大相撲の行司のかけ声「はっけよい のこった」にはどういう意味があるのか?
行司のかけ声、どんな意味があるの?
大相撲の立ち合いの瞬間や、取組中に力士の動きが止まった時に、行司は
「はっけよい(またははっきょい) のこった!」
というかけ声をかけます。
大相撲では当たり前のように見られる光景ですが、そもそも「はっけよい!のこった!」にはどういう意味があるのでしょうか?
「大相撲の行司はいわば『レフェリー』なのだから、『はっけよい のこった』は立合いの合図の掛け声でしょ?」
と思っている方が多いかもしれませんね。
改まって考える機会はほとんどないかもしれない「はっけよい」と「のこった」。
本来の意味やその由来は、どんなことだったのでしょうか?
実は立合いの合図ではない「はっけよい」
意外かもしれませんが、「はっけよい」というのは立合いの合図の掛け声とは全く異なります。
同じ「相撲」でもアマチュア相撲の場合は、競技者同士が両手をついた状態から、審判の合図によって競技開始となります。
しかし大相撲の場合は競技開始の合図はありません。
力士同士が呼吸を合わせ、両手を土俵についてから立つことで立合いが成立するのがルールで、行司は力士の集中力を高めるために「待ったなし」「見合うて」などと声をかけることはあっても、合図は出していません。
行司が「はっけよい!」と言うのは立合いが成立した直後なので、一見それが立合いの合図のように見えているのです。
「はっけよい」の本当の意味
では「はっけよい」の本来の意味は、何なのでしょうか?これには、いくつかの説があります。
1つ目は、「気を盛んに出す」という意味を持ち「気分を高めて全力で勝負しよう」と勝負を促す「発気揚揚(はっきようよう)」という言葉が変化したというもの。
だから立合いが成立した直後と力士が土俵上で組み合ったまま動かなくなったときに、行司はこの言葉を発し「まだ勝負がついていないぞ!」伝えているというのです。
『語源由来辞典』には、「はっ」は「早(ハヤ)」、「けよい(またはきょい)」は「キホフ(競ふ)」の命令形「キホヘ」で、「早く競いなさい」と言う意味の「ハヤキホヘ」が転じて「はっけよい・はっきょい」になったという説が紹介されています。
画像出典:いらすとや
また別の説としては、「当たるも八卦(はっけ) 当たらぬも八卦」の「八卦(はっけ)」がそのまま「八卦良い」という掛け声になったというものもあります。
「八卦」とは古代中国の占いの一種「易(えき)」の基本的な図像のことで、「八卦良い」で「良い八卦になった」という意味となります。
ゲン担ぎを大切にする相撲の世界なら考えられないこともないですが、実際に「はっけよい!」という掛け声がかけられるのは力士同士の力が互角にぶつかり合って動かなくなったときなので、少しずれているかもしれませんね。
ちなみに「残った」とはどういう意味?
「はっけよい」と同じくらい行司が土俵上で力士にかけることが多い掛け声が「のこった」です。
これも、何が「のこった」のか気になりませんか?
画像出典:Pixabay
これは「両力士とも土俵にまだ『残って』いる」、つまり「まだ勝負はついていないぞ!」という意味です。
たとえば対戦中の力士が両方とも動き回っているときや、一方の力士が投げなどの技を仕掛けたものの勝負が決まらなかったときなどに、行司は「のこった!」と声をかけます。
行司の掛け声にも注目すると、大相撲がもっと面白くなるかもしれませんね。
【参考】
・「ハッケヨイ ノコッタ」の意味 知っていますか?
・西日本実業団相撲連盟公式HP「お相撲のQ&A」
・レファレンス共同データベース
・世界の民謡・童謡「はっけよい 残った! 意味・由来は?」
・相撲はいつ立ち合うの?制限時間のタイミングを見極める3つの方法
・語源由来辞典「はっけよい」