NASAは8月1日、太陽系外惑星「WASP-121b」の大気から金属が蒸発しているとするDavid Sing氏らの研究結果を発表しました。研究成果は論文にまとめられ、同日付でThe Astronomical Journalに掲載されています。


■主星に近すぎてフットボール型になっている系外惑星

WASP-121bはとも座の方向およそ900光年先にあるF型の恒星「WASP-121」を巡る系外惑星で、主星からの距離およそ380万km(地球から月までの平均距離の10倍程度)という至近距離を公転しています。


主星にあまりにも近いことから、強大な重力がもたらす潮汐力によってWASP-121bは引き裂かれる寸前といえる状態で、その姿はフットボールのような形状になっていると考えられています。


フットボールのようにゆがむ系外惑星WASP-121bの想像図


■高温の大気からは金属までもが蒸発している

主星のエネルギーを目の前で浴びるWASP-121bの大気は高温になっているため、系外惑星のなかでも「ホットジュピター(熱い木星)」という種類に分類されています。その温度は大気上層部で華氏4600度(摂氏およそ2500度)に達すると見られており、水素やヘリウムのような軽い元素はまるで「川のように」(Sing氏)WASP-121bから続々と流出してしまっています。


今回Sing氏らは「ハッブル」宇宙望遠鏡に搭載されている「宇宙望遠鏡撮像分光器(STIS)」の観測データを使い、WASP-121bから失われつつある物質を調べました。その結果、一般的なホットジュピターでは雲のなかに凝縮している鉄やマグネシウムといった金属までもが、WASP-121bでは軽い元素とともに惑星から離れた宇宙空間まで流出していることが確認されたのです。


重力に引き裂かれるか、熱で蒸発してしまうか。いずれにしても、WASP-121bは主星が輝きを失う前に消えゆく運命にあるようです。


 


Image Credit: NASA, ESA, and J. Olmsted (STScI)
https://www.nasa.gov/feature/goddard/2019/hubble-uncovers-a-heavy-metal-exoplanet-shaped-like-a-football
文/松村武宏