【PSE認証済み】って書いてあるモバイルバッテリーを買ったけど、PSEマークがなかった件:ウェブ情報実験室
Amazon.co.jpにて販売されていたモバイルバッテリー。2019年1月に購入したときはPSEについて特に記載はなかったのですが、いわゆる改定PSE法施行後、経過措置期間となる1年間が過ぎた今年の2月には、同じものが【PSE認証済み】となって販売されていることに気づきました。【PSE認証済み】で何が変わったのか気になったので、同じものを再度購入して調べてみました。モバイルバッテリーが電気用品安全法(PSE法)の規制対象になり、2019年の2月1日からはPSEマークのない商品は販売できなくなりました。そのため、昨年の12月ごろからモバイルバッテリーの投げ売りがあり、購入した人も多いかと思います。

その流れに乗って自分もクーポン利用で安く購入できるようになっていたAUKEYのモバイルバッテリー(PB-N59)を今年の1月13日に999円で購入し、そのうち何かに使おうと手元に置いていました。

▲購入後の1月28日にたまたま撮っていたスクリーンショット。経過措置期間中なのでPSE認証について記載はなく、届いた商品にもPSEマークはありませんでした

当然というのも変ですが、経過措置期間中なのでPSEについては何も触れられていません。でもって、ちょうど一月後の2月13日に同じ製品を確認してみたところ、型番や説明などはそのままに【PSE認証済み】という言葉が追加されてるのを発見してしまったわけです。


▲こちらは2月14日のもの。同じ製品ですが【PSE認証済み】の文字が追加されています。何が変わったのでしょうか?

最初は「PSEマークが追加されたのかな」くらいにしか思ってなかったのですが、「同じ製品でPSEマークの有無を写真で比較できると、今後の記事で役に立つのでは?」と気づいたこと、また、何が変更されているの純粋に気になったため、同じものをまた注文してみました。今回も999円。

......ですが、商品が届いてびっくり。PSEマークはどこにもなく、1月に購入したものと外見上なにも変わらないものが届いたのです。


▲本来PSEマークがあるであろう背面のエリアをパチリ。見分けがつかないので「PSE後」というメモを付けておきました


▲箱の裏面にもそれらしいマークはなし。マニュアルにも記載されていませんでした

不思議に思って業者にメールで確認してみた

このままでは、【PSE認証済み】なのかどうか購入者にはわかりません。いくら考えたところでPSEマークが浮かびあがってくることはないので、Amazon.co.jpの「出品者に連絡」機能を使い、AUKEY JAPANに直接問い合わせてみることにしました。

【PSE認証済み】とあったので購入したのですが、PSEマークが見当たりません。PSE認証済みというのは本当ですか?


ストレートです。
これに対して返ってきた返信は、以下のものでした。(誤字などもそのまま)

お問い合わせ、誠にありがとうございます。

弊社販売しているモバイルバッテリ(PB-N59を含め)は全部PSE認証済みです。

但し、2019年1月以後FBA入荷した商品は全部PSEマック印刷済みですが、その前の一部商品には、裏表にPSEマックを印刷しておりませんでした。

また何かのご不明な点がございましたら、いつでもお気軽にご連絡ください。


以前はPSEマーク(PSEマック)がなかったけど、1月以後入荷したものに関しては印刷済みだという返信です。ちなみにFBAは、「フルフィルメント by Amazon」の略で、Amazonが商品の保管から注文処理、配送、返品に関するカスタマーサービスまでを代行するサービスのこと。(出品者側のサービスなので、詳しくはこちらをどうぞ)

そういった内部事情はどうであれ、うちに届いたモバイルバッテリーには、1月購入ぶんだけでなく2月購入ぶんにもPSEマークがありません。
そんなわけで、追加で質問を送ってみました。

2月13日に注文した製品にPSEマークがないため質問をしたのですが、
PSEマークがなくても大丈夫だという認識をしている
という理解でよろしいでしょうか?


これに対する返信です。

お世話になります。

PB-N59製品はPSE認証を取得し、アマゾン審査にて合格しました。ご安心して使いください。

またのご利用を心よりお待ちしております。何のご不明な点がございましたら、いつでもお気軽にご連絡ください。


「アマゾン審査」ってなんだろう......という新たな疑問が出てきましたが、それはともかくとして、どうやらAUKEY JAPAN側の認識では、PSE認証済みなのでマークがなくても安心して使えるから問題ない、ということのようです。

こうなると、製品が認証されていればPSEマークの表示は必要ない、という解釈ができる可能性があるのかが気になってきます。表示がなければ消費者は購入を控えるだけですから、損をするのはメーカー。それだけに表示するかどうかはメーカーの自由だという考えです。

結果は......チラっと検索するとすぐに見つかりますが、「一般社団法人 電気安全環境研究所」(JET)のサイト内から一部引用します。



思いっきり、「安全マークを必ず表示することが義務付けられた」とありますね。別の解釈があるといけないと思い、念のため、JETにメールでも確認してみましたが、

PSEの対象品であれば、製品へのPSEマークの表示が義務付けられています


という、とてもわかりやすい返事がきました。
一応「単電池で400Wh/L以上が対象」という条件があるようですが、この条件だとリチウムイオン電池やリチウムポリマー電池を使ったものは対象となります。

たまたま古い在庫が送られてきたという可能性もゼロではありません。けれど、性能や安全面では変わらないとはいえ規制後ですから、混在しないよう注意するべきでしょう。

ちなみにPSEマークの表示義務を怠った場合ですが、

法令違反となりますので、罰則が科せられます。
(輸入品の場合は責任対象は輸入事業者です)
(必要なPSE表示がない場合は販売事業者も対象)

<行政処分>経済産業省製品安全課が判断・執行します。
・販売停止処分
・改善処置命令
・市場回収命令(事故の可能性が高いと判断したら)

<刑法>
・1年以下の懲役若しくは100万円以下の罰金又は
 その両方が科せられます。
・繰り返し違反の場合は内容によって1億円以下の罰金
 の規定もあります。


とのこと。
結構重たいです。

なお終了品となったのか、すでに「PB-N59」の販売ページはなくなっていました。ただし、【PSE認証済み】と追記されたAUKEYのモバイルバッテリーは他にも多数ありますので、そちらにPSEマークがあるかどうか気になるところです。

通販で買う時は、PSEマークが写真に掲載されているものを

今回の教訓として、【PSE認証済み】と書かれていても、PSEマークがない可能性があるということがわかりました。確実にPSEマークが付いているモバイルバッテリーが欲しければ、現物を見て買うしかありません。通販の場合は、マーク表示部分の写真があれば、その確率は高くなるでしょう。

後は信頼できるメーカーや販売事業者を選ぶこと。例えば、モバイルバッテリーの定番メーカーとなるAnkerは、2018年の2月時点でリリースを出すなど徹底しています。また、cheeroもバッテリー製品ページの最初に「PSEマークについて」と題した解説を掲載し、しっかりと対応している様子が窺えます。

PSEマークがなくても使用するうえでは問題ないと言えなくもないですが(いままでずっとそうでしたし)、事故が多くなってきているから法律が改正されたわけで、安全に使えるという証明のためにも、メーカーや販売事業者にはPSEマークの表示義務を守ってほしいですね。

オマケ:せっかくなので分解してみたよ!(良い子は絶対にマネしないこと)

さて。そんなわけで手元に同じバッテリーが2つあるわけですが、どちらもPSEマークがないので写真比較などにも使えません。せっかくなので後から購入したぶんは分解して中身を確認してみましょう。なお、モバイルバッテリーの分解は危険を伴いますので、絶対にマネしないように。写真だけで満足してください。


▲ケースははめ込みですが、ツメの作りが取り外しを考慮していないため、無理やりこじ開けました

分解は裏ブタの方から。電源スイッチの横に少し隙間があったので、そこからコネクター側を外し、全体を引きはがしました。裏ブタは両面テープでバッテリーと貼り付けてあったので、ドライヤーで温めながらの作業です。

中身の大部分はリチウムポリマー電池で、コントローラー基板は結構小さいです。バッテリーは3.7Vで5000mAhの容量。スペック通りです。

注目したいのは、製造年のシール。「9 2017年」と書かれているので、2017年の9月製でしょうか。2017年といえばモバイルバッテリーが電気用品安全法(PSE)の対象になるとはまだ決まっていない時期ですから、PSEマークがなくても仕方がないですね。......って、製造時期とは関係なく販売時期の問題ですから、そもそも売ったらダメなんですけど。


▲「9 2017年」と書かれたシールが貼ってありました。1年半近く前に製造されたのでしょうか?

製造から1年半近く。そういえば、最初からバッテリーの残量LEDが半分しか光りませんでしたし、長期保管されていた在庫処分品っぽいですね。さらにハズレをつかまされた気がして、ちょっと凹みます。

気を取り直して、もう少しよく見てみましょう。基板を外してみます。


▲安物にありがちな空きパターンが目立って部品が載っていない......なんてこともなく、またハンダもやたらとキレイです

バッテリーの基板はいくつか見たことがありますが、ここまでハンダがキレイなのは珍しいです。大抵、汎用基板を使いながら部品を必要最低限まで省いて空きパターンだらけだったり、コイルが安物だったり、リード線のハンダ付けが残念だったりするわけですが、これはかなりしっかりしているという印象です。特にリード線の部分は、まるで鉛フリーハンダじゃないようなキレイさ。

電源コントローラーには「IP5209」というものが採用されています。左側、「BAT-」近くにあるDW01と8205Sは、過充電・過放電防止の回路のようです。IP5209にもバッテリーの保護機能はあるようですが、それとは別に実装されているというのがいいですね。600円引きのクーポン割引を使ったとはいえ、これが999円。PSEマークがないのがホント惜しいです。