ジャック・マー氏が姿を見せない理由について専門家が「大人しくしているのではないか」と主張
by UN Women
中国の大手IT企業・アリババグループの創業者であるジャック・マー氏は、2020年11月から記事作成時点まで公の場に姿を現しておらず、「行方不明になった」という説も報道されています。複数の海外メディアがマー氏の動向について報じる中、一部の専門家は「マー氏は失踪したのではなく、大人しくしているのではないか」という説を述べています。
Is Jack Ma missing? The rumors alone are a chilling message from Beijing | Fortune
Alibaba founder Jack Ma is lying low for the time being, but he's not missing
https://www.cnbc.com/2021/01/05/alibaba-founder-jack-ma-is-laying-low-for-the-time-being-not-missing.html
マー氏はアリババグループを創業して世界有数のIT企業に成長させたやり手の実業家であり、中国当局に対しても率直な物言いをすることで知られています。2020年10月24日に上海で行われた会合でマー氏は中国当局による金融規制を公然と批判しましたが、この発言によって中国当局との対立が深刻化したとみられており、11月にはアリババグループ傘下の金融関連企業であるアント・グループの新規株式公開(IPO)が、中国当局の圧力によって中止されました。
この一件があった後、マー氏は自身が出演していたTV番組への収録をキャンセルするなど、2カ月以上にわたって公の場から姿を消しています。2021年1月に入ると海外メディアでもマー氏の不可解な行動が報じられ、「マー氏が姿を消したことに中国当局が関係しているのではないか」とまでウワサされています。
アリババ創業者のジャック・マー氏が2カ月以上も公の場から姿を消す、中国当局が関与しているとの推測も - GIGAZINE
by Paul Kagame
一連の動きはマー氏が中国当局に拘束されたとの推測も生んでいますが、外国為替証拠金取引(FX)サービスを展開するOANDAでアジア太平洋地域のアナリストを務めるジェフリー・ハレー氏は、「マー氏が拘留されたという証拠はなく、当局がマー氏を拘留する理由もありません」と指摘。中国当局との交渉がまとまるまでの間、マー氏が自発的に「目立たないこと」を選んでいるとの見解を述べています。CNBCのアナリストであるデイビット・フェイバー氏も、マー氏は行方不明になったのではなく「大人しくしている」と見解を述べました。
一方で、資産運用会社のAdamas Asset Managementで最高投資責任者を務めるブロック・シルバース氏は「ここ数十年、注目を集めるのが好きなマー氏が長期間にわたり姿を消したことはありませんでした」と述べ、マー氏の行動は明らかに異常であると主張。中国当局がマー氏の行動に関わっている場合、アリババグループやアント・グループ、さらに中国全体の技術産業に悪影響が及ぶ可能性があると述べました。
マー氏の不可解な行動に関連し、ビジネス誌のFortuneは「中国当局が『国家の利益よりも自身の利益を優先した』として経営者を拘留することは珍しくありません」と指摘しています。2020年には「物言う企業家」「中国のトランプ」として知られている不動産王の任志強氏が、新型コロナウイルス対応をめぐって習近平国家主席を批判した後に公の場から姿を消し、数カ月後に汚職などの罪で懲役18年の刑を宣告されました。
また、ウォール・ストリート・ジャーナルはマー氏の動向と関連して、「中国当局がアント・グループの所有する消費者データの共有を求めている」と報じています。
Chinese Regulators Try to Get Jack Ma’s Ant Group to Share Consumer Data - WSJ
https://www.wsj.com/articles/chinese-regulators-try-to-get-jack-mas-ant-group-to-share-consumer-data-11609878816
Chinese regulators pressing Ma for Ant Group's consumer data - WSJ (NYSE:BABA) | Seeking Alpha
https://seekingalpha.com/news/3649072-chinese-regulators-pressing-ma-for-ant-groups-consumer-data-wsj
アント・グループはオンラインの金融決済サービス「アリペイ」を運営していることから、10億人以上の消費者に関連する消費習慣や借り入れ行動、請求書、ローンの支払い履歴といった金融データを保有しています。中国当局はアント・グループへの取り締まりの一環として、「消費者データを全国的な信用報告システムに提供する」といったオプションを検討しているとのことです。