東南アジアを旅行するならライドシェアの「Grab」を使いこなせば便利で安心:旅人目線のデジタルレポ 中山智
旅人ITライター中山です。ゴールデンウィークの休みを利用して、タイ、ミャンマー、カンボジアと回ってきました。タイは毎年訪れていますが、ミャンマーは3年半ぶりでカンボジアは5年半ぶりの訪問。久しぶりのミャンマーとカンボジアで驚いたのが、ウェブサイトやスマートフォンを使ったサービスの普及です。
▲3年半ぶりのミャンマーは一見すると昔のままだが、通信環境は大きく変わっていた

たとえばミャンマーですが、最初に行ったのは2012年。当時のミャンマーはSIMの価格が日本円で数万円と高価なうえ、購入するためには現地の人のみ抽選という形式だったので、外国人旅行者が気軽に買える状況ではありません。そのときは空港のカウンターで100ドルのデポジットを払ってSIMをレンタルで使用したのを覚えています。


▲ミャンマー最大手の通信キャリアでKDDIも共同事業として参画しているMPTの看板

通信エリアや品質もほかの東南アジア諸国に比べていま一歩どころか、二歩も三歩も離された酷い状態。それが数年後には外資の通信キャリアが複数参入し、誰でも気軽に低価格でSIMを購入できるようになっています。さらに最大手のMPTには日本からKDDIが共同事業として参画しており、エリアも通信品質もかなり改善していました。今回タイ国境のミャワディから最大都市のヤンゴンを経由してミャンマー中央に位置するマンダレーまでバスで移動しましたが、移動中は国境付近の山岳地帯も含めてローミング先として接続していたMPTは圏外になることがほとんどなく3Gで接続。街になるとLTEでつながっており、ネットに接続できないで困るというケースはほとんどありません。KDDIがんばってるなという印象です。


▲バスの車窓からけっこうな頻度で基地局らしき鉄塔を見かけた

これだけ安定してインターネットに接続できると、それに付随してウェブやスマートフォンを使ったサービスも普及してきます。たとえばヤンゴンからマンダレーのバスチケットは、ウェブサイトからオンラインで購入。あとは当日バスカウンターで予約内容をスマートフォンで確認するだけでした。7年前はSIMすらも簡単には入手できない状態だったのに。


▲ネット予約したバスは、2-1配列の豪華なシート


▲バスの搭乗券はシールで、QRコードを読み込むと予約サイトにアクセスする

さらに今回便利だなと感じたのが、ライドシェアサービスの「Grab」です。東南アジアではUberも参入していましたが、結局GrabがUberの東南アジア事業を買収しており、ライドシェアや配車サービスとしてはGrabが1強の状態。自分はすでにフィリピンやベトナム、以前訪れたタイでもGrabを使っていましたが、ミャンマーのヤンゴンやマンダレー、カンボジアのシェムリアップ(アンコール・ワットのある街)でもサービスを提供していました。


▲タイやシンガポール、インドネシアをはじめ東南アジア8ヵ国でサービスを提供しているGrab

実は東南アジアというか、海外でのタクシーが苦手なんです。外国語で行き先を伝えるのがめんどうだし、メーターがなく料金交渉制の地域もあります。またメーターがあっても料金交渉してきたり、違法改造で料金が異様に高くなったり。乗車拒否もあって、バンコクのタクシーではそれで口論になってトルクレンチで殴られそうにもなりました。

ライドシェアや配車サービスを使うと、そういった手間や心配がなく使えるので便利です。自分の居場所と目的地を指定して、料金を算出。そのルートと料金で問題なければ配車をオーダーして乗り込み、目的地に着いたら降りるだけ。支払いは登録したクレジットカードからなので、財布を出す必要もありませんし、料金の交渉もありません。


▲ルートを検索して、あらかじめ料金もわかるので安心かつ便利

Grabは提供している地域にサービス内容を合わせているのもおもしろいポイントです。たとえばバンコクでは、いわゆる一般ドライバーの車を使った「GrabCar」のほか、タクシーを配車する「GrabTaxi」やバイクの後部座席に乗車するバイタクを手配する「GrabBike」も利用可能。筆者は使ったことはありませんが、「Uber Eats」のような食事のデリバリーサービス「GrabFood」もあります。


▲バンコクではライドシェア以外にもタクシーやバイク、大型のクルマが配車可能

ミャンマーのヤンゴンとマンダレーでは、個人がサービスするライドシェアはないようで、タクシーの配車となっていました。その場合でも料金交渉などは不要。アプリで決まった料金がカード決済されるのは同じです。ちなみにヤンゴンではタクシーだけでしたが、マンダレーではバイタクや三輪タクシーの「GrabThoneBan(トンベイン)」も利用可能。


▲マンダレーでは三輪タクシーも配車の対象

これはカンボジアのシェムリアップでも同様で、タクシーのほか三輪タクシーの「GrabTukTuk(トゥクトクク」やバイクで客車を引っ張る「GrabRemorque(リモーク)」の配車も可能です。TukTukやRemorqueは日本ではあまり体験できず、海外ならではの移動手段ですが、やはり料金が交渉制だったり、不当に料金を要求されたりといった心配もありハードルが高い乗り物でもあります。それがアプリを使えばあらかじめ料金がわかり、安心して払えるので気軽に乗れるのはうれしいポイントです。


▲シェムリアップではTukTukやRemorqueも利用可能


▲三輪タクシーのTukTuk


▲バイクで客車をひっぱるRemorque

こういったサービスが使えるのも、スマートフォンが普及していつでもどこでもインターネットに接続できる環境が広がっているからこそです。日本もやっとスマートフォンを使ったタクシー配車サービスが広がり始めていますが、いっそ観光地でよくみる人力車や自転車タクシーなんかを配車サービスで提供したら外国人に受けるんじゃないかと思ったりもします。


▲Remorqueのドライバーは運転席にスマホを装着


▲機種まではわからなかったが、ノッチありなので新しめのスマホを使っていた

このように東南アジアでは非常に便利な「Grab」ですが、使う際に注意点や問題点もあります。注意点としてはルートと料金の決定。ルートの検索はアプリが自動で行うのですが、まれに遠回りのルートが検出されることも。これは筆者の失敗例ですが、高速道路の入り口が近かったりすると、いったん高速に乗ってぐるっと回った目的地までのルートになり、料金も割高で算出されます。この状態で配車を頼むと、いくら実際の距離が近く走行時間が短くても最初に算出された料金の支払いになってしまします。遠回りのルートが検出されたら、ピックアップ地点などをずらして、ルートが最適化された状態で配車を頼みましょう。


▲指定した乗降位置によって、遠回りなルートになることもあるので、その場合は位置を変えて再検索しよう

問題点としては、ライドシェアサービスが世界各地で起こしている既存の業界やサービスとのバッティングです。スペインのバルセロナでは2月にUberの再参入でタクシーの大規模なストライキやデモが起こっていました。またインドネシア・バリ島のウブドは地元のタクシー組合が強く、街のあちこちにライドシェア営業禁止の警告が貼られています。ライドシェアサービスと既存業界でもめている地域では、ドライバー同士の暴力事件にまでエスカレートするケースもあり、利用者が巻き込まれる可能性もゼロではありません。


▲バリ島のウブドに掲示されていた、ライドシェアや配車サービス営業禁止地域の案内

とはいえ上手に使えば便利で楽しいのは確か。事前にネットや現地での情報をチェックしてから使ってみるのがオススメです。