旬の素材を使った毎日の料理や、時季ならではのおいしい食べ方をつぶやくツイッターアカウント、「きょうの140字ごはん」(@140words_recipe
)を運営する文筆家の寿木(すずき)けいさん。

使いたいと思う食材や道具、そしてだれかへの贈り物は、四季に導かれるものだそう。
寿木さんから季節のあいさつに代えて、読者の皆さんへ「今日はこれを手に取ってみませんか?」とお誘いします。

寒さに縮こまりがちな背筋を伸ばしてくれるのは、冬に楽しめるファッション。
お出かけが楽しくなる、冬ならではのファッショングッズを教えてもらいました。

寒い季節は、鮮やかなカラーで遊ぶ。冬ならではのファッショングッズ



先日、横断歩道の反対側から、同年代のおしゃれな女性がコートのポケットに両手を突っ込んで歩いてきた。両手を隠してしまうと、肩は縮こまって、首も顔も下を向き、猫背になる。映画の役かなにかならかっこいいのかもしれないけれど、5歳は老けて見えるものだなあと身につまされた。マスクで表情が見えないぶん、なんだか物騒な感じさえした。

●レザーとカシミアの手袋




3年前に買った「Selmoneta gloves」のレザーの手袋。鮮やかなブルー。裏地はカシミア。

手や指が冷たいと気持ちまで沈むような気がして、冬は手袋を欠かさないでいる。着けたままスマホが操作できる手袋……なんていうのも買ってみたことがあるけれど、野暮ったくて長続きしなかった。手指を覆ってしまうのに、かえって自由になってどこまでも歩ける気がするから、手袋が好きだ。

女性と手袋の関係を描いた、向田邦子の『手袋を探す』というエッセイがある。

ある冬、20代だった向田邦子は、手袋を買わないままひと冬を過ごす。気に入ったものに出合えていないから、いっそ買わないでいようという彼女の意固地さを見かねて、職場の男性が話しかける──そのひと言に、うんと大人になった向田邦子は自分の来し方を振り返る。

私がファッション誌の編集部で働いていた頃、冬のファッション撮影の打ち合わせの際にこのエッセイが話題にのぼり、その場にいた女性スタッフの全員が大事に読んだ経験があることがわかった。口々に、「あれ、すごくよくわかるよねえ」と言って、それぞれの胸にある手袋を思い浮かべた。

●無駄を削ぎ落としたゴールドのクラッチ




ほぼ日とスタイリスト伊藤まさこさんのブランド「weeksdays」で見つけたクラッチ。

荷物が少ない日は、クラッチだけで出かける。ファスナーもポケットもない、ごくシンプルな封筒のような形。これが使いやすい。


ノート、文庫本。手指消毒の医療用コットンは手が洗えないときに便利。ほか、化粧直し用のコスメとスマホなどをさっと入れて。レザーがやわらかく、長時間持っていても疲れない。

一見派手かとためらうけれど、夏のTシャツ&デニムや白いワンピースなどカジュアルな装いにも合うし、ダークな色と厚い素材が増える冬のファッションに合わせると、視線を引きつけるポイントになってバランスも取りやすい。

●15年選手のコンバース ハイカット




コットンやレザーなどいろんな素材のものを揃えている。

長年愛用しているコンバースのハイカットのなかでも、冬に出番が増えるのが赤。デニムやレザーのパンツに合わせて履いている。

年間とおして、ほとんどモノトーンの服で過ごしている。ここに挙げた小物以外に、パールの白や、ゴールドとシルバーをミックスしてジュエリーをじゃらっと重ねるなどして、コートのなかを飽きさせないようにする。そうこうしているうちに春が来て、どんな小物やジュエリーと合わせようか、また楽しみになるのだ。

【寿木けい(すずきけい)】



富山県出身。文筆家、家庭料理人。著書に『いつものごはんは、きほんの10品あればいい
』(小学館刊)、『閨と厨
』(CCCメディアハウス刊)など。最新刊は、新装刊『わたしのごちそう365 レシピとよぶほどのものでもない
』(河出書房新社刊)。趣味は読書。好物はカキとマティーニ。
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