器好きの血が騒ぐ一大イベント、陶器市。全国で毎年さまざまな陶器市が開催されますが、この1年は新型コロナウイルスの影響でそのほとんどが中止になりました。
一部はオンライン陶器市としてネット通販ができるようになっていますが、「やっぱり手に取って選びたい!」「想像していた質感とは違った…」という声も。

そんななか、益子焼きで有名な栃木県の温泉旅館で開催されているリモート陶器市に、旅行ライターの佐藤望美さんが参加。その様子をレポートしてくれました。



温泉ついでに「リモート陶器市」を味わえる!しかも密なし



最近は仕事で器の記事を書くこともあり、興味を持ち始め「陶器市に行ってみたい」と思っていた矢先のコロナ禍。ほとんどの陶器市が中止になり、残念に思っていたところ、このリモート陶器市のことを知って昨年予約を入れ訪れてみました。

開催しているのは、栃木県の日光市にある「星野リゾート 界 鬼怒川」です。栃木県は益子焼が有名。益子町では毎年ゴールデンウィークと秋に陶器市が開催されていて、器好きにとってはいわば聖地とも言える場所です。

この温泉宿では以前から地域の魅力を伝える一環として施設内に益子焼を展示したり、益子焼の特徴や歴史を紹介するイベントを開催していたよう。

コロナ禍で陶器市が中止になり、オンライン陶器市が開かれたことをきっかけにコラボレーションを進め、リモート陶器市が開催されることになったそうです。

2月28日までの期間、温泉宿のロビーがリモート陶器市の会場になっていて、特別ギャラリーとしてさまざまな作家さんの作品が展示されています。


リモート陶器市は宿泊者限定。温泉旅行のついでに自分の好きなタイミングでギャラリーを訪れることができるので、人との接触や密で不安になることもありません。

20名以上の益子焼作家さんの器を実際に手に取ることができ、質感や大きさ、厚みなどを自分で確かめられるのが大きな魅力。
ただしその場での販売はなく、特設ウェブサイトにアクセスして購入し、後日自宅に届けられる仕組みになっています。


オンラインショップは密を避けることができ、商品が宅配で届くのが大きなメリット。リアルの陶器市は実際に器を目で見て触ってその場で購入できるのが魅力。
リモート陶器市は、両方のいいところがうまく組み合わさっていて、ウィズコロナの現状にぴったりです。


作品1点ずつに説明書きや、特設サイトに直接アクセスできるQRコードが添えられていて分かりやすい! 作家さん情報も詳しく掲載されています。

●作家さんとのリモートトークイベントに参加!



リアルの陶器市は、自ら店頭に立つ作家さんと話せる機会があるというのも大きな魅力のひとつです。
私が訪れた日はちょうど、作家さんと宿がリモートでつながるトークイベントを開催。ゲストは、近藤康弘さん。京都で陶芸を学び、益子で築窯・独立された注目作家さんです。


作品が並ぶ特別ギャラリーに大きなモニターが設置され、器作家さんと画面越しに話をすることができました。


トークは、宿のスタッフさんが間に入って進めてくれるので安心。益子焼に魅せられたポイントや、器をどうやって制作していくかなどなかなか聞けない話が盛りだくさんでした。

器づくりに使う道具なども持参してくれていたので、初心者にも分かりやすく、とても勉強になります。「直接話すことでその作家さんがもっと好きになる」と器好きの知人から聞いていたとおり、リアルの陶器市に近い感覚で器と作家さんを感じることができました。

これまで向山文也さん、岩見晋介さん、大塚雅淑さん、村澤享さんなどがリモートトークに登場したようで、今後も2月末まで不定期で続いていくそうです。

●毎晩開催の「益子焼ナイト」で益子焼を学べる



不定期で行われるリモートトークとは別に、こちらでは「益子焼ナイト」というイベントが毎晩開催されていました。


専門知識を持つ益子焼マイスターが、益子焼の歴史や特徴、ほかの地域の焼き物との違いなどを分かりやすく教えてくれるミニイベントです。


益子焼ナイト開始前には、ロビーラウンジに展示されている250点以上の豆皿から好みの皿を3枚セレクト。ここの豆皿、じつは益子焼以外の焼き物も混ざっているんです。どれが益子焼か、益子焼マイスターからの正解発表もあって楽しい!
教えてもらって改めて触ってみると、産地や焼き物の違いがよく分かる仕組みになっています。


豆皿が並ぶギャラリーは圧巻で、眺めるだけでワクワクしてきます。益子焼はもちろん、自分の好みの焼き物、産地を知るいいきっかけになりそう。

●客室も料理も益子焼尽くし!



こちらは温泉旅館なので、もちろん温泉やおいしい食事を楽しむのがメイン。とはいえ滞在中はどこにいても益子焼の魅力に触れられるようになっています。


客室は地域の民藝文化を感じられるご当地部屋。リモート陶器市に参加している作家さんの作品が贅沢に飾られています!


客室で独り占めし、じっくり鑑賞できて幸せです。これらの作品も特設サイトから購入できるんです。


ちなみに今回は露天風呂つき客室を選んだので、雪景色を楽しみながらプライベートな空間で温泉に浸かることもできました。


食事は3密を避けた半個室の会場で。益子焼の器をふんだんに使った特別会席をいただきました。


食事とともに器を愛でるのは、とても贅沢な楽しみ方。歳を重ねたからこそ味わえるものだなぁ、とひしひしと感じます。

●じっくり悩んで購入した器が自宅に届いた!



宿泊者限定でアクセスできる特設ウェブサイトは、チェックイン時にもらえるQRコードでアクセス可能。滞在中ずっとサイトとにらめっこし、どれを購入しようかじっくりと悩みました。


リアル陶器市はその場で決めなければ持ち帰れませんが、リモートなら悩む時間をたくさん取れるのもいいところ。
チェックアウトまでに決める必要もなく、リモート陶器市開催期間中は何度でもアクセスして購入できるそうです。


あれこれ考えた結果、リモートトークで実際にお話しした近藤康弘さんのオーバル皿と、ギャラリーで一目惚れした笠原良子さんの高台皿を購入。実際に手に取って確認でき、旅先の荷物を増やさず自宅で受け取れるこのシステム、思った以上に快適です。

益子焼を堪能し尽くした温泉+リモート陶器市の旅。リアル陶器市が開催できるような状況に早く落ち着いてくれることを願いつつ、今だからこその新しい楽しみ方を見つけられたいい機会になりました。

このリモート陶器市は界 鬼怒川がメインですが、同じ星野リゾートの界 日光と界 川治もサブ会場として2月末まで行われているようです。なかなか旅行が難しい時期ではあるけれど、状況が落ち着いたらぜひチェックしてみてください。

●教えてくれた人
【佐藤望美さん】



女性誌、ママファッション誌、育児誌などで活動するフリーエディター・ライター。国内外の旅行取材も多く、子連れ旅情報をまとめたサイト「FOOTABY!
」を運営中