試合の途中から、一方的に攻めまくることになった鹿島を相手によく守ったとの見方はできる。17歳にもかかわらず、守備面でもよく頑張る姿に目が行く人がいたとしても不思議はない。久保をこの試合のヒーローに仕立て上げようとすれば、なおさらだが、前にも述べたとおり、彼にいま問われているのはアタック能力を磨くことだ。中盤選手としてやっていくのか、FWとしてやっていくのか。後者で行った方が市場価値の高い選手になる。日本サッカー界にとって不世出の選手になれるとの視点に立てば、低い位置でのプレーに終始したこの鹿島戦は、久保にとって将来に繋がる試合ではなかったと言いたくなる。

 久保が実践すべきはディエゴ・オリベイラのプレーである。それを近い距離でサポートした永井謙佑のプレーでもある。得点に直接的に絡む動きだ。後半、永井謙佑に代わり2トップの一角として出場し、ディエゴ・オリベイラのゴールを演出した浦和戦(5節)のようなプレーと言えば分かりやすいか。

 サッカーには様々な視点がある。久保が活躍した、FC東京が完勝したとの見方を全否定するわけではないが、微妙な問題であることは確かだ。そこで、どちらか一方に(とりわけ非サッカー的な方向に)流れが傾こうとする姿は健全とは言い難い。サッカーの魅力や真髄が伝えられているようにも見えない。

 3-1でFC東京が勝利したこの鹿島戦。試合後のスタンドの反応は正直だった。完勝だ! と大喜びしているFC東京ファンはせいぜい50〜60%だったように見えたし、完敗だ! とうなだれる鹿島サポーターは10〜20%程度だった。喜怒哀楽を表現しにくい、まさに議論したくなる、サッカーらしい試合だったと思う。