●祝! 3.5mmイヤホンジャック復活

ソニーが5Gに対応する2020年の新しいフラグシップスマホ「Xperia 1 II(エクスペリア ワン マークツー)」を発表しました。普段オーディオ・ビジュアル分野を中心に取材している筆者は、このスマートフォンが「音楽プレーヤー」としても魅力的なところに注目しました。どこがそんなにスゴいのかを解説したいと思います。

ソニーの最新フラグシップスマホ「Xperia 1 II(エクスペリア ワン マークツー)」は、音楽プレーヤーとしても最先端のオーディオ技術を満載した魅力的な端末になりそう


最先端機能の紹介に入る前に、ひとつ嬉しいお知らせがあります。Xperia 1 IIに3.5mmアナログイヤホンジャックが復活しました。

ウェル・カム・バック! 本体のトップに3.5mmアナログイヤホンジャックが搭載されています


今から2年前の2018年に発売されたXperia XZ2で、いったん廃止になったアナログイヤホンジャックが、内部の設計を見直して最適化したことで再び搭載されました。本体の厚さサイズは現行フラグシップの「Xperia 1」と比べて0.3mmほど、見事に薄型化を果たしています。

これでまた、大事に使っていた3.5mmプラグのイヤホン・ヘッドホンがUSB変換アダプターを使わずに直接つなげられるのはやはり有り難いことです。変換アダプターはバッグやキャリングポーチの中にケーブルから外した状態で入れると、なくしてしまうこともよくありますよね。

本体の厚さサイズはXperia 1よりも少し薄くなりました


○ゲーム用にも嬉しいアナログイヤホンジャック

有線接続のイヤホン・ヘッドホンは、Bluetooth接続のワイヤレスで発生する音声の遅延や音切れがないため、モバイルゲームが圧倒的に気持ちよく楽しめます。最近はワイヤレスイヤホンも低遅延性能を高めた製品が多くあるので、動画鑑賞ではほとんど気にならなくなってきましたが、音ゲーやシューティングゲームのように入力操作に対して音がズレると不快なコンテンツの場合は、特に有線イヤホン・ヘッドホンが有利です。

Xperia 1 IIは3.5mmアナログイヤホンジャックからの最大192kHz/24bitまでのハイレゾ出力に対応しています。同じくハイレゾ対応のヘッドホン、イヤホンを組み合わせると高品位なサウンドが楽しめます。

スマートフォンなので、専用のアンプを搭載するポータブルオーディオプレーヤーに比べるとパワーが劣るように感じるという方は、最近はUSB Type-C端子に接続して使えるコンパクトなDAC内蔵ポータブルアンプが様々なメーカーから発売されているので、これらを組み合わせるとよいでしょう。

写真はXperia 5にMaktarのスティック型ハイレゾ対応DAC内蔵アンプ「Spectra X」を装着したところ。USB端子に直結して手軽にパワフルでディティールに富んだハイレゾ再生が楽しめます


●最新のDSEE UltimateやaptX Adaptiveに対応

Xperia 1 IIにはソニーが開発した、SpotifyやApple Musicなどの定額制音楽配信サービス、CDからリッピングした音源など圧縮された楽曲データをスマホで聴く時に、楽曲が本来持っている情報を予測・復元しながらハイレゾ相当の臨場感に高める独自技術の最新バージョン「DSEE Ultimate」が搭載されています。

ウォークマン「NW-A100」にもソニー独自のDSEE HXが搭載されています。Xperia 1 IIが搭載するDSEE UltimateはAIによる解析・復元処理をさらに強化した進化形


DSEE Ultimateでは、2013年以降に発売されたソニーのウォークマンやワイヤレススピーカーから採用が始まった「DSEE HX」という技術をベースに、最新のAI(人工知能)技術を組み合わせて、楽曲ごとに「ボーカル」や「パーカッション」など楽器や曲の情景に合わせて最適な予測・復元を行います。結果、様々な音源をハイレゾ相当の高音質で聴ける魅力があります。YouTubeやNetflixなど動画、ゲームの音声にも効果があります。さらに有線・無線、どちらのタイプのヘッドホン・イヤホンにも対応します。

DSEE HXはソニーのウォークマンやワイヤレスイヤホンなどポータブルオーディオの上位モデルに広く搭載されています。オンにすると高音域の滑らかさと広がり、ディティールの再現性が明らかに高まります。今回のグローバルモデルの発表時点ではまだXperia 1 IIの試聴ができていないため、実際にどれほどの効果が得られるのか、試せる機会が待ち遠しい限りです。

○ハイレゾ再生も徹底強化

ハイレゾ再生と言えば、Xperia 1 IIはBluetoothによるワイヤレス接続でハイレゾ相当の高音質が楽しめるオーディオコーデックのLDACとaptX HDのほかに、クアルコムのaptX Adaptiveもサポートしました。それぞれに対応するワイヤレスヘッドホン・イヤホンとペアリングすると実力を発揮します。

Xperia 1 IIはソフトウェアの設計を最適化したことで、ハイレゾ音源にダウンコンバート処理をかけず“ハイレゾのまま”ストリーミング再生できるそうです。例えばレーベルゲートの定額制ハイレゾ音楽配信サービス「mora qualitas」は、本機でそのままハイレゾ音源のストリーミング再生が楽しめるとのこと。

アマゾンのハイレゾストリーミングサービスである「Amazon Music HD」は、当初本機に対応していると説明があったものの、筆者が追加取材を行った5月中旬時点でまだハイレゾ音質での再生ができていないようでした。今後の対応に期待したいところです。

ハイレゾ相当のワイヤレス再生音質、低遅延を同時に実現するクアルコムの最新BluetoothオーディオコーデックであるaptX AdaptiveにもXperiaシリーズとして初めて対応しました


●力強く明瞭なステレオ再生が楽しめる

今回発表されたXperia 1 IIはグローバルモデルなので、いま欧米諸国などで先行スタートしている、ソニー独自の立体音響技術「360 Reality Audio(サンロクマル リアリティ オーディオ)」の立体音源がスマホで手軽に楽しめることも特徴として紹介されています。

○ソニー独自の立体サウンドとは?

現在、360 Reality Audioの音源はTIDAL、Deezer、nugs.netといった音楽プラットフォームが海外向けのサービスとして配信提供しています。特別な専用機器を使わなくても、Xperiaに一般的なステレオ再生に対応するヘッドホン・イヤホンを接続して没入感あふれる立体サウンドが手軽に楽しめるところが大きな特徴です。

CES2020に出展したソニーがデモンストレーションを行っていた、スマホで楽しめる360 Reality Audioの音源。海外ではTIDAL、Deezer、nugs.netが提供を始めています


実は日本国内でも、2019年12月にAmazon Musicが360 Reality Audioの技術を使って制作したコンテンツの配信を始めていて、月額1,980円(プライム会員は1,780円)のAmazon Music HDを契約すると聴くことができます。ただし、現時点では対応するハードウェアがアマゾンのスマートスピーカー「Echo Studio」だけ。Xperia 1 IIが国内で発売される時には、Amazon Musicの360 Reality Audioの音源がスマホでも再生可能になるのか要注目です。

○内蔵スピーカーが進化、低音がパワフルに

内蔵スピーカーも改良が加えられています。

Xperia 1、Xperia 5は片側のスピーカーだけが開口部をフロントパネルの正面側に向けていて、もう片側は側面向きに配置されています。これを演算処理によってバランスのよいステレオ再生になるように調整していました。

Xperia 1 IIでは筐体内部の音道レイアウトを見直して、左右両方のスピーカー開口部をフロント側に向けたことで、より自然なステレオ感を実現。左右の音が混じり合うことによって発生するクロストークノイズも大幅に低減しています。内部のスピーカーボックスの容積も拡大したことによって音圧が増加して、低音再生もパワフルになっているそうです。こちらも試聴できる機会が待ち遠しくてたまりません。

スマホに内蔵するスピーカーも音圧、ステレオイメージを強化・改善しています


○クリエイターが意図した音を忠実に再現

ソニーモバイルではXperia 1の開発時点から、ソニーグループのコンテンツメーカーであるソニー・ピクチャーズエンタイテインメントのエンジニアと協業して、Xperiaによる映画コンテンツのサウンドを丁寧に練り上げてきました。特にドルビーアトモスの音声を収録したコンテンツを再生すると、Xperia 1は見事な音の定位と立体的な音場感を蘇らせてくれます。

最新のXperia 1 IIでは、ソニー・ミュージックエンタテインメントのエンジニアと一緒に、クリエイターの制作意図を忠実に再現したサウンドを徹底追求してきたそうです。スマホのスピーカーとヘッドホン・イヤホン再生の音まで全般に渡って効果があるという独自チューニングの底力に期待が高まります。

Xperia 1 IIが無事に日本で発売されることが決定した際にはぜひ、Xperiaフラグシップの新旧モデル比較、または人気のAndroidウォークマン「NW-A100」シリーズとの聴き比べも行ってみたいと思います。