アメリカではどこでもあおり運転が多く見受けられる

 1)米テールゲイティングの場合

「もう、やんなっちゃう。さっき、会社から帰りのフリーウエイで、テールゲイティングされたのよ。頭にきちゃう!」。アメリカの共働き夫婦、奥さんが旦那さんの帰宅直後にそんな話題を持ち出す。

 こうした光景はけっして珍しくない。本来、テールゲイトとはクルマの車内後部を指す。そこに後続車が接近して走行する行為を「テールゲイティング」と呼ぶ。日本語に訳せば、これがあおり運転に相当する。

 アメリカではテールゲイティングが原因とみられるフリーウエイでの大事故が多い。これは都市部や地方部での差はなく、全米どこでも運転が粗い人が目立つ。

 筆者は約40年間、全米各地で実際に運転してきたが、その経験でいうと、運転の粗さが目立つのは、ミシガン州デトロイトや、カリフォルニアの南側のオレンジカウンティ。実勢速度が高く、さらにテールゲイティングが多い印象がある。

 この他、ピックアップトラックやフルサイズSUVが多く「トラックカウンティ」と称されるテキサス州でも、テールゲイティングをよくみかける。

 こうした事態を警察も承知していて、車間距離違反での摘発を強化している。

一方でその他の国々ではあおり運転をあまり見かけない

2)欧州やアジア、南米などの場合

 一方、欧州各国でのあおり運転はどうか?

 筆者の経験上、ドイツ、フランス、イタリア、スペインなどの旧西欧各国、チェコ、ポーランドなどの旧東欧各国、そしてフィンランドやスウェーデンなど北欧各国で、あおり運転はさほど目立たないように思える。もちろんゼロではないが、テールゲーティングが横行するアメリカと比べるとかなり少ない印象だ。

 また、中国、南米、そしてインドでは、あおる前から、遅いクルマに対しては一気に抜いていく。とくにインドでは、高速道路の車線はなきに等しく、路肩でもどこでも抜いていくので、同一車線であおる必要もないようだ。

 その他、一般的に運転がとても粗いと言われている韓国だが、こちらも筆者の体験上はあおり運転が酷い、という印象はない。

 このように、あおり運転が目立つのは、アメリカと日本ということになる。

 国民性も、そして人気車種も大きく違うアメリカ人と日本人が、なぜ、あおり運転をする傾向が高いのか?

 その理由を示すような文献や調査報告を目にしたことはない。

 ただし、交通事故の死亡者数では、アメリカは日本の約10倍に相当する年間約3万3000人。その数は過去数年間、横ばい状態が続いており、先進的な運転支援システムの搭載が増えても、減少へ転じることはない。