近年、次々と前衛的なモダン建築が建てられ「コーカサスのドバイ」とも呼ばれた、アゼルバイジャンの首都バクー。

シルクロード上に位置し、ペルシャやアラブ、トルコ、ロシアといったさまざまな文化の影響が混じり合ってきたバクーは、アジアとヨーロッパのはざまに位置するコーカサスの象徴のような町です。

きらびやかな近代建築のみならず、世界遺産の旧市街や近郊の寺院・遺跡など、多彩な景色に出会えるバクーで訪れたい8つの観光スポットをご紹介しましょう。

・旧市街

バクー最大の見どころのひとつが、シルクロードの中継地として栄えたころの面影を残す旧市街。

城壁に囲まれていることから、「内城」を意味する「イチェリ・シャハル」と呼ばれる旧市街は、「城壁都市バクー、シルヴァンシャー宮殿、及び乙女の塔」として2000年に世界遺産に登録されました。

モスクやかつてのキャラバンサライ(隊商宿)をはじめとする干しレンガ造りの建物が並ぶ光景は、まさに別世界。ここだけ数百年ものあいだ時が泊まっているかのようで、アジアとヨーロッパの建築様式が混じりあった町並みが、不思議な異国情緒を醸し出しています。

旧市街に足を踏み入れれば、「近代的なビル群が建つバクーにこんな町並みが残っているなんて」と驚くことでしょう。

バクー旧市街のシンボルが、高さ30メートルの「乙女の塔」。このロマンティックな名前の背景には、望まない結婚を強要されそうになった少女がここからカスピ海に身を投げたという言い伝えがあります。塔の上は展望台になっていて、カスピ海とバクー市街が一望できますよ。

シルヴァンシャー朝の王宮として使用されていた、15世紀建造のシルヴァンシャー宮殿も必見。ディワンハーネ(謁見の間)やハーレム、モスク、ハマムなどからなり、現在内部は博物館として公開されています。

・フレイムタワー

近未来都市バクーの象徴が、2007年に着工し、2012年に完成した「フレイムタワー」。火の国アゼルバイジャンを表す炎をモチーフにしており、曲線美が美しい3つのビルからなっています。

高さは182メートルと、東京の高層ビルに比べるとやや控えめながら、高台に建っているため実際の高さ以上の迫力があります。昼は青みがかった銀色に輝き、夜にはアゼルバイジャンの国旗色や炎の赤などにライトアップされ、さらに幻想的な姿に。

バクー市内のあちこちからその姿を見ることができますが、ケーブルカーに乗って高台に上れば、すぐ近くからその威容を目の当たりにすることができます。

・ヘイダル・アリエフ・センター

バクーを象徴するもうひとつのモダン建築が、2012年に完成したヘイダル・アリエフ・センター。新国立競技場の建設をめぐって日本でも話題になったイギリスの女性建築家、ザハ・ハディド氏が手がけた建物で、アゼルバイジャンの前大統領の名を冠しています。

直線を使わず、流れるような曲線づかいが印象的なフォルムは、「過去と未来の融合」を表現。360度、見る角度によってまったく異なる表情を見せてくれます。

内部にはミュージアムやコンサートホールなどがあり、アゼルバイジャンの歴史や文化を紹介する展示や、時期によって入れ替わる美術展などが楽しめます。

・海岸公園

バクーは世界最大の湖、カスピ海に面した都市。市内中心部の海岸沿いには、弧を描くようにして海岸公園が広がっており、開放的なムードとともに散策が楽しめます。

公園内にはカフェや観覧車もあり、地元の親子連れやカップルにも人気のスポット。2010年には、ショッピングモール「Park Bulvar」がオープンし、ショッピングもできるようになりました。

ここから眺める、フレイムタワーとカスピ海が織り成す風景は格別。市街がライトアップされる夜はひときわロマンティックなムードが楽味わえます。

・カーペットミュージアム

ユネスコの世界無形遺産にも登録されている、アゼルバイジャンの絨毯文化を紹介する博物館。2014年にオープンした新しいミュージアムで、カスピ海沿いに建つ、丸められたカーペットをイメージしたユニークな外観が目を引きます。

館内は3つのフロアに分かれており、1階では絨毯の歴史と制作方法の紹介、2階では地域ごとの絨毯の展示とそれぞれの特徴の解説、3階ではおもに20世紀以降の絨毯が展示されており、最新の展示システムを通してアゼルバイジャンの伝統産業に触れられます。

・タザ・バザール(中央市場)

バクー中心部に位置するタザ・バザール(中央市場)は、アゼルバイジャンの人々の日常生活が垣間見える場所。

旅行者が多い土地であれば、町の市場もずいぶんと観光地化されていることもありますが、この市場を訪れるほとんどの人が地元客で、場内はローカルな雰囲気満点。電気器具の細かな部品などが売られている光景は、なんともアジア的です。

野菜に肉類、乳製品といった生鮮食品のほかに、ナッツやお茶、伝統菓子などの乾物、さらにお土産用のキャビアなども売られています。伝統菓子などは味見することもでき、市場の人々とのコミュニケーションを楽しみながら、手ごろな価格でアゼルバイジャンのお土産を手に入れることができますよ。

・拝火教寺院(アテシュギャーフ)

バクー近郊に位置する拝火教寺院(アテシュギャーフ)は、火を信仰する拝火教徒(ゾロアスター教徒)によって建てられた寺院。

かつてこの地で地表に噴出する天然ガスが自然発火したことから、拝火教徒のあいだで聖地とされるようになりました。インド北部と現在のトルコやシリアを結ぶルートの中継地でもあり、多くの僧侶や信徒の往来があったといいます。

燃え続ける「永遠の炎」を中心に据え、石造りの建物が取り囲む現在の姿は実に簡素ですが、だからこそ時が止まっているかのような雰囲気と、人智を超えたものが存在しているかのようなミステリアスな空気が感じられます。

バクーからのアクセスは、地下鉄コログル駅近くのバス停からバスで約30分です。

・ゴブスタン

バクーの南西約60キロのところにあるゴブスタン国立保護区は、古代人が描いた岩絵で有名。

荒涼とした大地に広がる岩山の裾野に、5000〜20000年前に描かれた6000もの岩絵が発見されており、「コブスタンの岩絵の文化的景観」として世界遺産に登録されています。

牛などの動物や、船をこぐ人、狩りをする人、踊る人など、さまざまなモチーフが表現された岩絵の数々からは、素朴ながらも生き生きとした古代人の生活ぶりが伝わってきます。

岩絵群の近郊には、地下から噴出する天然ガスにより、地表に「ボコッ」と泥が噴き出す光景が見られる「マッドボルケーノ」もあります。

ゴブスタンへは、公共交通機関によるアクセスは不便なため、バクー発の日帰りツアーを利用するのがおすすめ。拝火教寺院も合わせて、バクー近郊の主要な見どころを制覇できるツアーに参加してもいいでしょう。

中世の面影を残す伝統的な町並みから、バブリーなモダン建築、さらには世界遺産の遺跡や摩訶不思議な自然スポットまで、異世界の風景がたっぷり楽しめるバクー。

日本ではまだ知られていないこの町の魅力を、その目で確かめてみませんか。

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