12年ぶりとなったJクラブとの対戦で躍動。本田は試合後、独自の視点で「Jリーグ」を語った。写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

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 Jクラブとの対戦は実に12年ぶり。本田圭佑はそのメモリアルゲームで、輝きを放ってみせた。

 3月12日に行なわれたアジア・チャンピオンズリーグのグループF第2節、本田のメルボルン・ヴィクトリーはサンフレッチェ広島と対戦するも、1-2の惜敗。日本の至宝が存在を示したのは、1点ビハインドで迎えた71分だった。

 本田本人は「それまで5分ぐらいボールが触れずに痺れを切らしていたタイミングで、あの場面がきて、信じて走った」と振り返る。右サイドを打破したストーム・ルーのマイナスの折り返しを、エリア内でスライディングしながら左足で直接ねじ込んだのだ。

 チームはその後に勝ち越し点を許し、ポイントゲットには至らなかった。敗れはしたものの数多の見せ場を創出したMFは、試合後のミックスゾーンで“本田節”を炸裂させた。独自の表現でJリーグや日本サッカー界に対して、赤裸々に本音を明かしたのである。
 
 まずは名古屋グランパス時代の2007年以来、12年ぶりのJクラブとの対戦について感想を求められた。「まあこれ(今日の試合)だけを見てもね、全部は分からないですけど」と前置きをしたうえで、アンドレス・イニエスタやフェルナンド・トーレスらビッグスターの加入で活況を呈する昨今のJリーグについて、その印象を語った。

「イニエスタが来たんで、たまにヴィッセル(神戸)の試合を見るんですけど……やっぱり俺がいた時からあんまりスタイルが変わってないなという印象で……。うーん、相手の嫌なことをするディフェンスとか、戦術的に成熟していない印象が強いんですよね」

 時折、少し間を空けて考えながら、自身の言葉を紡ぎ出す。本田はこう続けた。

「なんて表現したらいいかは分からないですけど、どのチームもとりあえずは繋ぎたいっていうのは分かるんです。ただ、ディフェンスで色を出すチームがもう少し増えてもいいのかなと思いますね。ディフェンスで色を出すということは、たぶん攻撃でやりたいことを出せなくなる可能性があって……。それでも、そこを挑戦しないと、1歩、2歩、3歩、違う次元の選手になっていけないと思うんで。それをどれだけ理解するかですね。でも、それはJリーグにいたら難しいんで」

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 2008年1月に名古屋を飛び出し、オランダ、ロシア、イタリア、メキシコ、そしてオーストラリアと渡り歩いた。世界のトップシーンで酸いも甘いも嚙み分けながら、熾烈な生存競争に身を投じて己を高めてきた。そこには確固たる価値観と自負がある。本田はあらためて、Jリーグでプレーするヤングタレントに“海外挑戦”の重要性を説く。

「僕はずっと『海外に行け』と言っている。まだ日本の若手がJリーグに居座るのは早いと思いますけどね。というのも三木谷さんみたいなひとがJリーグにとってものすごくありがたい動きをしてくれていますけど、それがもう少し進んだとしても、日本がドイツのリーグみたいに移籍することなく、自国でやっていても十分にワールドカップ優勝を目指していけるみたいなリーグになるには、まだ時間がかかるんで。目先はまだまだ海外に出て、いろんな経験を積んだほうが選手としては伸びるでしょう」
 
 確かにこの2年半で、Jリーグには多くの大物外国籍選手が参戦を果たし、活況を帯びている。とはいえ世界から見れば、まだ発足してから26年に過ぎないプロリーグであり、発展途上の若手が世界基準の選手に成長できる土壌かと言えば、決してそうではない。

 若いうちに日本を飛び出し、世界レベルを知り、己を磨く──。自身の信じる道を突き進んできた本田の言葉には、やはり説得力がある。この力強い提言は、日本サッカーの明日を担う次世代のタレントたちにどう響くのだろうか。

取材・文●羽澄凜太郎(サッカーダイジェストWeb編集部)