ママ友づき合いで疲れないコツ。ポイントは嫉妬と自己顕示欲
なにかと悩みの多いママ友づき合い。子育てするうえで必要な関係ではありますが、本音を話しづらかったり、つい無理をしてつき合ってしまったり…。
「そんなことで悩むなんてばかばかしい」と話すのは、『ホンマでっか!? TV』(フジテレビ系)のコメンテーターとしてもおなじみの生物学者、池田清彦先生。
近著『騙されない老後
』が話題で、その中でも「人づき合いなんて適当なぐらいがちょうどいい」と語る池田先生に、ママ友づき合いでストレスをためないコツをうかがいました。
ママ友づき合いでストレスをためないコツ
「ママ友同士みたいな取っ組み合いの喧嘩とかをしない関係性は、陰湿なイジメなどにもつながりやすい。基本的に僕は、無理をしてまで嫌いな人とつき合う必要はないと思っているんだけど、まったくつき合わないわけにはいかない、というのがママ友の難しさだとはよく聞くね。でも、ママ友っていったって、単に子どもを介した知り合いでしょう。ただの知り合いなら、ほどほどにつき合えばトラブルなんて起こらないんじゃないの?」と、池田先生。
とはいえ、「ほどほど」につき合うのが、意外に難しいという声もあります。最初はあまり深入りしないようにしていても、いつの間にか自分が考えていた以上に距離が近くなっていくというのもママ友との関係だったりもしますが、池田先生は「これはママ友に限ったことではないけれど、人間関係のトラブルの原因はたいがい嫉妬だよね」とばっさり。
「だから、無駄に嫌われたくないなら、嫉妬されるようなことをしなければいい。人間には自己顕示欲というものがあるから、あれこれ自慢したくなっちゃう気持ちもわからなくはないんだけど、上手く自慢する方法なんてないと思った方がいい。高い服とかバッグとか靴とかを父母会なんかでこれみよがしに見せつけたら一発で嫌われる(笑)」
ほかにもたとえば、コミュニティのなかで人気がある人と、「自分はこの人と仲がいいんだ」と他人に見せつけるようなこともやめたほうがいい、と池田先生。
「そもそもママ友相手になにかをアピールしたところで、得られるのは一時的な満足感。そこはぐっと我慢して、さりげなくしておいた方が絶対に得だよ。精神的な満足感は、自己顕示欲なんかじゃなく、趣味などの達成感で満たすようにする方がずっといいと思う」
逆に周りのママ友の発言や態度についイライラしてしまう、という場合はどうすればいいでしょうか?
「その発言や態度が許せないのは、相手の価値観が自分とは違うからなんだけど、そもそもママ友というのは気が合うから集まったわけではなく、たまたま子どもが同じ幼稚園とか小学校とかに通っているという共通点しかないのだから、価値観や意見が違うのは当たり前だよね。そんな相手と意見が違うことに必要以上にフォーカスするから疲れるのであって、それについては、あまりつきつめずに、そのままペンディングにするようにすれば、なんてことはない」
つまり大事なのは、自分の頭の中に“多様性”をもつこと。
「自分の考えがAだからといって、Bという考えをなにがなんでも拒絶しようとしたりせずに、まあそれもありだよねという適当さがあっていいんだよ。別に結論を出す必要なんてないんだから」
なかなかママ友の輪に入れないことを悩む人もいます。そこにうまく飛び込む方法とは?
「嫌なら入らなきゃいいと思うんだけど(笑)、本当は入りたいのに入れないというのなら、まずは自分の劣等感をふっきることが大事だろうね。うまく人の輪に入れない人って何かしらの劣等感を抱えているケースが多いから。いちばん手っ取り早いのは、知識を増やすこと。そのためにはいろんな本を読んだり、きちんと新聞を読んだりしなきゃダメだね。もちろん自分があれこれ知ってることをひからかすようなことはしないにしても、そういう話が出たときにちゃんとあいづちをうったりできるでしょ。そういうちょっとしたことで自信っていうのはついていくんだよ」
ママ友との関係がすでにこじれてしまっている場合はどうでしょうか。
「さっき言ったような頭の中の多様性をみんながもっていれば問題はないのだけど、日本社会というのは、同調圧力の強い国で、どうしても多数派が力を持ちがちだよね。深入りしたくないからとそこに与しなかったりすると、疎んじられてしまうことは確かにある。それがエスカレートするのがイジメだよ」
ただそのイジメも長くは続かない、と池田先生。
「イジメられる側になるのは相当しんどいと思うけど、子どもが幼稚園なり小学校なり卒業すれば、ほとんどのママ友関係も解消されるのが普通でしょ? 仮に幼稚園から大学まで同じ学校だとしても、子どもが大学生になっているのにママ友としてしょっちゅう顔を合わせるってことはあり得ないよね。直接顔を合わせなくなればイジメはすぐになくなるよ。そこにいない人をイジメたっておもしろくもなんともないのだから。その渦中にいるとしんどいかもしれないけど、どうせ期間限定の関係なんだって割り切っちゃえばいいと思うよ。今後はPTAでもなんでもリモートでやるのが普通になるだろうから、そういう意味ではママ友間のイジメも減っていくんじゃないかな」
ママ友という「期間限定の関係」が、本当の友だちに発展することも、もちろんあり得ます。
「子ども同士の関係が切れたあともつき合いたいと思うのなら、その相手はママ友じゃなくて、『友だち』。友だちなら、子どもが卒業しようとどうなろうと、どっちがが死ぬまでつき合えるよね。人づき合いは広くて浅いほうが気が楽だし、人生の片手間にやるくらいでちょうどいいんだけど、いざというときに親身になってくれる友だちが数人はいる、というのは理想的。特に歳をとると、病気にもなりやすくなったりして何かと弱気になったりもするから、そういう友だちがいるときっと心強いし、それは本当の意味での『豊かな老後』にもつながるよね」
今はママ友だとしても、そのなかからもしかすると生涯の友が見つかるかもしれない…そうとらえれば、ママ友つき合いももっとポジティブなものになりそうです。
池田先生の新刊『騙されない老後
』(扶桑社刊)は、賢くしたたかに老後を生き抜く知恵と教養がつまった一冊。こちらもぜひチェックしてみてください。
<取材・文/ESSEonline編集部>
●教えてくれた人
1947年、東京都生まれ。生物学者。現在、早稲田大学名誉教授、山梨大学名誉教授。高尾599ミュージアムの名誉館長。生物学分野のほか、科学哲学、環境問題、生き方論など、幅広い分野に関する著書がある。フジテレビ系『ホンマでっか!? TV』などテレビ、新聞、雑誌などでも活躍中。
「そんなことで悩むなんてばかばかしい」と話すのは、『ホンマでっか!? TV』(フジテレビ系)のコメンテーターとしてもおなじみの生物学者、池田清彦先生。
近著『騙されない老後
』が話題で、その中でも「人づき合いなんて適当なぐらいがちょうどいい」と語る池田先生に、ママ友づき合いでストレスをためないコツをうかがいました。
ママ友づき合いでストレスをためないコツ
池田清彦先生に聞く。疲れないママ友つき合いのコツ
「ママ友同士みたいな取っ組み合いの喧嘩とかをしない関係性は、陰湿なイジメなどにもつながりやすい。基本的に僕は、無理をしてまで嫌いな人とつき合う必要はないと思っているんだけど、まったくつき合わないわけにはいかない、というのがママ友の難しさだとはよく聞くね。でも、ママ友っていったって、単に子どもを介した知り合いでしょう。ただの知り合いなら、ほどほどにつき合えばトラブルなんて起こらないんじゃないの?」と、池田先生。
とはいえ、「ほどほど」につき合うのが、意外に難しいという声もあります。最初はあまり深入りしないようにしていても、いつの間にか自分が考えていた以上に距離が近くなっていくというのもママ友との関係だったりもしますが、池田先生は「これはママ友に限ったことではないけれど、人間関係のトラブルの原因はたいがい嫉妬だよね」とばっさり。
●人間関係のトラブルの原因は嫉妬
「だから、無駄に嫌われたくないなら、嫉妬されるようなことをしなければいい。人間には自己顕示欲というものがあるから、あれこれ自慢したくなっちゃう気持ちもわからなくはないんだけど、上手く自慢する方法なんてないと思った方がいい。高い服とかバッグとか靴とかを父母会なんかでこれみよがしに見せつけたら一発で嫌われる(笑)」
ほかにもたとえば、コミュニティのなかで人気がある人と、「自分はこの人と仲がいいんだ」と他人に見せつけるようなこともやめたほうがいい、と池田先生。
「そもそもママ友相手になにかをアピールしたところで、得られるのは一時的な満足感。そこはぐっと我慢して、さりげなくしておいた方が絶対に得だよ。精神的な満足感は、自己顕示欲なんかじゃなく、趣味などの達成感で満たすようにする方がずっといいと思う」
●大事なのは、自分の頭の中に“多様性”をもつこと
逆に周りのママ友の発言や態度についイライラしてしまう、という場合はどうすればいいでしょうか?
「その発言や態度が許せないのは、相手の価値観が自分とは違うからなんだけど、そもそもママ友というのは気が合うから集まったわけではなく、たまたま子どもが同じ幼稚園とか小学校とかに通っているという共通点しかないのだから、価値観や意見が違うのは当たり前だよね。そんな相手と意見が違うことに必要以上にフォーカスするから疲れるのであって、それについては、あまりつきつめずに、そのままペンディングにするようにすれば、なんてことはない」
つまり大事なのは、自分の頭の中に“多様性”をもつこと。
「自分の考えがAだからといって、Bという考えをなにがなんでも拒絶しようとしたりせずに、まあそれもありだよねという適当さがあっていいんだよ。別に結論を出す必要なんてないんだから」
●自分の劣等感をふっきるために
なかなかママ友の輪に入れないことを悩む人もいます。そこにうまく飛び込む方法とは?
「嫌なら入らなきゃいいと思うんだけど(笑)、本当は入りたいのに入れないというのなら、まずは自分の劣等感をふっきることが大事だろうね。うまく人の輪に入れない人って何かしらの劣等感を抱えているケースが多いから。いちばん手っ取り早いのは、知識を増やすこと。そのためにはいろんな本を読んだり、きちんと新聞を読んだりしなきゃダメだね。もちろん自分があれこれ知ってることをひからかすようなことはしないにしても、そういう話が出たときにちゃんとあいづちをうったりできるでしょ。そういうちょっとしたことで自信っていうのはついていくんだよ」
ママ友との関係がすでにこじれてしまっている場合はどうでしょうか。
「さっき言ったような頭の中の多様性をみんながもっていれば問題はないのだけど、日本社会というのは、同調圧力の強い国で、どうしても多数派が力を持ちがちだよね。深入りしたくないからとそこに与しなかったりすると、疎んじられてしまうことは確かにある。それがエスカレートするのがイジメだよ」
ただそのイジメも長くは続かない、と池田先生。
「イジメられる側になるのは相当しんどいと思うけど、子どもが幼稚園なり小学校なり卒業すれば、ほとんどのママ友関係も解消されるのが普通でしょ? 仮に幼稚園から大学まで同じ学校だとしても、子どもが大学生になっているのにママ友としてしょっちゅう顔を合わせるってことはあり得ないよね。直接顔を合わせなくなればイジメはすぐになくなるよ。そこにいない人をイジメたっておもしろくもなんともないのだから。その渦中にいるとしんどいかもしれないけど、どうせ期間限定の関係なんだって割り切っちゃえばいいと思うよ。今後はPTAでもなんでもリモートでやるのが普通になるだろうから、そういう意味ではママ友間のイジメも減っていくんじゃないかな」
●期間限定の関係が「豊かな老後」につながるかもしれない
ママ友という「期間限定の関係」が、本当の友だちに発展することも、もちろんあり得ます。
「子ども同士の関係が切れたあともつき合いたいと思うのなら、その相手はママ友じゃなくて、『友だち』。友だちなら、子どもが卒業しようとどうなろうと、どっちがが死ぬまでつき合えるよね。人づき合いは広くて浅いほうが気が楽だし、人生の片手間にやるくらいでちょうどいいんだけど、いざというときに親身になってくれる友だちが数人はいる、というのは理想的。特に歳をとると、病気にもなりやすくなったりして何かと弱気になったりもするから、そういう友だちがいるときっと心強いし、それは本当の意味での『豊かな老後』にもつながるよね」
今はママ友だとしても、そのなかからもしかすると生涯の友が見つかるかもしれない…そうとらえれば、ママ友つき合いももっとポジティブなものになりそうです。
池田先生の新刊『騙されない老後
』(扶桑社刊)は、賢くしたたかに老後を生き抜く知恵と教養がつまった一冊。こちらもぜひチェックしてみてください。
<取材・文/ESSEonline編集部>
●教えてくれた人
【池田清彦先生】
1947年、東京都生まれ。生物学者。現在、早稲田大学名誉教授、山梨大学名誉教授。高尾599ミュージアムの名誉館長。生物学分野のほか、科学哲学、環境問題、生き方論など、幅広い分野に関する著書がある。フジテレビ系『ホンマでっか!? TV』などテレビ、新聞、雑誌などでも活躍中。