湘南戦に敗れ、肩を落とすF・トーレス。表情には悲壮感が漂う。(C) J.LEAGUE PHOTOS

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 試合終了の笛と同時にブーイングがスタジアムに響いた。ブーイングをしないとして有名な鳥栖サポーターもそうせざるを得なかった。それほど不甲斐ない試合をホームでまたしても見せてしまった。鳥栖の今季の得点は4節にイサック・クエンカが挙げた1点のみ。リーグ戦9試合を終えてチーム得点が1点というのは、これまでの最少だった2014年の徳島を抜いてワーストとなった。

 この湘南戦では、フェルナンド・トーレスと金崎夢生という主力FWに代えて、24日に行なわれたルヴァンカップ・仙台戦でゴールを挙げたチョ・ドンゴンとそのアシストをしたアン・ヨンウをスタメンに起用して得点力不足の打開を図った。しかし、サイドに展開して攻撃を仕掛けるまではできたが、肝心のクロスが精度を欠いたり、ゴール前に選手が詰め切れなかったりで、ゴールを奪えない。後半にフェルナンド・トーレスとビクトル・イバルボを投入するも攻撃が活性化することはなく、0-2の完敗を喫した。
 
 湘南GKの秋元陽太は「明確に守るべきところがチームとしてはっきりと理解できていた。それがこの試合で結果として無失点にできたので良かった」と振り返った。前述したように鳥栖の攻撃はサイドからのクロスが中心。しかもゴール前に上げるだけの単調なものばかりで、グラウンダーもなければ、ニアで合わせる動きもない。もちろん、サイド攻撃を効果的にするための中央突破やゴール前を固めた相手を引きずり出すミドルシュートもない。そうなれば、クロスを跳ね返すことだけに集中すればいいので守りやすい。

 トーレスは「クロスの数が増えていて、ゴール前の選手の数も増えていますけど、うまくフィニッシュにつながらず、決定的なシュートまでいっていないのは事実。選手の特長を踏まえつつ、どう攻撃するかを考えながらプレーしないといけない」と嘆くしかなかった。

 原川力の言葉は、チームがより深刻な状況に置かれていることを示している。
 
「みんなで同じ絵を描けていません。バラバラでそれぞれが感覚でやっている感じです。自分たちのやりたいことができない時に、次の引き出しがチームとしてなさすぎるかなと思います」

 サポーターも攻撃の手詰まり感を感じているからこそ、ブーイングで表わした。ルイス・カレーラス監督は「常に応援歌を歌って、チームを鼓舞する彼らの姿を見ると自分たちも顔を下に向けている場合ではない。しっかり、前を向かなければいけない」と気丈に話したが、決定力不足を解消する明確な策は示せていない。トーレス、金崎、イバルボなどなど豪華な攻撃陣はいるが、宝の持ち腐れ状態は当分続きそうだ。

取材・文●荒木英喜(フリーライター)