パナソニックの福岡堅樹【写真:小倉元司】

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7人制挑戦を明言していた福岡は、なぜ2試合限定でトップリーグでプレーしたのか

 ラグビーのトップリーグ第2節は18日、豊田スタジアムでトヨタ自動車―パナソニックが行われ、ワールドカップ(W杯)日本代表6人を擁するパナソニックが40-20で開幕2連勝を飾った。この試合後、東京五輪を目指して7人制日本代表に合流するWTB福岡堅樹は終了間際に“有終トライ”を披露。トップリーグ史上最多の観衆3万7050人を最後まで魅了した。

 大観衆が見守る中で展開された白熱のシーソーゲーム。決着をつけたのはこの男だった。8点をリードして迎えた後半37分、相手のパスの乱れに乗じてボールを奪った福岡が中央にトライ。一瞬のスキを見逃さない、“らしい”プレーを置き土産に有終の美を飾った。

「ホッとした気持ちが大きい。自分のパフォーマンス的に納得いかないところもありましたが、試合の展開としても苦しいところもあって、流れを作ることができたのはチームに与える影響としては大きい。嬉しい気持ちとホッとしたのが表情に出たのかなと思います」

 こう振り返った福岡だったが、随所で観衆を沸かせた。前半の30分過ぎにはライン際でボールを持ち、前に仕掛け立て続けにチャンスを演出。1点リードの後半31分にも自慢の快足を生かして一気にゲインし、WTB竹山晃暉のトライをお膳立てした。“パナソニックの福岡”の今季ラストゲームで存在感はやはり目立った。

 もっと15人制でも見たい――。そんなファンが増えるようなパフォーマンスだったが、2節限定でのトップリーグ出場には福岡なりの理由があった。「開幕戦からたくさんのファンが来てくれて、これだけたくさんの人が見てくれた。今はラグビーの勢いがきている。だからこそトップリーグで見てもらえるに、人気を冷めさせないために、少しだけでも挑戦させてもらった」。W杯で起きたラグビー熱を、トップリーグに還元するために、自らの役割を全うして見せた。

フィジカルの必要な15人制に対して、7人制で求められるのはスピード

 今後は東京五輪を目指し、7人制日本代表の候補合宿(24日〜・熊谷)に参加する。まずは代表の座を勝ち取るところを目指すが、「注目されているのは15人制。7人制はなかなか目にする機会が少なく、知名度はまだまだ。五輪で7人制がスポットを浴びれば。今の7人制は15人制より低いところにある。7人制の知名度が広まってくれれば」と幅広いラグビーの普及が狙いにあることも明かした。

 その上で15人制と7人制の違いについても言及している。

「15人制に関してはWTBでもかなりフィジカルの部分が大事になってくる。ブレークダウンでの仕事、バックローの選手、フランカーの選手相手にしっかりボールをキープする、ジャッカルするようなスキルが必要になってくる。空中戦も多いので、そこで当たり負けない体の強さが必要だと思います。

 7人制になると、どちらかというとスピード。走ることに特化することが必要になる。キックを競るシチュエーションはそうないですし。より広いスペースを与えられたらそこで勝負する。何度も何度もトップスピードを出せる体になる必要があるし、より走れる体にシフトしていければいいかなと思います」

 15人制でスピードスターとして名をはせたが、よりスピードに磨きをかけたプレーをイメージしているようだ。実際に2016年のリオ五輪でも7人制代表に選出され、4強入りに貢献している。7人制は“本職”ではないが、W杯で世界を相手に渡り合ったその経験は必ずや生かせるはずだ。

 将来的には医師を目指す福岡にとって、昨年のW杯と同様に東京五輪は集大成の舞台ともいえる。「まず前提としてメンバーに入る事。それがまず大変なこと」と前置きした上で、「実際にリオ五輪を経験したものとして。日本でメダルをとるかどうか、その差は大きいと感じた。4位でも快挙だったが、それでも周りの活躍に埋もれてしまって、少し悔しい思いをした。やるからには必ずメダルを目指したい」と力強く大きな目標を見据えた。

 2019年に日本を熱狂させた男が、2020年新たなステージでの偉大な挑戦をスタートさせる。(THE ANSWER編集部・角野 敬介 / Keisuke Sumino)