カー用品店「オートバックス」の旗艦店である「スーパーオートバックス東京ベイ東雲」がリニューアル。店の中央には書店とカフェを配置し、売り場も「ライフスタイル別」に構成するなど、ある意味カー用品店らしからぬ店舗になっています。

主役は書店やカフェ?

 カー用品店「オートバックス」を展開するオートバックスセブンは2018年11月23日(金・祝)、同社のフラッグシップ店舗である東京都江東区の「スーパーオートバックス東京ベイ東雲(しののめ)」をリニューアルし、「A PIT(ア・ピット) AUTOBACS SHINONOME」としてオープンします(28日までは招待客のみ来店可能)。


「A PIT AUTOBACS SHINONOME」店内(2018年11月21日、中島洋平撮影)。

「A PIT」は同社にとって新業態の店舗。3階建ての1階は主に整備場(ピット)で、2階と3階が売り場です。2階のエントランスから店内に入り、まず目に飛び込んでくるのは、本や雑貨の数々。「スターバックスコーヒー」を併設した書店「TSUTAYA BOOKSTORE 東雲」が店内の中央に入居しており、カー用品の売り場は、主にその外周に配置されています。

「『クルマも、ヒトも、ピットインする場所』をコンセプトに、お客様がくつろげる空間を目指しました。2階はライフスタイルを提案する『体験・発見』の場としており、本や雑貨に触れながら『次に遊びにいくならどこへ行こう』といったご家族の会話も生まれるでしょう」(オートバックスセブン 執行役員 山添龍太郎さん)

 その思想は、従来のような商品ジャンル別ではなく、「ライフスタイル別」という売り場構成に表れています。「家族とクルマ」「自然とクルマ」「旅とクルマ」など、8つのテーマが設定されており、それぞれのコーナーで関連するカー用品や本、雑誌、雑貨などが並んでいます。たとえば「旅とクルマ」のコーナーで鎌倉の特集が組まれていましたが、そこには鎌倉の土産物とおぼしき大仏のミニチュアがズラリ。これら雑貨もオートバックスが仕入れたそうです。

 とはいえ、カスタムパーツが中心の3階は「オートバックスらしい」売り場といえるかもしれません。ハンドル、シート、マフラー、ランプ類、オーディオなどが取り揃えられており、車内を模した環境でシートに座ってオーディオを体験できるなど、触れて試せるコーナーが充実しています。また、プロドライバーも認めるという本格的な運転シミュレーターを設置しており、スーパーGT参戦車両など約250車種で、約200コースの走行を疑似体験できます(使用料金10分1000円)。

 1階の整備場には、すべてのピットレーンにカメラを配置。サービス利用者にスマートフォンを貸与し、自分のクルマがいま、どのような状態になっているのかをリアルタイムで確認できる仕組みを導入しているそうです。オートバックスセブン 社長執行役員の小林喜夫巳さんは、「当社のメインはピットサービス。44年の伝統を大事にしながら、さらに進化させています」と話します。

カーショップの「カフェ」化進む背景

 今回のリニューアルは、「TSUTAYA」などを展開するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)がプロデュース。同社が展開する生活提案型商業施設「代官山蔦屋書店」(東京都渋谷区)のコンセプトを引き継ぎ、さらにオートバックスの売上データや顧客アンケートなどから、必要な機能を盛り込んで誕生したといいます。

「(タワーマンションなどが立ち並ぶ)この店の5km圏内には100万人以上が暮らしています。そのなかで、近くに『あったらうれしいサービス』としてアンケートで要望の多かったのが、書店とカフェでした。また、オートバックスさんに来店するのは男性が多くを占める一方で、周辺にはファミリー層も多いことから、女性の来店を伸ばすためにキッズコーナーも設けました」(CCC 代表取締役社長兼CEO 増田宗昭さん)

 店舗内にカフェなどを設置したり、より集客の見込める場所に出店したりして、クルマに興味のある人以外も取り込んでいこうとする姿勢は、自動車ディーラーなどでも共通しています。たとえば、2018年3月にはレクサスが店舗のほぼ半分をカフェにした「LEXUS MEET…HIBIYA」を「東京ミッドタウン日比谷」にオープン。日産も、2016年オープンの「ららぽーと湘南平塚」に同社初となるテナント店舗を開設しています。

 オートバックスもまた、2017年から全国の「イオンモール」で従来の路面店より機能を絞った「オートバックスmini」を展開し、これまで全くオートバックスに足を運ばなかった人との接点としての役割を与えています。オートバックスセブンの山添さんによると、今回の「A PIT AUTOBACS SHINONOME」は、そのような店舗づくりの集大成とのことです。


「A PIT AUTOBACS SHINONOME」外観。

グレーと白を基調にカラーリングされた整備場。

左から、オートバックスのレーシングチームを率いる鈴木亜久里さん、オートバックスセブン 社長執行役員の小林喜夫巳さん、CCC代表取締役社長兼CEOの増田宗昭さん。

 とはいえ、この店舗はショッピングセンターのように、多くの人が日常的な買い物のついでに立ち寄ってくれるような環境にはありません。オートバックスセブンの山添さんは、「キッズコーナーを活用したワークショップや、親子で楽しめる洗車体験イベントなどを通じて、まず地域の方に足を運んでいただき、この店の価値を体験していただくことを目指します」と話します。また、この「A PIT」を数年のうちに名古屋、大阪などでも展開していきたいとしています。