99番目の元素「アインスタイニウム」が人工生成され、構造的および分光学的特性が明らかになりました。

Structural and spectroscopic characterization of an einsteinium complex | Nature

https://www.nature.com/articles/s41586-020-03179-3

Chemists create and capture einsteinium, the elusive 99th element | Live Science

https://www.livescience.com/einsteinium-experiments-uncover-chemical-properties.html

アインスタイニウムは、史上初の水素爆弾実験アイビー作戦によって生まれた放射性降下物の中から偶然同定された人工放射性元素で、その名前は「20世紀最高の物理学者」と表されるアルベルト・アインシュタインにちなんでいます。アインスタイニウムは原子炉の起動用燃料として使われる原子番号98のカリホルニウムの副産物として生成されることもありますが、分離が困難である上、半減期が短いことから、研究が困難とされてきました。

カリフォルニア大学ローレンス・バークレー国立研究所の研究チームは新たに専用の原子炉で原子番号96のキュリウムに中性子と陽子を衝突させ、アインスタイニウムの同位体である254Esを200ナノグラム弱ほど生成。さらに人体に有害なガンマ線の放出に対処するため、3Dプリンターで特別製の保護器を作成して、アインスタイニウムを保管しました。

その半減期の短さからアインスタイニウムが1カ月ごとに質量の7.2%を失っていくという悪条件や新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の大流行などの困難の中、研究チームは生成されたアインスタイニウムを構造的および分光学的に分析。アインスタイニウムの結合長や発光特性がアクチニド(原子番号89〜103の元素のこと)でみられる規則性に反することを実証しました。



研究チームのコーレイ・カーター氏は今回の実験について、「少量の元素でも化学分析を行う基礎を築くものです」とコメント。サイエンス系ニュースサイトのLive Scienceは「今回の実験によってアインスタイニウムの生成が容易になることで、アインスタイニウムから未発見元素を生成できる道が開かれる可能性があります」と記しています。