欧州宇宙機関(ESA)は7月16日、今年の9月に地球へ衝突する可能性があるとされていた小惑星「2006 QV89」について、今年衝突する危険性はなくなったとする観測結果を発表しました。


2006 QV89は13年前となる2006年8月に発見された小惑星で、直径は20〜50mと推定されています。発見から10日間だけ実施することができた追跡観測の結果は、「7000分の1の確率で2019年9月9日に地球へ衝突する」可能性を示唆していました。


2013年にロシアへ落下して1000名以上の負傷者を出したチェリャビンスク隕石は、直径10m前後だったとされています。これをしのぐサイズの2006 QV89が衝突すれば、その場所によってはチェリャビンスク隕石を上回る被害をもたらすことも予想されます。


2006 QV89を継続的に観測できた期間は短く、その後は再発見されることなく現在に至っています。割り出された軌道の精度は決して高いものではありませんが、地球へ衝突するコースに乗っているとした場合、小惑星が見えるはずのエリアを絞り込むことは可能です。


そこでESAはヨーロッパ南天天文台(ESO)と手を組み、ESOのパラナル天文台にある「超大型望遠鏡(VLT)」を使って、7月4日と5日に2006 QV89の捜索を試みました。VLTが向けられたのは「9月9日に地球へ衝突する場合、2006 QV89が観測されるはずのエリア」です。


その結果、観測されるはずのエリアに2006 QV89の姿は確認できませんでした。サイズが予想よりも小さかったためにVLTでも見つけられなかった可能性はありますが、その場合は地球の大気圏で燃え尽きてしまうため、地上に被害は及ばないとしています。


下の画像は、超大型望遠鏡(VLT)による観測結果です。2006 QV89が地球への衝突コースに乗っていた場合、赤い十字の場所にその姿が確認できるはずでした。


ヨーロッパ南天天文台の超大型望遠鏡(VLT)による観測結果。2006 QV89の姿は確認できなかった(Credit: ESO/ O. Hainaut/ ESA)


なお、小惑星が「観測されなかった」ことで衝突の可能性が否定されたのは、今回の2006 QV89が初の事例であるとESAは紹介しています。


 


Image Credit: J. Major
http://www.esa.int/Our_Activities/Space_Safety/ESA_confirms_asteroid_will_miss_Earth_in_2019
文/松村武宏