7月下旬の祝日早朝、車の運転席で本誌の直撃に答えた前田会長

「2020年の1月25日に就任したNHKの前田晃伸新会長(75)に、ある “疑惑” が囁かれているんです。それは、過去に『BS受信料の未払いがあった』というものです」

 そう告白するのは、NHKの関係者だ。

 放送法第条第1項では、「協会(日本放送協会=NHK)の放送を受信することのできる受信設備を設置した者は、協会とその放送の受信についての契約をしなければならない」としている。つまり、原則としてテレビを持つすべての世帯は、NHKの受信料を支払わなければならないのだ。

 だがこの制度に対して、「NHKなど見ないから、払いたくない」と反発する声も多く、受信料の取り立てをめぐるトラブルが絶えない。事実、2018年度に全国の消費生活センターに寄せられた受信料に関する相談は、2009年度と比べ倍以上に増えている。

 そんななかで、NHKのトップまでが “受信料を未払いしていた” とは、どういうことなのか。前出のNHK関係者が語る。

NHKの受信契約には、地上契約と衛星契約があります。地上契約は、テレビが地上波のみを受信できる場合の契約です。一方、衛星契約は、衛星放送(BS)を受信できる場合に結ばなければいけない契約で、地上契約も含まれています。

 衛星契約は、現在の料金体系では地上契約よりも月額で970円高いのですが、前田会長はBS放送を受信していながら、それよりも安い地上契約だけを結んでいた時期があったということなんです」

 前田氏は東京大学卒業後、1968年に富士銀行に入行。富士銀行、第一勧業銀行、日本興業銀行が合併し、2003年に「みずほフィナンシャルグループ」が誕生すると、初代社長に就任した。2009年には同グループの会長にまで上り詰めた、華々しい経歴の持ち主だ。

「前田氏は、質素で生真面目な優等生タイプ。その一方で、“天然” なところがある、といわれています」(経済ジャーナリスト)

 天然な性格ゆえのうっかりだったとしても、「未払い」が事実ならば、NHKのトップとしては、あまりに脇が甘い。

 本誌は真相を確かめるべく、自宅から出てきた前田氏を直撃。過去にBS受信料の未払いがあったのか尋ねると、首を横に振りながら、「そういった事実はありません」。「一切、未払いの事実はなかったということですか?」と念を押すと、記者にうなずいてみせた。

 あるNHK職員は「未払い疑惑」の背景にある、NHK内部の複雑な事情を語る。

「前田会長は銀行出身で、放送業界は、まったくの素人。就任直後は、いわゆる “お飾り” の会長にすぎないと考えられていたんです。

 しかし最近になって、うちの縦割り体質を問題視して、『地上波とBSの番組作りの垣根をなくす』と言いだしました。当然、制作現場は『混乱するからやめろ』と言って猛反発しています。

 NHKでは、個人の住所さえわかれば、過去の受信料の支払い記録を簡単に調べることができます。なので、就任前の “身体検査” で、前田会長に『未払い』があったならば把握できる。

 就任から半年を経て、これが蒸し返されたということは、会長のやり方に不満を持つ派閥が、会長の動きを抑えようと活動し始めたのではないでしょうか」

 会長の受信料未払い疑惑に、権力闘争ーー。NHKが勝手に “ぶっ壊れる!” 日は近いかもしれない。

(週刊FLASH 2020年8月11日号)