左上から時計回りにナビゲーターの別所哲也(SSFF & ASIA代表)、ユーロスペース支配人・北條誠人、映画監督の深田晃司、女優の筒井真理子

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 18日、「Withコロナ&Afterコロナの映画業界を考えるオンライントークセッション」第2回が開催され、ショートショート フィルムフェスティバル&アジア代表の別所哲也がナビゲーターとなり、映画監督の深田晃司、女優の筒井真理子、ユーロスペース支配人・北條誠人が熱い議論を展開。北條支配人は新型コロナウイルス感染拡大のため、3月から約3か月間の売り上げを失ったことを明かすと共に、今後のミニシアターのあり方などについて語った。

 日本でも新型コロナウイルス感染者が100人(国内)を超えた2月中旬以降「だんだんと劇場のお客さんが減ってきました」と語った北條支配人。3月に入るとさらに売り上げは落ち、緊急事態宣言が発令される直前には前年比8%ぐらいまで落ち込んだ。そこから55日間劇場は休館し、非常に厳しい状況に陥っているという。

 女優の筒井は、映画『SHELL and JOINT』の舞台あいさつの中止、ロケの延期、文部科学大臣賞の表彰式中止で賞状が郵送で届いたことなどを述懐。「コロナのことがあって、スケジュールがどう変わったか振り返ってみたのですが、あまりにも(中止や変更が)多くて悲しい気持ちになりました」と語る。それでも自粛生活中に「いつも災害などが起こったとき、わたしたちの仕事って一番いらないものなんじゃないかと悩んでいたのですが、コロナのステイホームで、わたしもたくさんの映画を観て、心の栄養がないと人は生きていけないんだなと身に沁みました。以前は女優という仕事に罪悪感があったのですが、いまはかなり払しょくされました」と心境に変化も。

 緊急事態宣言が解除され、ようやく営業を再開した劇場について北條支配人は「感染症対策として、お客さんにはマスクをしていただき、手指の消毒を徹底しています。さらにチケット販売のカウンターには飛沫防止のビニールシートをつけ、座席は前後左右一席ずつ空けて、極力密集しないような配慮をしています」とコロナ対策を報告。

 ユーロスペースは92席と145席の2スクリーン。前後左右席を空けることで収益は落ち、従業員の仕事も増え、劇場を再開できたとはいえ、なかなか状況は厳しい。ナビゲーターの別所は「過激な言い方をすると、ミニシアター自体がなくなってしまう可能性もあるとお考えですか?」と問うと、北條支配人は「リアリティーとしてあると思います」と苦笑い。

 一方で、ユーロスペース同様に、ミニシアターとしてファンの多いアップリンクがオンライン映画館をスタートさせるなど、新たな動きもある。北條支配人が「オンラインと共存した形を模索していく必要がある」と述べると、深田監督は「ミニシアターの重要性というのは、その劇場ならではのセレクションがある」とミニシアターの存在意義を強調。筒井も「ユーロスペースさんのチョイスならクオリティーが保てる。そういったものをネットで届けられるのは、ミニシアターがない地域の人間にはありがたい」とコメント。

 また北條支配人は、フランスや韓国の映画界が国から手厚い支援を受けていることに触れ「国からお金をもらうと上映作品が偏るという危険性を指摘する方もいると思いますが、ミニシアターの現状は“映画が好き”という気持ちで続けているため、蓄えがない。今回のような事態になると大変な状況になってしまう。公的支援を受けられる体制があった方がいい」と持論を展開。それによってギリギリの状況から少しでも脱することができれば、若手の育成やオンラインを含めて未来につながるプラットフォームを作っていけるという。

 「今までは競争の時代だったのかもしれませんが、コロナを経験して、みんなで助け合って生きていく時代になったと言われています」とも話す北條支配人。「オンラインもリアルも一緒の方向を向いて共存していくというのが自然なことかもしれません。それが将来につながっていくと思う」とWith&Afterコロナを見つめていた。(磯部正和)