子どもが小さいと何かと実家に頼りがちです(写真:Ushico / PIXTA)

※ミセス・パンプキンへの人生相談および、家族関係や親子問題のお悩み相談は専用メール、専用サイトで受け付けています。質問は400字以内でお願いします。回答は既出の相談と内容が被らないものを優先し、本連載で掲載します。

私は23歳で結婚して、2カ月の子どもがいます。実家の助けが必要な時期ですが、姉には優しく、私にだけつらく当たる父親を親と思えず悩んでいます。
産後1カ月は実家で養生しましたが、その後、ある日突然父から、「お前がいると金がかかるから、こっちに来るな」と言われました。出産後の私の苦労を知らない父からこのように言われ、父親とは思えず悩んでいます。
夫は働き者でとても優しく、いい人です。でも夜が遅いため、私たち母子は1カ月過ぎた後も、夜は実家近くの家で、昼間は実家でという形で母に助けてもらいながら育児をしていました。
私には、2人の子どもがいる8歳上の姉がいます。姉は毎週末に実家に帰ってくるのですが、父は姉には文句を言わず、私だけに文句を言います。
私の子どもはまだ生後2カ月。ベッドに寝かせるとすぐに泣きだす子で、私はご飯を食べる時間すら作れない状態です。それなのに父から、自分で買い物をして、ご飯くらい自分で作れと言われました。
私の苦労を何も知らず、文句ばかり言う父を、もう父親とは思えません。でも、私のせいで、私の子どもが祖父からかわいがられずに育つのも悲しいです。父を説得する方法はありませんか?
しずか(仮名)

結婚生活も「狭き門より入れ」

しずかさん、私はあなたのお父様があなたに、母親として自立してほしくて、わざと冷たく自宅へ帰るよう、促されたのではないかと想像します。


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週末に来られるお姉様と、毎日実家で過ごし、自宅には寝に帰るだけのあなたとでは、自立度が違います。

むしろ、あなたの体調が完全回復するまでお母様に通ってもらって、あなたの主たる生活の場をあなたの家とするほうがよいです。

実家依存症のママにならないためには、今が正念場です。

「狭き門より入れ」という言葉は、聖書では「滅びに至る門のほうが広く入りやすく、その門から入る者のほうが多いが、しかし……」という意味に続きます。

これはことわざとして「何か事をなすときに、簡単な方法より困難な道を選ぶほうが、自分を鍛えるためには役立つ」という意味でよく使われています。私は結婚後の家庭生活も、この言葉がぴったり当てはまると思っています。

既婚者が新しく築く家庭生活で、何事も目先の「楽」を優先させ、「易きに流れる」生き方を優先させた人は、そのときは楽だったかもしれません。しかしそのような生活には向上心が欠け、人間的な成長の幅も小さく、根拠のない自信家で自己中心主義者を生む傾向があると感じてきました。

普通は自立した生活の中で失敗を繰り返し、時には挫折を味わいながら経験を積んでいく過程で多くを学び、成長し、精神的に鍛えられていくのです。成育期に、蝶よ花よと過保護に育てられた子と、自立心を養うよう育てられた子との差に似ています。

実家依存症の妻には共通点がある

当相談室には、実家べったりの生活をする妻を持つ夫からの相談が、少なくありませんが、その悩みの内容やたどるコースが大なり小なり似通っているのが特徴です。

「ヒマでベテランの親がいるのに、炊事・洗濯付きの結構な実家依存生活のどこが悪い」と言う声も聞こえてきそうですが、ここは「気楽・便利」を基準にするべきではないのです。

気楽は成長の妨げとなる場合が多く、さまざまな問題を内包しています。

たとえば“夫が妻の実家に通って、義母の上手なお料理を毎回食すのと、下手でも妻または夫が作った料理を、夫も何の気兼ねなく食す食卓のある家庭”の差を考えてみてください。

その家の料理係の腕の差にとどまらず、その後の夫婦の絆や人間関係、文化度など、あらゆる分野に影響を及ぼすのは必至です。

先に、実家依存症の妻を持った夫の悩みやたどる道に共通点が多いと申し上げました。夫婦の絆が育つ余地が損なわれ、話し合いによる問題解決能力が育たないケースが目立つのです。

その共通点とはいったい何でしょうか。

1.新居の居心地が悪い
夫は当然ながら妻も、実家より自分の家庭が、いつまで経ってもいちばん居心地がいい場所にならない。
2.家風ができない
仮の家庭のような所に、家風は作られにくい。
3.育児への悪影響
健全な家風のない家庭で健全な夫婦関係は育まれず、結果的に健全な育児はできない。
4.夫が単なる財布に
夫婦の時間より実家の親との時間が優先され、夫が月給運搬人か居候のような存在になる傾向がある。
5.夫婦喧嘩への実家の介入
夫婦間のトラブルも、つねに妻が実家の親に愚痴ることで不満が蓄積されていき、会話で解決する夫婦関係が育たず、夫にますます疎外感を与える傾向がある。
6.親離れ・子離れの遅延
上記の場合、親も子離れできていないと、ますます「妻」(娘)が暴走し、針小棒大式に、本来ならまとまる話もまとまらなくなる。
7.親子の疎遠な関係
子どもが親より祖父母に懐き、その分、親側も子どもへの愛情が薄くなる場合がある。

よくある傾向を挙げただけでも、上記のとおりです。

子どもの教育にも深く関わってくる問題であり、実家依存症の弊害は非常に大きいのです。

若いときの苦労はすべて財産になる

初めての育児ではとくに、ママは食事をする間もなく、睡眠時間もまともに取れないのは、当たり前なのです。多くの人が通る道です。

この当たり前の中で家事も育児も時にはパニックになりながら要領を身に付け、工夫と上手な手抜きを覚え、多くのことがこなせるようになり、それが自信になるのです。

この時期の家事・育児を親に依存した人との差は、年を経るごとに歴然とします。

しずかさん、個人には体力差があり、あなたは実家依存型ではなく、初めての出産で、まだ体力が回復していないだけかもしれません。

もしお父様の真意が「お金」にあり、あなたの体力もまだ回復しないのでしたら、働き者のあなたの夫が、その分の費用をご実家にお渡しすれば解決しますね。

これから私が申し上げることは、あなたが体力を回復された後の話だと思って、聞いてください。

夫婦の自立度が、育児や家族の絆、その家族の精神的な豊かさや文化度に直結するというのは、先に申し上げました。それは私の極端な2人の知人がモデルにもなっています。


裕福な景子さん(仮名)は、実家べったりの生活をしていました。景子さんにぞっこんの夫もそれに従っていましたが、実家の親に他界された後は景子さんがまずパニックになり、(家事ができないので)外食が続き、外食に飽きた夫と子どもたちは反抗的になり、空中分解するように、家庭が崩壊しました。

これに対し玉の輿婚をした玉子さん(仮名)は、貧しい家庭で育ったためお料理を学ぶ機会がなく、毎日、義父母にバカにされ叱られ続けました。そこで発奮した玉子さんは努力して、数年後には数十人の客を、コースでもてなせるほどの人になりました。

玉子さん曰(いわ)く、「この時期に発奮して学んだ難しい料理や新しい生活習慣は、今では目をつぶっていても作れるし、身に付いた。これらは自分のいちばんの自信になっているが、この時期に作らなかった料理は、簡単な料理でも、今も作れない」そうです。

難しいことも習慣にすると簡単にできる、というよい例ですね。だから若い頃の苦労は、買ってでもせよというのです。

自立した生活から要領を学び、たくましいママになろう

しずかさん、私は、今のあなたの生活スタイルがズルズルいって実家依存症になる可能性を、お父様は心配しておられるのだと感じました。この種の夫や妻の親側からの悩み相談が、当相談室にも結構届いているからです。

またママが神経質だと、不思議なほどそれはすべて赤ちゃんに影響すると、私の親友の助産師も言います。赤ちゃんに智恵があり敏感なのは、「憎らしいほど」だそうです。

ママであるあなたが心を広く持ち、「狭き門より入る」ことを心がけ、ママとして妻として、社会人として、自立心を強めましょう。年末年始で実家と交流が増える季節でしょうから、自立への姿勢を示すいい機会でもあります。

今が正念場で、それがあなたの一生の財産になり、子どもの教育に直結するのです。