現在、バラエティで元カレの話をはじめとする赤裸々な恋愛ネタを中心に大活躍中の丸山桂里奈さん。すっかりタレントとしてもお茶の間の人気者となっている彼女ですが、本来の肩書きは「元なでしこJAPAN」。

しかも、小学6年生でサッカーを始め、わずか1年で有名チームのセレクションに合格。大学時代は全日本大学女子サッカー選手権大会を4連覇し、なでしこJAPANに入って2011年にワールドカップ優勝…という「超」がつくほどのエリートすぎるキャリアの持ち主だったんです。

しかし、約20年間サッカーにまっすぐ向き合いつづけてきた彼女は、なぜセカンドキャリアにバラエティの世界を選んだのか…?

そんな疑問を晴らすため、丸山さん本人に直接取材。ご自身がサッカーを始めたきっかけを含むこれまでの経歴や、これからのことについても聞いてきました!

〈聞き手:いしかわゆき(新R25編集部)〉



本名:丸山 桂里奈(まるやま かりな)
生年月日:1983年3月26日
年齢:35歳(2019年2月時点)
職業:元サッカー日本女子代表(フォワード)・タレント
出身地:東京都大田区
血液型:A型
身長:162cm

経歴:

1994年 小学生6年生のとき、地元のサッカークラブでサッカーを始める

1995年 中学入学と共に読売メニーナに入団

2000年4月 東京経営短期大学村田女子高等学校在学中、第9回全日本高等学校女子サッカー選手権大会で第3位になる

2001年4月 日本体育大学体育学部体育学科へ入学、全日本大学女子サッカー選手権大会4連覇に貢献

2003年4月 在学中にサッカー日本代表(なでしこJAPAN)に選出。FIFA女子ワールドカップに出場

2004年4月 アテネオリンピックに出場

2005年4月 東京電力へ就職。東京電力女子サッカー部マリーゼに入団。Lリーグで8得点をあげ新人王を受賞

2008年4月 北京五輪日本代表に選出。得点を決められず、キャプテンの澤穂希から叱咤激励され奮起する

2010年4月 アメリカのプロリーグ・WPSのフィラデルフィア・インデペンデンスへ移籍

2010年9月 ジェフユナイテッド市原・千葉レディースに移籍

2011年7月 FIFA女子ワールドカップに出場。準々決勝のドイツ戦で決勝点となるゴールを決め、日本の初優勝に貢献

2012年2月 スペランツァFC大阪高槻に移籍

2016年9月 引退を発表

2017年1月〜現在 タレントとしてバラエティ番組を中心に活躍中

サッカーを始めたきっかけは「好きな男の子に誘われたから」

いしかわ:
小学6年生でサッカーを始めて高校時代に全国3位、大学時代に4連覇、そして在学中になでしこJAPAN選出、2004年にアテネオリンピック出場、2011年にFIFAワールドカップ出場し優勝…って何ですかこの輝かしい経歴は。

丸山さん:
ね。経歴だけ見ると「エリート」ですよねぇ(笑)。

いしかわ:
現在バラエティでよく観る「恋愛の暴露話をする丸山さん」とのギャップがすごいですね…

そもそも丸山さんはどうしてサッカーを始めたんですか?

丸山さん:
好きな男の子に誘われたからですね!


ギャップもクソもなかった

丸山さん:
昔は女子のサッカーチームがなかったので、男の子のなかに1人混ざってプレーしていました。

それで、小学校卒業後に近所のおじさんが新聞の切り抜きを持ってきて、「読売メニーナの入団試験を受けてみれば?」と提案してくれたので受けてみたら、まさかの500人のなかから10人に選ばれちゃって(笑)。そこから3年間でガッツリとサッカーにのめり込みましたね。

いしかわ:
たった1年しかプレーしていないのにすごい…!

…ちなみに、その「好きな男の子」はどこに行っちゃったんですか?

丸山さん:
どこに行っちゃったんでしょう(笑)。

もともとは好きな人と一緒にいたいから始めたサッカーだったんですけど、技術を習得して、自分ができなかったことができるようになっていったら楽しくなって、気付いたらサッカーが好きになっていました。



いしかわ:
いつの間にかサッカーのほうに恋をしていたんですね…

とはいえ、そこから20年間も続けることができたのはなぜですか?

丸山さん:
自分で言うのも何なんですが、うまかったんですよ(笑)。

サッカーって脚を使う競技なので、すごく細かい技術が必要ですし、ちゃんと練習しないとうまくなりません。それを積み重ねてきたからこそ、「これは絶対に誰にも負けない」って自信があったんです。

中学生のときから思っていましたね。

いしかわ:
そんな昔から!

丸山さん:
ただ、そのときはプロになりたいとは思っていませんでした。ただ、サッカー自体が楽しいなと思って向き合ってただけなんです。

人間ってごはんを食べるじゃないですか。それと同じですよ。


絶対に同じではないと思う

いしかわ:
「楽しい」だけで20年間も続くものなんですね…

丸山さん:
続けるとか続けないとか考えたことがないくらい、サッカーが生活の中心にあるのが当たり前だったんですよ。サッカーのためなら、何もツラくないんです。本当にごはんを食べている感じで(笑)。

たとえば、現役のときは試合でパフォーマンスを上げるために何を食べる、どういう行動をする、ということしか考えてませんでした。とにかく点を獲りたいと言う気持ちしかなかったから、自主練も勝手にやるし、ご飯にもまったく興味がなくて、ただ良いプレーをするためだけに栄養を摂取している感じでした。

引退してびっくりしましたよ。世の中はこんなにも美味しい食べ物で溢れているのか!って(笑)。

いしかわ:
客観的に見て超ストイックなのに、本人がまったく無自覚なのがすごすぎる…

「サッカーのルールをちゃんと知らなかった」ってホント?

いしかわ:
ちなみに丸山さんは現役時代から「サッカーのルールをあまり知らなかった」というウワサがありますが、これは本当なんですか…? 

丸山さん:
はい、そこにボールがあるから蹴っていました。


さながらキャプ翼のような発言

丸山さん:
たとえば、私は「オフサイド」のことをよくわかっていなくて、それをバラエティで暴露したら「本当かよ!」なんて疑われたりしましたが、本当に知らなかったんですよ。授業もあるわけじゃないですし。

当時なでしこJAPANを率いていた佐々木監督が最近インタビューされていたんですけど、「(丸山は)細かいことを教えたところで、感覚的な選手だし、教えたら動けなくなるから何も教えていなかった」って言っていたので、まわりも私に教える気がなかったんでしょうね。

いしかわ:
そ、それでもサッカーができていたんですね。どうして自分から学びにいこうとしなかったんでしょう?

丸山さん:
ルールを知らなかったところで、ボールを持てば取られることがないからです。



丸山さん:
もちろん、円滑にプレーするためには最低限のルールは知らなくちゃいけないけど、私はルールを完璧に知ってしまうと、それを気にして動けなくなっちゃうタイプだったんですよ。だったらそこに気をとられるよりも、いかに自分が良いパフォーマンスができるかを考えたほうが良いですよね。

そんな私のことをまわりの人も理解してくれていたんですよ。

いしかわ:
なるほど。でも、たしかにそういう「直感型」タイプっていますよね。ノウハウやロジックにとらわれすぎないことも時には大切というか。

丸山さん:
選手のなかにもいろいろあって、分析して動くタイプもいれば、私みたいに、考える前にゴール前に走ってゴールを決めちゃう選手もいると思うんです。



丸山さん:
タイプの違う人たちで足りないところを補って、いいところを引き出し合う。

社会って意外とうまくできているので、それでなんとかなるんですよ。

いしかわ:
苦手なことは誰かに助けてもらい、自分の得意で誰かを助ける。実際に丸山さんはそれで結果を出してきているから、説得性がすごいな…

そういう「助け合い」みたいな精神は、やはりサッカーで身についたものなんでしょうか?

丸山さん:
そうですね。サッカーは団体競技なので、「誰かのために何かをする」のが当たり前なんですよ。コミュニケーションがダイレクトにプレーにつながるので、「この人は喉が渇いているんじゃないかな」とか、考えていることが直感でわかります。

いしかわ:
そんなことまでわかるようになるんですね。

なんだかサッカー選手って優しい人が多いイメージです。

丸山さん:
これは私の持論なんですけど、ボールって丸いじゃないですか。


はい?

丸山さん:
私、丸いものが好きで集まっている人はみんな良い人なんだと思うんですよね。

いしかわ:
(斬新な考えだけど言いたいことはわからなくもないぞ…)

「オン/オフ」なんてない。好きなことなら恋愛もサッカーも全力でできる



いしかわ:
そんなサッカー中心に生きてきた丸山さんですが、バラエティ番組に出ると現役時代の元カレネタが尽きないじゃないですか。一体いつの間に恋愛を…?

丸山さん:
アスリートは「オン/オフ」が大事なんて言いますけど、私は「オン/オフ」なんてないんですよ。起きているときは常にオンです。だから、サッカーも全力だったけど、恋愛だって全力で向き合っていたんです。



丸山さん:
たとえば、彼氏の家に泊まった次の日の練習は、「イチャついたんだからめっちゃ頑張ろう!」と思って誰よりも熱心に練習に励んでいました。アスリートってモチベーションが大事なので、私の場合は恋愛がサッカーへのパワーにもなっていたんです。

いしかわ:
なるほど…恋愛のパワーをサッカーに転用するというか。でも、失恋したり、落ち込んだときはプレーにも影響が出ちゃったりしませんでしたか?

丸山さん:
いや、逆に「なんだよーっ!」って思いながらめちゃくちゃサッカーを頑張れましたね(笑)。結局どう転んでも全部モチベーションになるんですよ。

長期のオフで少しバラエティに出たときも、はじめは「サッカーだけやってろ!」なんて言われましたけど、そもそもサッカーは一生懸命やっているし、そうやって全部全力でやっていたらみんなが認めてくれるようになると信じていました。



丸山さん:
だから、複数のことをやっているからって手を抜いているとか、集中できていないなんてことはないんです。好きなことなら、たくさんあってもぜんぶ全力でできる。まわりが勝手に判断することじゃないんですよ。

丸山桂里奈はなぜセカンドキャリアに「バラエティタレント」を選んだのか?



いしかわ:
私の見解ですが、サッカー選手って、だいたい引退した後は、監督やコーチ、スポーツ番組の解説など、自身のキャリアを活かした職業に就くことが多いじゃないですか。

そんななかで、丸山さんがあえてバラエティを選んだのはどんな理由からなんですか?

丸山さん:
変な話、私はサッカーを仕事だと思ったことがなかったんですよ(笑)。

サッカーは当たり前にあるもの。だから、全然違うことに残りの人生を使ってみたいと思ったんです。そのなかで、自分らしくいられるのが「バラエティ」だったんですよね。

いしかわ:
なるほど…。でも、今までやってきたことと全然違うことに挑戦するのって大変じゃないですか?

丸山さん:
そうですね。私、サッカーをやっていたときは緊張したことがなかったんですけど、バラエティは結果が目に見えないから、緊張しますね。サッカーと違って「ゴール」がないんですよ!(笑)

どこにどう着地したら正解なのか、笑いが取れたらゴールというわけでもないし、そこが難しくて面白いですね。ただ、形は違えど今まで同様、全力でやるというスタンスは変わっていません。

それに、これは私ができる恩返しだと思っているんですよ。



いしかわ:
どういうことですか?

丸山さん:
現役を退いてサッカーの仕事に就く選手もいるけれど、私には自分の役割があると思っているんです。たしかに、一見するとサッカーとは全然関係ないことをやっているかもしれません。

でも、私がバラエティに出るたびに、なでしこJAPANが優勝したときの映像が流れます。

だから、やり方は違うかもしれないけれど、それで違う入り口から女子サッカーやなでしこJAPANを多くの人に知ってもらうことが、サッカーへの恩返しだと思っているんです。



丸山さん:
やっぱり自分の根底には「サッカー」っていうのがあって、それはこれからも変わりません。だから、「タレント」じゃなくて、「元なでしこJAPAN」という肩書きは、これからもずっとひっさげていきたいです。

20年間ずっと、サッカーをやってきましたからね。



一貫性が見えないように感じたバラエティタレントへの転身も、彼女にとっては「サッカー」という道の先にあったもの。

「元なでしこJAPAN」を名乗りつづけたいという彼女の言葉はサッカーへの「恩」に満ちあふれていて、こちらもちょっと涙ぐんでしまいました。

フィールドからスタジオへ活躍の場を移しても、これからも大好きなサッカーとなでしこJAPANを世の中に広めつづける丸山さんを、新R25は応援したいと思います。



〈取材・文=いしかわゆき(@milkprincess17)/撮影=長谷英史〉