なかなかに大変そうだが......とはいえ、町の至るところで氷の標本が誕生している光景は、きっと美しく神秘的なものであったことだろう。

また、この写真の光景を見たときの奥さんの感想を尋ねると

「発見時はとても不思議で美しく思ったそうです。
このような現象は日高町ではそこまで貴重ではないらしくたまに発生するそうです。しかし植物もここまで氷漬けにされているのはなかなか珍しいと言っております」

とのことだった。この現象は「雨氷(うひょう)」というもの。日本大百科全書(小学館)では、こう説明されている。

「氷点近く、あるいは氷点下に過冷却した雨滴が、地面や地物に凍り付いたもの。木の枝などは表面が滑らかで透明な氷に包まれる。(略)
比較的地面に近い高さに、かなりの厚さをもつ氷点下の気層があるのが、雨氷ができる条件である」

普通は寒地でしか見られない現象だが、香港でも観測された例があるそうだ。

なんとも珍しい猫じゃらしの氷漬け。運が良ければ、寒い雨の降る日に見られるかもしれない。