横浜ダービーでキャプテンとしてスタメン出場。惜しくも勝利には導けなかった。写真:徳原隆元

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 カズにとって、三ツ沢での横浜ダービーのピッチに立ったのは「確か2007年以来11年ぶり。もう中澤ぐらいしかその頃のことは知らないんじゃないかな。中澤ともまたやれてよかった」という久々の舞台だった。
 
 しかし先制したものの、延長戦の末に逆転負け。カズは「素晴らしいレベルのチームとやれて、いい経験になったが、やはり勝たないと、本当に強くはなっていかない。そこはワールドカップと一緒」と語った。
 
 対する横浜は本気モードだった。ワールドカップ期間の中断が明け、リーグ戦が再開されるまで、ちょうどあと1週間。ほぼベストメンバーといえる顔ぶれで臨んできた。
 
 カズはキャプテンマークをつけての登場。4-2-3-1のトップ下に入り、大型CFの戸島の衛星役となって、スペースを突いた。得点機になりかけたスルーパスを通し、チェイシングから先制ゴールにも絡んだ。
 
 後半に入り戸島のゴールで68分に先制し、72分に石井圭太と交代したが……直後に猛攻に耐え切れず同点とされる。その後、横浜FCも延長後半に二度の決定機を作ったものの、飯倉大樹の牙城を崩せなかった。ベンチからも声を張り上げて指示を出し続けたカズだったが、120分の死闘の末に敗れたとあって、大きく肩を落とした。
 
「ダメですね、あと一歩では。みんな最後まで頑張り、延長戦でも追いつくチャンスも作っていたが、こういう試合を勝たないと。頑張った、惜しかった、いいゲームをした、それではいけない。1点取ったあとの自分たちのやり方があったのではないかと思います」
 
 平日開催のナイターにもかかわらず1万人以上で埋まった横浜ダービーの雰囲気は「最高でした。ウチもF・マリノスのサポーターも素晴らしかった」と声援を力に変えた。交代時に時間をかけてキャプテンマークを渡邉に託していると、横浜サポーターからブーイングが起きた。
 
「気持ちいいですね。いいですね、ああゆうのは」と意に介さず、むしろピッチを退く際には横浜サポーターにも手を振って、そのブーイングに応えた。
 
「でも……勝たないと。ここで勝てないと、本当に強くなってはいかない」
 
 三ツ沢は特別な雰囲気に包まれていた。だからこそ、ここで勝てば、さらに強い上昇気流に乗れると感じていた。
 開催中のワールドカップについての話題になると、「自分たちの試合とワールドカップの試合を重ねることはないけれど」と前置きしたうえでカズは言った。
 
「あれだけのレベルの人たちが集まっていても、大事なことは、最後は気持ちのところ。国の誇り、プライドを持って戦っていた。それが全面的にプレーからにじみ出ていた。スポーツの根本は戦術がどんなに進歩しても、1対1の気持ちの部分が大事になると感じるところがありました。そのためにも自国リーグが強くなっていかないと、底上げにはならない。今は海外の選手が中心だが、若い選手がどんどんJリーグを経て世界に出ていってほしい。Jリーグのレベルが上がることで、若い選手のレベルも上がる。ウチも今日は若い選手が経験は積めたと思います」
 
 カズはそのようにこの日の試合を落としたことに落胆しながらも、小さくない手応えも得ていた。
 
取材・文:塚越 始