バーべーキュー味って、つまり何味?

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 行楽シーズンの楽しみの一つとして、サンマやキノコといった秋の味覚を使ったバーベキューで、食欲の秋を満喫する人も多いことでしょう。バーベキューといえば、さまざまなスナック菓子に「バーベキュー味」という味付けがされた商品が多くあり、老若男女問わず人気です。しかし、このバーベキュー味について、ネット上では「つまり何味?」「肉と野菜の味?」「作れそうで作れない味」など、さまざまな疑問の声もあります。

 世代を超えて幅広く愛されるバーベキュー味の“正体”について、一般社団法人日本味覚協会の水野考貴さんに聞きました。

誕生のきっかけは「カレー味」

Q.そもそも「バーベキュー味」とはいつ、どのように誕生したものですか。

水野さん「誕生についてはさまざまな説がありますが、有力なものとしては、スナック菓子の『サッポロポテト』(カルビー)が挙げられます。『サッポロポテト』のバーベキュー味は、実はもともと『カレー味』として商品開発されたものでした。

しかし、カレーの味は家庭によって千差万別なので、消費者のカレーのイメージと合致しないかもしれないという懸念から、カレーと同じように野菜や肉を使う『バーベキュー味』という表現を採用したといわれています。これが定着し、現在のバーベキュー味となったと考えられます。

この『サッポロポテト バーベQあじ』は1974年に販売開始されており、バーベキュー味自体もその年に誕生したといえるのではないでしょうか」

Q.ずばり、バーベキュー味とは、どのような味のことを指すのでしょうか。

水野さん「『バーベキュー味=○○の味』という明確な定義は特にありません。そこで、バーベキュー味の商品を持つ、カルビー、湖池屋、マクドナルドの3社で味の表現を比較してみました。

カルビーは『じっくり煮込んだ野菜とチキンの素朴な味』、湖池屋は『ほおばりたくなる肉の旨(うま)みとコーンの甘さ』、マクドナルドは『太陽の恵みを受けたトマトペーストに、ミックススパイスと赤ワインビネガーなどをブレンド。スモーキーな風味が特長』と表現しています。

こうして見ると、それぞれに違いはあるものの、バーベキュー味は『甘味』『スパイシーさ』が共通点として挙げられると思います」

Q.バーベキュー味は子どもから大人まで幅広く愛されていますが、それはなぜだと思われますか。

水野さん「理由の一つとして、バーベキュー味はほんのりスパイシーで甘味があり、癖になる味であることが挙げられます。先述3社のバーベキュー味商品の成分表示を見ると、砂糖や甘味料、果糖ブドウ糖液糖、オニオンパウダー、香辛料、粉末しょうゆ、スパイスミックス、からし粉などが含まれていることが分かります。

甘味とスパイシーさの組み合わせが、癖になる味付けとなり、人々を引きつけます。甘味とスパイシーさの度合いは商品によって異なるので、甘味の割合が多ければ子どもが食べやすい味になり、スパイシーさが強ければ大人向けのお酒のつまみにもなるので、バーベキュー味は幅広い世代から好まれる味だと考えられます。また、スモーキーな風味や複雑な味わいでコクを感じるという特徴も、多くの人から好かれる理由でしょう」

Q.一般家庭でも、バーベキュー味をつくることは可能でしょうか。

水野さん「可能だと思います。先述の通り、バーベキュー味には甘味とスパイシーさが欠かせません。砂糖もしくは蜂蜜を使用して甘味を出し、スパイシーさの要素としてコチュジャンを少量加えるのがポイントです。なお、ベースとなるソースは、ウスターソース、中濃ソース、あるいはとんかつソースでつくるとよいでしょう。そこにケチャップや、バターとニンニクで炒めたタマネギを加えます。

塩で味を調整しつつ、赤ワインを加えたり、コチュジャンの量を増やしたりすると、大人向けのバーベキューソースになります。蜂蜜の量を多くすると、子どもでもおいしく食べられるソースになるでしょう」

Q.味覚の観点から、バーベキュー味と相性がよいと思われる食材はありますか。

水野さん「バーベキュー味のソースは、肉や野菜、海鮮など多種多様な食材とマッチします。特に肉類は、どんな種類の肉とも相性がよく、一般的に、スペアリブやチキンナゲットにはバーベキューソースを使う人が多いと思います。野菜とも相性がよく、野菜炒めの味付けとしても使えます。

甘辛いバーベキュー味はご飯との相性も抜群で、焼きおにぎりを作るときは、しょうゆの代わりにバーベキューソースを使うととてもおいしく感じられると思います。ただ、バーベキューソースは“強い味”なので、“弱い味”の食べ物はソースの味に負けてしまいます。繊細な味わいを楽しみたい料理にはふさわしくないといえるのではないでしょうか」