東大野球部浜田監督インタビュー「野球は頭がよくなるスポーツ」

写真拡大

言わずと知れた国内最高学府である東京大学(以下東大)。その野球部の歴史も古く、学生野球からスタートした日本野球の開祖とも言える存在だ。そんな東大野球部を指導する浜田一志監督は自身も1985年春にシーズン3本塁打(東大野球部史上1位タイ記録)を放つなど強打者として活躍し、卒業後は企業での勤務を経て独立し学習塾の経営者としても見事な実績を残しているまさに『文武両道』の体現者である。そんな浜田監督に野球少年、またその保護者や指導者にジュニア世代において重要なことについて話を聞いた。

■東大運動部員の多くが子どもの頃に野球をやっていた

――以前、浜田監督のお話で「野球をやることが勉強にもプラスになる」ということを聞いたことがあるのですが。

「まずデータからお話すると、東大の運動部に所属している学生300人に子どもの頃の習い事についてアンケートをとったところ、1位は水泳、2位はピアノで3位が野球だったんですね。ピアノもそうですが野球は指を使う、そして道具も使う。人間は指と道具を使って猿から進化したと言われていますから、この二つがあることは頭が良くなる要因だと言えますよね。だから本来野球は頭がよくなるスポーツだと思います。

ただ世の中的には『野球だけバカ』が多いと言われています。『野球バカ』は野球好きといういい意味もありますけど『野球だけバカ』は良くないですよね。そのことが、「野球=頭が悪い」みたいなイメージに繋がっていると思います」

――現在、子どもの野球離れが進んでいると言われています。『野球だけバカ』が多いという印象もそのことに繋がっていそうですね。

「まず野球だけすればいいという考えが多いですね。また、そんな中でも子どもが楽しく続けられない。そのことに関しては指導者が反省すべき点が多いと思います。サッカーの指導者を見ていると、まずは楽しもうというスタンスですが、少年野球の場合は次の大会で優勝しようということが多い。

本気になって勝つために取り組むということは大事なことです。でも優先順位は子どもの体、メンタルの方が上です。子どもの間は、個人がどれだけできるようになったかでいいと思います。それが大人になったらフォア・ザ・チームの部分が出てくる。子どものうちから怒られたらどうしよう、と思って試合に出ているような子を見ると悲しくなりますね」

■小学生、中学生年代は『個の育成主義』でいい

――最近、DeNAの筒香選手も少年野球から勝利至上主義に偏っていることに対して警鐘を鳴らす発言をしていますね。

「小学生、中学生年代は『個の育成主義』でいいと思います。先ほども言いましたがチームの勝利や組織でどうするかというのはもっと上の年代で学べばいいと思います。試合が始まれば子どもは勝手に勝ちたがりますから。昼休みのドッジボールだって小学生は勝ちたがるじゃないですか(笑)」

――東大野球部では子ども向けに野球を楽しむようなイベント(「東大球場スポーツデー」)も行っていますが、そのような取り組みをやる中で気づかれたことなどはありますか?

「やっぱり打って、走って、追いかけるということが子供は好きですよね。野球の細かいルールは関係ないと思います。だけど環境的にそれがなかなかやりづらくなっている。ボール遊び禁止の公園も多いです。もっと高校や大学のグラウンドを開放して、子ども達が遊べる場を作るというのは改めて大事だなと感じました」(取材:西尾典文/写真:編集部)

*明日のインタビュー後編に続きます