僧侶や参詣者が泊まるため、お寺に設けられた宿泊施設が宿坊。先ごろ、自宅にいながらにして宿坊体験ができる「オンライン宿坊」サービスがはじまったので、体験してみました。

○お寺に泊まれる「宿坊」を知っていますか?

筆者は仏教に関心があり、四国八十八ケ所を取材したこともあります。四国八十八ケ所は、弘法大師・空海が人々の災難を除くために開いたとされる霊場で、全88の寺院を巡る「お遍路さん」は1200年以上の時を経て今に受け継がれています。

お寺の中には、お遍路さんなどの参詣者向けの「宿坊」という宿泊施設を備えたところがあり、簡素なものから料理(主に精進料理)や温泉を名物とするところがあり、全国から人が訪れます。

また、それ以外にも宿坊は全国にあります。本来は仏教修行を目的とするための場所なので、お勤め(仏様の前での勤行)は欠かせません。仏壇離れ、仏教離れが進む今だからこそ、こうした体験には価値があります。

宿坊体験もオンライン化


○お寺参りもままならない今こそオンラインで

コロナ禍により、お寺参りやお遍路さん、宿坊に泊まることもままなりません。そんな中、「家にいながら宿坊に泊まり、お寺の修行体験を通じて美しい生活習慣を身に付ける」という、オンライン宿坊「お寺ステイ CLOUD HOTEL」が開業しました。

パソコンやタブレット、スマホがあれば自宅でお寺ステイが可能で、料金プランは、「1泊トライアル」(税込550円)、「修行回数券(35泊)」(税込1万450円)など。35泊修行回数券には、「オリジナル修行セット付き」(税込1万3,750円)※プランもあります。※送料含む

コアプログラムは、22時就寝、5時30分起床。夕方以降にチェックインをして、夜は「法話や座禅、写経などのライブラリー映像を見ながら、"静"の時間で自分と向き合う時間」を過ごします。朝は「日の出とともに起き、座禅で心を整え、作務を通じて身体を動かし、朝粥をいただき、今日1日どう生きるかを確認する"動"の修行」を、お坊さんとライブでつないで行います。

どのコンテンツも本格的ですがハードなものはありません。自分の環境やスケジュールに合わせて無理なく参加できます。ただし、朝5時30分起床だけは頑張りましょう。普段は朝寝坊気味の人でも修行後の時間を有意義に使うことができます。もしかして、早起きにより身に付く新習慣も修行により得られる重要なことなのかもしれませんね。

○さっそく1泊、オンライン宿坊を体験した

さて、ここからは筆者が体験した内容です。「35宿泊修行回数券(オリジナル修行セット付き)」の場合、申し込みをすると、以下のものが送られてきます。

写経や写仏に使える筆ペンも入っていました


風呂敷の中には愛らしいパッケージのお米


京都の米料亭「八代目儀兵衛」とコラボした朝粥専用のお米2合がおいしそうです。それから、写経と写仏のキット、朝修行した印として1玉ずつ糸に通して作る念珠キットが入っていました。

宿坊宿泊の当日は、夕食後にオンラインでチェックインを済ませ、夜のライブラリーコンテンツをチェックします。筆者は、さまざまある中から「写経」を選択しました。

朝からありがたいお話を聞けて功徳は十分


お坊さんの説明を聞いてから、心を込めて写経しました。就寝は22時。朝は5時30分に起床です。

レンジで簡単におかゆを作ってみました


Zoomでお寺とつなぎ、お坊さんから「一言ご挨拶」をいただいてから座禅瞑想や作務(掃除)とはじまり、今日の命に感謝して朝粥の時間となります。35日修行の人は、振り返り面談(リクエスト制)やお坊さんとの面談なども行われます。

○仕事のストレスを解消する「心の安寧」

家にいながらにして、こんなに本格的な宿坊体験ができるなんて驚きました。仕事のストレスや不安を解消するため、瞑想やヨガ、座禅など内面への関心を寄せ、心の安寧を求め仏教の学びを深める人も少なくないでしょう。

長い年月、お寺に歴史的に継承されてきた修行を基に、オンラインで心身を調える宿坊体験も、このような社会のニーズに応えてくれそうです。

木村悦子 きむらえつこ 出版社勤務後、編プロ「ミトシロ書房」創業。紙・Webの企画・編集・執筆を行う。著書に『入りにくいけど素敵な店』『似ている動物「見分け方」事典』など。関心領域は、食文化・動物学・占いなど。 この著者の記事一覧はこちら