子どもの現状伝える NGOの“算数形式”ポスターに「良い広告」「難しい」と賛否、なぜ制作?
国内外の子どもたちを支援する国際NGO「セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン」の広告が、SNS上で話題になっています。
算数の文章題の形式で「世界では子どもの6人に1人が学校に通えていない」と伝える内容で、「問題形式でないと関心を持たなかったと思う。良い広告」「テレビCMを見た時バズるだろうと思った」と評価する声の一方、「問題が難しすぎて解けない」「万人に意図がしっかりと伝わっていないので不適切」と否定的な意見もあります。
制作の意図を聞きました。
サラさんが学校で勉強できる時間は「ゼロ」
広告は、社会問題の啓発などを手掛ける「ACジャパン」が制作しました。NPO法人やNGOの活動を世の中に認知してもらうため、ACジャパンが広告を手掛ける「2018年度支援キャンペーン」の一環です。2018年7月〜2019年6月、テレビCMや新聞・雑誌広告、ラジオ広告、電車内の中づり広告などを展開します。
賛否両論が出ている問題と解答は次の通りです。
(問題)
サラさんは、起きている時間の半分で家の手伝いを、残りの時間の3分の2で妹の世話をします。6時間寝たとき、勉強は何時間できますか? 学校へは、歩いて往復3時間かかるものとします。
(解答)
サラさんの睡眠時間は6時間で、起きている時間は18時間。起きている時間の半分(9時間)で家の手伝いを、残りの時間(9時間)の3分の2(6時間)で妹の世話をします。余った時間は3時間。徒歩で往復3時間かかる学校に通おうとすると、通学時間だけで終わってしまいます。つまり、サラさんが学校で勉強ができる時間は「ゼロ」です。
ACジャパンの担当者に、広告を制作した意図や反響を聞きました。
Q.問題形式の広告にした理由は。
担当者「ACジャパンでは、国際支援活動を行っている団体を複数支援しています。しかし、映像が開発途上国であるなど、テレビの視聴者にはどの団体も似たイメージに映りがちな傾向があります。表現的な差異化や注目度などを考えて、あえて、一見クイズ番組や進学塾の広告のようにも見える、問題形式の表現を採用しました」
Q.問題形式の広告は、初めての試みですか。
担当者「初めてです。『人間は問題を出されれば、ついつい考えてしまうものだ』ということに着目し、メッセージである『子どもの権利』について視聴者に深く考えてもらい、同時にセーブ・ザ・チルドレン・ジャパンについて知ってもらう『きっかけ作り』という意図で制作しました」
Q.サラさんが起きている時間を数字で明記しないなど、一度見聞きしただけでは理解しづらい構成に思えます。意図的だったのですか。
担当者「答えを出してもらうことが目的ではなく、『学校に通うこと、勉強することに、さまざまな障壁がある子どもが世界には存在している。そういう難しい問題を抱えている』というイメージを伝えることが目的です。そこで、あえて簡単にはせず、難解な問題文にしています。『学校に行くだけでも大変なことなのだ』と想像してもらいたいたくて、選択した表現です」
Q.「解答が導き出せない」とSNS上で話題になることは想定していましたか。
担当者「想定していました。答えを知りたいがためにACジャパンやセーブ・ザ・チルドレン・ジャパンのサイトを参照してもらえれば、それも願うところです。解答が導き出せないことから、セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンについて興味を持ってもらったり、広告を見ただけで完結することなく、さらに世界の子どもたちの現状について知ってもらう、考えてもらうことにつなげたいという意図です」
Q.反響はいかがですか。
担当者「今のところ『斬新』『新鮮』などおおむね好意的なものが多いようです」