日本株にはコロナ感染が治まらないこともあり、「弱気派」が増えているかもしれない(写真:つのだよしお/アフロ)

時計の針を8月の頭に巻き戻そう。「新甫」という言葉は、もともと商品先物の用語で、当月最初の取引日のことだ。

よく「2日新甫(2日が月の最初の取引日)は荒れる」と言われるが、今年の8月は「3日新甫」で始まった。結果的に、日経平均株価は7月31日終値2万1710円(前日比629円安)から485円上昇。4日も含めれば2日間で863円も上昇するなど、往来相場が続くと見られていたなかで変動が大きくなった。

「日本株の弱気派」が増えてきた

さて世界の中心であるアメリカでの新型コロナウイルスによる感染拡大は第2波、第3波の様相を示している。先週末の7月の雇用統計にはどの程度の影響が出ているか注目されていたが、失業率は10.2%と、3カ月連続で改善。非農業部門の就業者数も前月比176万3000人増と、予想を上回る堅調な結果がでた。

しかし、これを受けた市場では、売られていたディフェンシブ銘柄が買われたものの、連日高値を更新してきたハイテク株に利益確定の売りが出るリバランスの動きが広がったように、「回復鈍化」の印象も感じられた。

また、ドナルド・トランプ大統領が、中国企業の運営する動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」と対話アプリ「微信(ウィ−チャット)」にかかわる取引を禁じる大統領令に署名したこともあり、NYダウは終盤までマイナス圏での取引が続いた。このように、米中両国の対立の不透明感も続いたままだ。

それでも、不透明な中で前向きに材料を探すアメリカ株はまだ良い方だ。日本株においては次第に弱気が増えており、方向感のない袋小路に入り込みつつある。

先週末の8月7日も先物の仕掛け売りとも見られる駆け引き等に影響を受け終始弱含みの展開で、日経平均は一時200円安となった。

テクニカル面から見ると、四半期決算発表前までに売られてきたトヨタ自動車やシャ−プが「下降トレンドライン」(レジスタンスライン)を上にブレイクしてきたことは唯一の救いである。

だが、これも売られていた銘柄が皆反発するわけではなかった。キャノンのように戻らないものや、ニコンのようにさらに売られる銘柄もある。俗に「右肩上がりの勝ち組銘柄の押し目買い」が王道と言われるが、アドバンテストのように勝ち組銘柄の代表と言われていた銘柄でも、市場の予想を下回り、急落のあと戻って来ない銘柄もある。

前出のように、日経平均も7月31日には2万1710円まで下落した。結果的に「保ち合いゾ−ン(2万2000円〜3000円)を下方ブレイク」したように見えたがその後反発してゾ−ンに戻ったため、1日だけの「ダマシ」に終わった。

もし全体のトレンドが弱くなった場合はどうする?

だが、ダマシは、2度はない。もし再度この2万1700円台の安値を切れば、今度こそ、おそらく下方向のトレンドが発生するだろう。では、その場合にも備える「和戦両様の王道投資法」とは何だろうか。

これは、徹底した個別銘柄の厳選しかない。それらを勘案すると、「ウィズコロナ時代」の新しい生活様式の中で、安定的に業績を伸ばすことの出来る銘柄の押し目買いこそ、今の投資法の王道となる。

そこで今回は、コロナ禍によって出現した「新しい相場」の中で、どのような観点で「盤石なホ−ルド銘柄」を選んだら良いかのヒントを、筆者の「深掘り銘柄」から2つを参考として紹介しつつ、探ってみたい。銘柄選択の重要な重要キ−ワ−ドに関しては『 』の印をつけて示した。投資家の銘柄判断の例題として、お役に立てたらうれしい。

まず一つ目の参考企業は、アドソル日進(3837)だ。独立系ソフト開発会社で株価は5月20日に上場来高値2694円を付け、その後『モミ合い』になっている。

DX関連や新技術で市場を開拓する企業は強い

同社は自治体向けテレワ−クソリュ−ション「セキュア・ラップトップ」の販売を開始し、『テレワ−ク関連』銘柄のトップ企業群の一角に躍り出た。あらゆる産業において職場環境の改善に向けたDX(『Digital transformation』)への対応は喫緊の課題だが、日本の自治体のテレワ−クは驚くほど遅れている。例えば、理由はいろいろあるにせよ、コロナ関連情報を保健所がファックスでもやり取りしているのはその1例だ。

元々同社は、『IoT時代』の「サイバ−攻撃から身を守るセキュリティ無くしてIoTは成り立たず」と言う理念のもと、事業領域を広げて来た。提携先の米半導体企業ザイリンクス社だけでなく、衛星や航空機などのリアルタイムOSを開発するアメリカ企業との提携も長い。さらに産学連携を推進しており、今回の自治体向けソリュ−ションも立命館大学情報理工学部との協力の結果でもある。

8月6日に発表した2020年4〜6月期(第1四半期)『決算』では、売上高34.3億円(前期比 +8.6%)、営業利益 3.4億円(前期比+17.8%)となり、第1四半期としては、過去最高を更新した。

もう一つはヤマシンフィルタ(6240)だ。同社は建機用油圧フィルタ−の『グロ−バルシェア』約70%を誇る作動油や潤滑油のろ過用フィルタ−などの製造販売会社である。2019年に国内有数のエアフィルタ−専門メ−カ−を完全子会社化したが、これは、建機用フィルタ−だけに依存しないヤマシンの戦略。早速エアフィルタ−部門で、合成高分子系ナノファイバ−技術が脚光を浴びている。これは同社が『新分野』への展開を図る革新的な技術と位置付けており、すでに大手アパレルメ−カ−等でも採用されている。実は、今回脚光を浴びたのが、その特性を生かしたマスクやインナ−シートの量産だ。

一般的なマスクフィルタに使用される化学繊維の繊維径は 約3マイクロメートルの平面(2次元)形状。だが、本製品は0.2〜0.8マイクロメートルというナノサイズの繊維径が綿状の構造となっている。また主力の建機フィルタ−は、米キャタピラ−やコマツが徐々に厳しい状況となっている『中国市場』においても、現地企業に食い込み、ト−タルでは売り上げ増となっている。このように今後も、2本柱が『安定的』に伸びそうだ。

2社とも巨大企業ではないが、このようにDX関連や新技術で市場を開拓する企業は強い。全体相場がもし必ずしも芳しくなくなったとしても、新しい相場のなかで「王道投資」を実践すれば、恐れることは何もない。