ソビエト連邦やロシアが秘密裏に開発した宇宙航空兵器5つ
by Ese-emon
アメリカとソビエト連邦の冷戦状態のなかで、両国は有人宇宙飛行や人工衛星の技術を競う「宇宙開発競争」を繰り広げていました。徹底した情報統制による秘密主義で知られていたソビエト連邦は、西側諸国に知られぬように、さまざまな宇宙航空兵器を開発しており、その存在が明らかになったのはソビエト連邦崩壊後のことでした。そんなソビエト連邦やロシアが開発した宇宙航空兵器について、ロシアのアマチュアUFO研究サイト「XissUFOtoday Space」が一部をまとめています。
https://www.xissufotoday.space/2018/04/declassified-spacecrafts-and-orbital.html
◆1:ポリウス
・スペック
全長:37.00m
最大直径:4.10m
重量:80トン
打ち上げ機:エネルギア
投入軌道:高度280km、軌道傾斜角64°
照準装置:光学、レーダー、低出力レーザー
武装:1MW出力 炭酸ガスレーザー
ポリウスは炭酸ガスレーザーでアメリカ側の戦略防衛構想(SDI)の人工衛星を破壊するために設計された宇宙兵器です。1987年5月にポリウスは実際に打ち上げられましたが、打ち上げ機であるエネルギアから分離したポリウスは180度回転する予定だったのが、本番では360度回転してしまい、結果として南太平洋の待機中で減速して燃え尽きてしまったとのこと。この失敗は、生産スケジュールを急いだために慣性誘導システムのテストが十分に行われていなかったことが原因だったそうです。
また、当時のソビエト連邦の最高指導者だったミハイル・ゴルバチョフが「すでにアメリカとの緊張関係も緩和する方向に向かっているため、配備は望ましくない」と判断し、打ち上げた後の軌道投入を認めなかったという説も唱えられています。
◆2:MiG-105
by Alan Wilson
・スペック
乗員:1名
全長:8.5m
全高:3.5m
翼幅:6.4m
打ち上げ重量:4220kg
推力:14700kN
MiG-105は、再利用可能な宇宙航空機の開発を目指す「スピラーリ計画」で製造された有人宇宙飛行の試験機で、超音速で航行する打ち上げロケットから軌道上に発射される仕組みでした。スピラーリ計画は実際に航行試験が行われるまで進んでいましたが、1980年代にアメリカのスペースシャトル計画に対抗するために「ブラン計画」が立ち上げられ、スピラーリ計画は中止となりました。
◆3:BOR-4
by Jno~commonswiki
・スペック
全長:3.86m
全高:1.16m
翼幅:2.88m
打ち上げ重量:1450kg
スピラーリ計画で使われた無人実験機が、BOR-4を初めとするBORシリーズです。BOR-4はMiG-105の小型版として設計されたもので、推進装置はない上に無人機だったため、そのサイズはかなり小さめ。
製造されたBOR-4は7機で、そのうちの4機が1980年から1984年にかけて発射されたことが確認されています。なお、1回目に発射されたBOR-4がインド洋に着水した様子をオーストラリア空軍が目撃し、ソビエト連邦のスピラーリ計画の一端が西側諸国に知られることとなりました。
◆4:ロシア航空宇宙飛行機(RAKS)
・スペック
全長:7.9m
翼幅:3.6m
打ち上げ重量:2200kg
燃料(液体酸素)積載量:18kg
RAKSはソビエト連邦崩壊後の1993年に、ロシア航空宇宙局によって開発されました。開発の基本コンセプトは「スクラムジェットエンジンを使った極超音速機」で、ロシア航空宇宙局はマッハ6〜14という速度で航行することを目指していました。また、あくまでも実験機であり人を乗せることは想定されていませんでした。
なお、RAKSが最終的にどうなったのかは不明ですが、21世紀に入ってもロシアは極超音速機の開発を続けており、すでに通常弾頭あるいは核弾頭の搭載が可能な極超音速滑空体である「アバンガルド」の配備が進められていると報じられています。アバンガルドは最高速度マッハ27を記録するそうで、プーチン大統領は「隕石、あるいは火の玉のように目標に到達するため、従来のミサイル防衛システムはもはや無力だ」と演説しています。
◆5:クリーペル
・スペック
搭乗人数:打ち上げ時最大6人、着陸時最大7人
内部容積:20立方メートル
打ち上げ重量:1300〜1450kg
最大積載量:700kg
ロシアはそれまでソビエト連邦時代に開発された有人宇宙船「ソユーズ」を使って、宇宙ステーションの「サリュート」や「ミール」に搭乗員を送りこんでいました。そのソユーズに置き換わる次世代有人宇宙船として、ロシアが提唱した再利用可能な宇宙船が「クリーペル」です。クリーペルはずんぐりむっくりとした機体に小さな翼を持ち、「人間の乗員にかかるGができるだけ少なくなるような角度で大気圏に突入すること」を前提にした設計がなされています。
クリーペルはロシア航空宇宙局と欧州宇宙機関(ESA)からの出資によって開発が行われました。発表時に見積もられていた総予算は4億ドル(当時のレートで約460億円)でしたが、実際はその7〜8倍はかかったとみられています。そのため、予算は常に不足している状態となり、クリーペル開発計画は2006年に「無期限延期」が決定されました。