大人も子どもも楽しめるテーマパーク

写真拡大

 みなさんはディズニーランドやユニバーサル・スタジオといったようなテーマパーク、遊園地はお好きですか? 遊びに行ったことがあるという方はたくさんいるのではないでしょうか。

この記事のすべての写真を見る

 楽しい思い出を作れる素敵な場所ですが、テーマパークには遊んでいるだけではなかなか気づかない「謎」がたくさん隠されています。言われてみると「なぜ?」と思うようなことばかり。その、「なぜ?」の理由を知れば、テーマパークで遊ぶことがますます楽しくなります。

 1年に何回も遊びに行くという方も、久しぶりに遊びに行くという方も、これから一緒にテーマパークの「なぜ?」を解き明かしていきましょう。

なぜ朝から風船を売っているのか?

 みなさんはテーマパークに入ったら、入り口ですぐに風船を売っている光景を目にしたことはないでしょうか。風船を売っていること自体は不思議ではないと思います。ただ、テーマパークでは“朝から”風船を売っています。これは不思議ではありませんか?

 朝から風船を買ってしまうと、これから1日遊ぶのに邪魔になるはずです。持っていなければ飛んでいきますし、風船を持ったままジェットコースターなどには乗れません。ということは、朝から買う人はほとんどいないですよね。

 すなわち“売れるはずのないものをあえて売っている”のです。しかし、子どもは風船を見ると1日遊ぶという都合は関係なしに、親に対してこう言います。

「ねぇ、お母さん、風船買って!」

「パパ、風船欲しい!」

 そうすると親としては、朝に買うことのわずらわしさから「あとで」もしくは「ダメ」と言います。「ダメ」と言われてしまったらしかたないですが、「あとで」と言われると子どもは覚えているもの。帰るときに風船を見つけては、

「あとでって言った!」

 と、言うわけです。親としても子どもにウソをつくわけにはいきませんので、帰るタイミングで買ってしまうのですね。

 そうです。朝から風船を売っているのは、売っているというよりは、帰るタイミングで確実に買ってもらうために見せているのです。そのため、朝に風船を売っているスタッフよりも、夕方以降の帰る時間帯のほうが圧倒的にスタッフの人数が多いです。

 マーケティングとは「売れる必然」を作ること。まさに、朝、風船を見せることで夕方に「売れる必然」を作る、テーマパークの戦略のひとつです。

なぜ挨拶は「いらっしゃいませ」ではないのか?

 テーマパークや遊園地にもよりますが、来場するお客様に対し「いらっしゃいませ」と言わないところがほとんどです。それはなぜでしょうか。

 みなさんは飲食店や小売店などいわゆるサービス業のお店で「いらっしゃいませ」と言われたら、なんと返事をしますか? 会釈くらいはするかもしれませんが、「いらっしゃいました」なんて言いませんし、「いらっしゃいませ」に対する明確な返事は、実はないですよね。

 そのかわりに多くのテーマパークで使われる挨拶が「こんにちは」や、「いってらっしゃい」です。「こんにちは」と言われたら「こんにちは」、「いってらっしゃい」と言われたら、「いってきます」と挨拶を返せるのです。

 「いらっしゃいませ」だと一方通行のコミュニケーションでしかありませんが、これなら、双方向のコミュニケーションのきっかけになります。

 テーマパークはアトラクションだけではなく、現代では希薄になりがちな“フェイストゥフェイス”のコミュニケーションを大切にして、楽しい思い出を作っていただこうとしています。そのためにコミュニケーションをとるきっかけになる、挨拶を大切にしているわけですね。

なぜポップコーンなのか?

 みなさんはテーマパークでポップコーンを買ったことがありますか? ポップコーンといえばテーマパークで食べられるおやつ、おつまみの定番です。でも、なぜポップコーンなのでしょうか。

 理由のひとつとして、著名なテーマパークがアメリカで生まれたこともあり、アメリカの文化によってもたらされています。

 とはいえ、ほかにも候補はたくさんありそうです。そのなかでポップコーンが選ばれる理由ですが、気軽につまめる、味に変化をつけやすい、飽きがこないなど、“食”という観点のほかに“収益”という観点があります。

 テーマパークによって価格は異なりますが、現在、ディズニーランドではレギュラーボックスが400円で販売されています。専用の入れ物(ポップコーンバケット)をつけたら2000円〜3000円ほど。

 ポップコーンが400円だったとして、そのうち原材料である「乾燥したトウモロコシの粒」の原価は数パーセントでしかありません。

 そこから人件費やポップコーンを作る機械のメンテナンス費用を引いたとしても、大きな利益を得ることができます。

 以上の点を踏まえれば、収益という観点でポップコーンは非常に優秀。ぜひ、ポップコーン売り場で並びながら、どれくらいの利益が生まれているか想像してみてください。

 テーマパークに隠された「謎」、「なぜ?」はマーケティングなどビジネスに使えるものから、挨拶のようなコミュニケーションといった、私生活に使えるものもたくさんあります。

 もちろん遊ぶだけでも楽しいですが、ビジネスや私生活に生かせるヒントを探しながら遊ぶということもテーマパークの魅力のひとつ。

 まだまだご紹介しきれないほど、「なぜ?」は多く隠されています。みなさんも、ぜひ1度、探されてみてはいかがでしょうか。

<著者プロフィール>
清水群◎株式会社スマイルガーディアン代表取締役。ディズニーランドとUSJで接客、アトラクションの設計や安全管理、KPI管理による業務改善などを担当してきた日本で唯一のテーマパークコンサルタント。遊園地・テーマパークの専門家としてコンサルティングをしながら、多業種の経営コンサルティング、チームビルディング支援や、講演・企業研修の講師として活動している。