白い光点から左右にまっすぐ赤い光の棒が伸びているように見えるこちらの画像、「宇宙に浮かぶライトセーバー」(リリースより)を写したもの……ではなく、NASAのジェット推進研究所(JPL)が7月31日に公開した銀河「NGC 5866」の姿です。


スピッツァー宇宙望遠鏡が撮影した銀河「NGC 5866」


撮影したのは「スピッツァー」宇宙望遠鏡。スピッツァーは赤外線を観測するため、画像の色は肉眼で見た通りの色ではありません。塵が発する波長8マイクロメートルの赤外線は赤、4.5マイクロメートルは緑、主に恒星が発する3.6マイクロメートルは青に着色されています。


赤外線画像とはいえ銀河らしく見えないのは、NGC 5866が地球に対して真横を向けているからです。


銀河には中心に恒星が集まった「バルジ」や、バルジの周辺に薄く広がる「円盤」(銀河円盤、ディスクとも)といった構造があり、その違いによって渦巻銀河や楕円銀河などに分類されているのですが、こちらに真横を向けているNGC 5866では、こうした構造を明瞭に観測することができません。


地球から約4400万光年先にあり、円盤部の直径およそ6万光年(天の川銀河の半分強)というスケールについてはわかっていますが、渦巻銀河なのかレンズ状銀河なのか、構造についてはっきりとしたことがわかっていない銀河のひとつに数えられます。


また、NGC 5866は「ハッブル」宇宙望遠鏡でも撮影されています。こちらの画像では、銀河内に存在する恒星の光を隠す暗い帯状の塵がはっきりと確認できます。これは、冒頭のスピッツァーが撮影した写真で「ライトセーバー」にたとえられていた赤い部分に相当するものです。


ハッブル宇宙望遠鏡が撮影した銀河「NGC 5866」


なお、この宇宙に数え切れないほど存在する銀河のなかには、「NGC 7773」のように真正面からその構造を観測できるものも数多く発見されています。


 


Image Credit: NASA/JPL-Caltech
https://www.jpl.nasa.gov/spaceimages/details.php?id=PIA23129
文/松村武宏