日産 新型「Z」価格は400万円台前半で400馬力超!? GT-Rとは違う新しいZとは
開発責任者が「ほぼこの姿で量産化する」と明言!
効率論でいうとスポーツカーは世の中になくてもいい「無駄な物」です。それが故に、業績や時代背景により真っ先にリストラ対象になることがあります。
これまでに日本ではさまざまなスポーツカーが生まれ、消えていきました。そんななか、1969年に初代モデルが登場した日産「フェアレディZ」は途中で空白期間があったとはいえ、50年以上に渡り6世代継続してきたことは、日本人にとって誇りといって良いと思います。
【画像】ほぼこのまま量産化!? 新型フェアレディZがカッコ良すぎる!(47枚)
日産自身も「Zは日産にとって重要なモデルです」と語りますが、そんな想いとは裏腹に、扱いは決していいとはいえませんでした。
現行モデル(6代目)は2008年に登場。「Zは毎年進化する」と宣言した先代(5代目:Z33)とは裏腹に、ここ数年はほぼ放置されていたフェアレディZの境遇に、「本当に日産はZを大事にしているのか?」と疑問を持っていたのも事実です。
しかし、日産が2020年5月に発表した事業構造計画発表「NISSAN NEXT」でその疑問は解決。
内田誠社長兼CEOは、「失敗を認め、正しい軌道に修正し、構造改革を一切の妥協なく断行する」と語り、工場の閉鎖、生産能力の最適化、アライアンスのさらなる強化に加えて「積極的な新車投入」を公言しました。
具体的には、今後18か月の間に12の新型車が投入されると発表されましたが、そのなかに次期フェアレディZも含まれていたのです。
そして今回、「フェアレディZ プロトタイプ」としてお披露目がおこなわれました。まずは素直にフェアレディZの「継続」と「未来」に感謝したいと思います。
2020年9月16日に世界初公開されたこのフェアレディZ プロトタイプは、一体どのようなモデルなのでしょうか。
内田社長兼CEOはフェアレディZ プロトタイプの公開に際し、「先日発表した『アリア』は、最先端の電動化と運転支援技術を搭載し、新しいドライビングを提供。Zは革新の伝統を受け継ぎ、ドライバーが主役となるピュアスポーツカーです」と語っています。
つまり、アリアは「生きるための価値」、Zは「生きるための歓び」を体現と、日産の両端を示すモデルなのです。
ちなみに日産の先行モデルには2種類が存在します。「コンセプト」と呼ばれるモデルは「次期モデルの方向性を示唆する提案」、そして「プロトタイプ」は量産へのプロローグを意味するモデルです。
「GT-R(R35)」を例にすると、2001年の登場モーターショー発表された「GT-Rコンセプト」、2005年の東京モーターショーで公開された「GT-Rプロト」がわかりやすいと思います。
チーフプロダクトスペシャリストの田村宏志氏は「ほぼこの姿で量産化します。自信がなければ、このタイミングでお披露目しません!」と語りました。
3リッターツインターボ搭載で、価格は400万円前半から?
今回、オンラインでの世界初公開の後、メディア向けに先行内覧会がおこなわれました。フェアレディZ プロトタイプの細部までチェックすることができたので、報告したいと思います。
まずエクステリアです。Aピラーやルーフラインから推測すると、現行モデルの「Z34」の基本骨格を踏襲しているのがわかりますが、プロポーションは大きく進化しています。
フェアレディZ プロトタイプのボディサイズは全長4382mm×全幅1850mm×全高1310mmと発表されましたが、Z34の全長4260mm×全幅1845mm×全高1315mmと比べると全長が伸びています。
サイドから見ると、フロントオーバーハングが伸び、リアオーバーハングが短くなって、ロングノーズ/ショートデッキを強調。そのデザインは「新しいのに懐かしい」といった印象を受けました。
驚いたのはVモーショングリルやブーメランシグネチャーといった、日産のデザイン言語が採用されていないことです。恐らく、日産ファミリーであることよりも、「Zらしさ」を重視したのでしょう。
日本刀をイメージしたシュッとした引き締まったプロポーションに、歴代モデルのオマージュが随所にバランスよく盛り込まれています。
たとえば、フロントフードやティアドロップ形状のヘッドランプ、リアハッチ周りの処理は初代(S30)、リアのランプ周りは4代目(Z32)などなど、随所に見て取れます。
ただ、フォード「マスタング」やシボレー「カマロ」のような「懐古主義」とはちょっと違い、歴代モデルをリスペクトしながらも前を向いたデザインだと感じました。
ルーフやフェンダーからリアに繋がる造形は新型フェアレディZの特徴のひとつで、スポーツカーらしい凝縮感だけでなく、ジャガーやアストンマーティンを彷彿とさせる伸びやかでエレガントな印象も受けました。
インテリアは未来のスポーツカーを感じさせる先進性を全面的にアピールしたデザインで、横基調のインパネ周りは現行モデルよりも伸びやかな印象です。
メーターは12.3インチのフルデジタルディスプレイで、センターにタコメーターをレイアウト。針が真上(=レッドゾーン)を指すと同時にシフトアップインインジケーターが左右から点滅する演出は、レーシングカーからフィードバックされたそうです。
インパネ上部には歴代モデルで多く採用されてきた3連メーターも継承して装着されています。
さらにステアリング右側には、アダプティブクルーズコントロール用の操作スイッチも確認できました。
ただ、電気自動車の「リーフ」に装着されているものを流用したように見えるインフォテイメントやダイヤル式の空調コントロールは、少々スマートさに欠けるのも事実です。
この辺りのちょっと足りないところは、絶壁インパネといわれた2代目(S130)や3代目(Z31)を踏襲しているように感じました。
気になるメカニズムはどうなるのでしょうか。
今回わかったのは「V6ツインターボエンジン」と「6速MT」ということだけで、それ以外の詳細は未公表です。日産が現在持つメカニズムから、新型フェアレディZを予想したいと思います。
エンジンは、タコメーターのレッドゾーン(7000rpm)や海外で「400Z」という名称が商用登録されている事から推測すると、「スカイライン」の最強仕様「400R」に搭載される3リッターV型6気筒ツインターボエンジンの「VR30DDTT」で間違いないしょう。
ちなみにVR30DDTTと6速MTの組み合わせは初ですが、田村氏は「絶対にMTでなければいけないと思いました」と語るように、絶対的な速さはGT-Rに任せ、Zは自分で操る歓びといった気持ち良さの部分を重視している証拠でもあります。
ただし、多くの人にMTを受け入れてもらえるように、シフトレバー右側にはシンクロレブコントロールも継続採用されます。
フロントグリルが四角に大きく開けられている理由は、初代のイメージの踏襲だけでなく、冷却性能を確保のための機能のためだといわれています。
また、タコメーター内には「SPORTモード」を示すインジケーターが確認できました。
プラットフォームは5代目(Z33)から採用しているFMプラットフォームです。
日産のプラットフォーム計画を見ると、FF系はアライアンス効果を活かして共通化/合理化のなかで刷新されつつありますが、FR系は日産しかモデルが存在しないため、ビジネスの観点で見ると新規開発は難しいのも事実です。
しかし、田村氏は「素で勝負できるクルマ」と自信を持って語っていることから推測すると、制御系でごまかすのではなく、車体の基本となる部分で大掛かりなアップデートがおこなわれているはずです。
他社の事例ですが、大幅改良されたレクサス「IS」が、従来プラットフォームの大改修によって走行性能が劇的なレベルアップを果たしたことからすると、新型フェアレディZについても心配はいらないでしょう。
フェアレディZ プロトタイプの足元には、フロント255/45R19、リア285/35R19サイズのダンロップ SPスポーツMAXXと軽量アルミホイールが組み合わされていました。
さらに、チラッと覗くブレーキはR35 GT-R用のブレンボが奢られていましたが、これはプロトタイプとしての演出で、量産モデルはもう少し控えめになるはずです。
新型フェアレディZの量産モデルはいつ登場するのでしょうか。
NISSAN NEXTの「今後18か月の間に」という言葉を信じれば、2021年の東京モーターショーで量産モデルを世界初公開、2021年内に正式発売というのが素直な流れではないでしょうか。
田村氏は「頑張れば手が届く値段にしたいと思っています」と語りました。
現行モデルのスターティングプライスが398万円である事から予測すると、400万円前半スタートであることを期待したいところです。
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今回のイベントをオンライン視聴していた人のなかに、実はトヨタの関係者もいました。
話を聞いてみると、「我々としても嬉しいです。一緒にスポーツカーを盛り上げていきたいです」とのことでした。
フェアレディZ プロトタイプが発表されたその夜には、奇しくもトヨタ「GRヤリス」のオンラインイベントが開催されました。
まさか日本でスポーツカーのイベントを連続で見ることができる日が来るとは、何だか感慨深いです。