日本の携帯電話の通信料金を大幅に引き下げる先兵として、その役割を期待されていた楽天は、利用者を5000名に限定して10月1日から「無料サポータープログラム」を募集するとしていた。その発表をした際、楽天の三木谷浩史会長兼社長は、本格サービスの開始時期を「1カ月後かも知れないし、3カ月後になるかも知れない」と曖昧な言い回しで質問者をけむに巻いた。

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 注目の携帯電話試験サービスは10月中旬にSIMカードの送付が始まり、1週間ほどで5000人の対象者のうち4500人以上に配送されたようだ。

 利用対象者は、東京23区、大阪市、名古屋市と神戸市に限定されている。言うなれば利用PR推進区域を設定したようなものだから、「さすが楽天」と称賛の声が高まっているかと思いきや、「さっぱりつながらない」とか「途切れる」という相談やクレームが絶えない。

「無料サポータープログラム」とは言っても、楽天の指定する機種の購入が必須である利用者は、2週間遅れでやっと届いたSIMカードを端末に挿入したのち、期待と裏腹な不具合の続出に戸惑っている。

 もちろん最初から万全のスタートが望める状況ではなかったが、当初20人で始まった楽天コールセンターの相談窓口人員は、急遽1.5倍の30人以上に増員された。

SIMカードが届いた4500人のうち、通信サービスの利用が確認されているのが8割強なので、実質3600人強の利用者に、コールセンターの相談員が30人以上張り付いた計算だ。頭割りすると120名の利用者当り1名の相談員になる。「充実した相談体制」と揶揄する声も上がりかねないが、実態はそれだけ深刻な状況なのだろう。

 試験サービスが展開されている地域では、原則として楽天が開設した基地局が使用されるが、基地局の整備が遅滞して進まず網の目が粗いため、場所によってはローミング(通信設備相互乗り入れ)されてKDDIの回線につながる。通信環境(地下から地上に移動など)が変わると、基地局経由の通信がローミングに変わローミングから基地局経由に変わる都度、通信が途切れるようだ。

 こうした情報に接すると、携帯電話の黎明期を思い出すのは自然なことだ。当時、通信状態が不安定な時には窓際に近寄ったり、画面のアンテナ本数を数えたり、現在の充実した通信環境では想像もつかない事態は、当時だからこそ看過されていた。令和の時代に、あってはならない事態だ。

 9月に行われた記者会見で、楽天モバイルのタレック・アミン最高技術責任者(CTO)は、「来年4月には通話が途切れることはなくなる」と説明していた。基地局の整備が5割程度に止まっている現在は通話の途切れが発生するが、計画通りに整備された6カ月後には通話が途切れなくなる、という当然のことが今確認されている。

 この状況を勘案すると、本格参入は”早くて”20年の春ということになるが、東京23区、大阪市、名古屋市に3432局の基地局が整備できるのかという疑問が、改めて重みを持つ。

 3大キャリアと同等の通信品質を達成した上で、料金が割安であることをアピールできなければ、勝負の土俵に登ることすらあり得ない。楽天の瀬戸際は、間もなく1カ月を経過し、残り5カ月となる。