東京都の小池百合子知事は、2020年3月23日、次のように発言した。

「事態の今後の推移によっては、都市の封鎖、いわゆるロックダウンなど、強力な措置を取らざるを得ない状況が出てくる可能性がある。そのことを何としても避けなければならない」

首都・東京のロックダウン(都市封鎖)の可能性が、初めて表明されたのだ。

それを受けて、こんなツイートが投稿され、話題となっている。

画像中央に示されているのは、練馬区西大泉町だ。周りは埼玉県新座市だが、この一画だけは東京都のようだ。いわゆる飛び地なのだろうか。「東京都がロックダウンされたら練馬区西大泉町の住民は......」と、行く末を案じている様子である。

「30m×60mの領地に取り残され本国からの支援も受けられず」、新座軍に攻め込まれ、埼玉に回収されてしまうのか。まさに風前の灯火といった状況なのか。

Jタウンネット編集部は、練馬区西大泉町の飛び地について心配する投稿者・ソラシド(@yunyeungcha)さんに詳しい話を聞いてみた。

行政の手続きの漏れが、飛び地の原因?

まずソラシドさんが「練馬区西大泉町」に着目したのは、なぜだろう?

「東京23区にこんなところがあるというインパクトはもちろん、1974年までその存在すら把握されていなかったという変わった歴史にロマンを感じたからです。
練馬区の『本土』側の町名は1981年に『西大泉町』から『西大泉』に改められているのですが、飛び地の部分だけは『西大泉町』のまま残っているというのも、この場所の特殊性が垣間見えて面白いと思います」

実は、この「練馬区西大泉町」については、Jタウンネットも取り上げていた(2017年1月4日「埼玉県にある約30m×60mの「東京都」...飛地の存在理由、区役所もわからず」)。内容の一部をさらっと紹介しておこう。

練馬区役所への取材によると、「詳細は区役所の方にも伝わっておらず、昭和49年(1974年)に開発業者が練馬区の方に開発の相談に来た際に存在が発覚しました。恐らく登記簿などを見てこちらに来たのだと思われます」と語った、そうだ。

歴史的にどのような土地だったのか、という点も不明で、鷹狩の場所だった、住宅地の中にある畑だった、という推測がされているという。

「ただ、行政の手続きの漏れから、このような形になったと考えられます」


Jタウンネット2017年1月4日の記事より(画像は編集部作成)

ソラシドさんは、飛び地への関心について、こう語っている。

「飛び地というのはとても不思議で興味深いですね。水道や電気はどうなっているのか?  学校はどこへ通うのか? そもそもどうしてこの場所が飛び地になってしまったのか? 所属が周りと違って不便なこと、逆に飛び地だからこそ得すること、いろいろ考えて想像してみるのが楽しいです」

ちなみに先述のJタウンネット記事には、「地理的には新座市、行政的には練馬区扱いということもあり、行政サービスでは両者が分担して行っている。上下水道は新座市、ゴミの処理は練馬区の管轄。学校は、基本的に練馬区の小中学校に通うことになっている」と記されている。


Jタウンネット2017年1月4日の記事より(画像は編集部撮影)

練馬区の発表資料によれば、西大泉町の面積は0.002キロ平方メートル。この飛び地をめぐって、ツイッターにはこんな声が寄せられている。

「それでも、そこの住民は意地でも新座市民にはなろうとしませんw」
「連日練馬駐屯地から支援物資を投下する作戦が行われる模様」
「ここの住民の方へ: 生きてください。例え埼玉県民に身をやつしたとしても。 生きていれば、必ずいいこともあるでしょう」

ツイッター上での反響を、ソラシドさんはどう感じたのだろうか?

「『翔んで埼玉』を連想される方がいたり、いろいろな妄想が深まって面白かったです。 新型コロナウイルスの感染拡大によるロックダウンという非常事態はもちろん好ましいことではないですし、現実にこの場所が埼玉の勢力によって封鎖されるなんてことはあり得ないわけですが、そんな中でも飛び地の掻き立てる想像力は、少しほっこりするネタになったのかなと思います」

もちろん、東京封鎖などという事態は起こってほしくない。だが、「練馬区西大泉町」にはちょっと注目しておきたい気がする。